2018.02.21
読み物

母語を守るためのモン族のユニークな工夫

ラオス

サバイディー(ラオス語でこんにちは)
ラオス事務所の半田です。

今日、2月21日は国際母語デーです。

国際母語デーとは、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が言語と文化の多様性、多言語の使用、そしてあらゆる母語の尊重の推進を目的として、1999年に制定しました。

あまり知られていませんが、過去100年に全世界で400言語が消滅しました。これは3か月に1つの割合で言語が消滅していることを意味します。UNESCOのデータによると、現在ラオスでも32言語が消滅の危機にあります。言語が消えるというとあまりピンとこないかもしれませんが、これは人々のアイデンティティーや文化も消滅してしまうことを意味します。

私たちの活動する地域で暮らすモン族の人々もかつて言語消滅の危機にありました。
しかし、あるユニークな方法で言語を守ってきました。
それは、刺繍です。
今日は、モン族の刺繍文化について紹介したいと思います。

①モン族に関する古代書の消滅・モン語の使用禁止

ラオス森のポーチ

そもそも、モン族の人々が刺繍をするきっかけとなったのは、モン族の暮らしや生活の知恵が記載された本が消滅したことと言われています。モン族の人々が中国から移住をするときに、その本はなくなってしまった、もしくは牛やねずみに食べられてしまったとされています。*1
また、ある説では、モン族の多くの人々が中国に住んでいたころ、中国語以外の言語を使用することが禁止されていたことがきっかけであるとも言われています。
モン族の女性たちは紙に変わる方法を用いて、筆記システムを保存する方法を模索していたところ、
洋服の上に刺繍をすることを思いつきました。
洋服であれば、紙とは異なり、破れたり紛失してしまうことが少なく、どこに行く時も着ていけますし、目に入りますね。

この当時に使われていた刺繍は、現在でもモン族の民族衣装に使用されています。

②刺繍の意味

次にモン族の刺繍の意味を見ていきましょう。

まずよく見かけるのがこのかたつむりのような丸模様。
これは家族という意味です。

また、このポーチの下から二番目の卍のような模様は、
精霊の世界への導きを意味し、卍模様の周りの緑色のフェンスの模様は安全を意味しています。

さらに、このコースターに描かれている葉っぱは、生命を表しています。

このようにモン族の人々は、一見思いもつかないような方法を用いて
モン語を守り続けてきました。このような努力の中からも、言語を守り抜くことと文化を伝承していくことの間に密接な関係が見受けられます。

現代では、英語、中国語、スペイン語などの大多数言語があるおかげで、私たちは世界の人々とコミュニケーションが容易になっていることは事実です。
しかし、イギリスの文学者サミュエル・ジョンソンが「言語は思考の衣装」と言ったように、
世界に住む多様な人々の生き方を表していると思います。世界中すべての人々が同じ環境や文化のもとで育っているわけではないので、環境や民族に多様性が見られように、生き方や思考を示す方法が一緒であると違和感を覚えます。
現在、環境や文化の多様性を守る運動は大変盛んに行われていますが、それらについて考える際、
是非言語の多様性についても考えてほしいと思います。

※モン族の模様に興味のある方は、クラフトエイドの商品をご覧ください。

*1 ルアンパバーン県で開催されているモン族の織物展覧会からの情報