2008.04.09
読み物

ウンピアム難民キャンプの図書館員も第三国定住へ

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ

シャンティが図書館活動を行っているミャンマー(ビルマ)難民キャンプ。2005年に開始された難民の第三国定住プログラムによって、アメリカやオーストラリア、ヨーロッパへの移住が進んでいます。人材の流出は、シャンティの活動にも大きな影響を与えています。
2008年4月1日、タイ北部にあるウンピアム難民キャンプにて図書館員、図書館委員会メンバー、伝統文化教室講師、図書館青少年ボランティアなど20名近くが集まり、3ヵ月に一度の会議が開かれました。キャンプ内で起こっている共通の問題を話し合い、今後の対策を検討しました。
この日の焦点は何といっても図書館員の第三国定住。参加していた図書館員に「定住申請している人は?」と聞いてみるとなんと全員が手を上げたのでした。8人が揃ってアメリカ行きを希望し、しかも審査は終盤で出発まであと1ヶ月とのこと。
2007年7月にはメラキャンプで図書館員12名中10名が、海外への移住を希望していました。1年も経たないうちにその波がウンピアムに来た格好です。何年も勤めて、子どもたちに人気の図書館員もいたのでとても残念です。
何年も耐え忍んだキャンプ生活から解放される彼女たちの気持ちは晴れ晴れで、定住の話をする彼らは申し訳なさそうな一方、やはりニコニコと笑みは隠せません。
そんな急な知らせもあって、今回は会議終了後に早速図書館委員会の推薦を受けた新図書館員候補を2名面接しました。最初のEさん(25歳)は、1ヶ月前にヤンゴンから親戚一家を頼って難民キャンプにきた女性。高校卒業後は、コンピュータの勉強をしたり、孤児院で働いたりした経験のある人でした。参考までに「なぜキャンプに入ってきたの?」と聞いてみると、「2007年9月のデモの時、ジャーナリストのグループにいました。また、お坊さんに食事を用意していたところも当局に見られたらしく、拘束されそうになったのです」。「なぜ図書館員に応募したの?」という質問には、「親戚一家が来月にはアメリカに全員出発してしまうのですが、食料配給を得ていない私は自活しなければいけません」との答え。ちなみにキャンプ付けコーディネーターも空席になったので彼女はこのポストに応募しました。
次にやって来た女性のOさん(40歳)は、「2008年の1月、既に3ヶ月前にキャンプに来た夫を頼って来ました。出身はカレン州です。以前は郡の役場に勤めたり、教会で子どもたちに賛美歌や聖書について教えていました。現在は食料配給もなく、夫も無職で、2人で友人宅にお世話になっています」。
Oさんにはキャンプに入ってきた理由を尋ねる機会を逸しましたが、それにしてもEさんも、Oさんも応募の動機がかなり経済的なものでした。通称NewArrivalと呼ばれる彼らにも食料は配給されるはずなのですが、よく確認してみると、キャンプ内でまだ難民登録がされていないらしいのです。本来なら難民登録をされた、図書館事業にそれなりの思いを持った人を雇いたいのですが、第三国定住が進む中、こちらが採用したいと思うような人材は順番に外国へ出発していきます。もうこちらが人を選べる時代ではなくなっているようです。
Eさん、Oさんのようなステータスが不安定で、多少経済的な理由であっても、あえて雇用・育成していくつもりで挑まなければ相次ぐ人材交代は乗り越えられないでしょう。
結局、この2人を採用することになりました。図書館を継続するために残りの図書館員も急いで面接・採用しなければ・・・・。

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所長 小野豪大