国際協力の現場における信頼関係の構築
みなさま、こんにちは。カンボジア事務所の萩原です。
国際協力の現場で事業を行う上で一番大切なことの一つは、相手との信頼関係を構築することだと思っています。「相手」というのは、学校であり、先生であり、村の人たちであり、行政の人たちであり、事業にかかわるあらゆる人を指します。
私たちは、日本の皆さまのご協力のもと、支援を現地の人たちに届けているわけですが、それと同時に、現地の人たちと「一緒に」「協力して」事業を行っています。
「困っているのだから、何か届ければ喜んでもらえるだろう」というのは大きな間違いで、相手に対するきちんとした説明とお互いの了解がないまま届けられたものは、せっかく届いても活かされない可能性が高くなります。
そのため、丁寧に説明し、合意し、共に事業を行う協力者であるという意識を醸成するプロセスを踏むことが、とても大切だと思っています。
これは現在実施中の幼児教育事業の事例です。事業実施に先立ち、対象校(カンボジアの公立幼稚園のほとんどが、小学校に併設された「幼稚部」なので、「対象校」としています)をすべて回り、活動内容を説明しました。
説明に当たっては、事業内容を図や写真で示した資料(「カタログ」と呼んでいます)を使います。写真等の視覚資料は、ただ言葉で説明するよりインパクトがあり、学校側の事業への理解を深めるのに役立ちます。
学校側からは、校長先生、幼稚部の先生、そして学校支援委員会(住民代表者で構成されます)が参加します。最後に、覚書の草稿の内容について、問題ないか確認します。
事業を行う際には、学校や村にも一部負担をお願いしています。幼児教育事業の場合、教室の改装を学校と村でやってもらうことにしています。そのため、覚書取り交わしの前はいろいろ質問があり、時に渋い顔で悩みます。決して皆さん裕福ではないので、慎重になるところはすごく慎重になります。
こちらの学校では、村長さんを中心に、しばらく渋い顔をしていましたが、最後には皆さん納得して、「みんなでがんばっていこう」と、無事覚書の取り交わしが完了しました。
こうしたプロセスを一つ一つ踏むことは、時間がかかりますし大変ですが、きちんと説明し、理解し、お互いがそれぞれの役割を果たし事業を進めていく約束をすることが、結果的にお互いの信頼関係構築につながり、長い目で見れば、一番効率的だと思っています。
まだまだ不十分なところはありますが、一方的な支援にならないように気をつけながら、一歩ずつ事業を進めていきたいと思います。
カンボジア事務所 調整員 萩原宏子