2022.10.03
シャンティな人たち

アジア各国の作り手の想いを、フェアトレード商品で繋ぎたい_嘉味田倫慧

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クラフトエイド
スタッフインタビュー
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シャンティでは“買い物でできる国際協力・教育支援”として、タイやラオスなどで伝統的に伝わる手刺繍などのフェアトレード商品を取り扱う「クラフトエイド」事業に取り組んでいます。2020年に35 年目を迎えたクラフトエイドを、2016年から担当しているのが、クラフトエイド課の嘉味田倫慧(かみた ともえ)です。

シャンティ国際ボランティア会
クラフトエイド課 課長
嘉味田倫慧(かみた ともえ)


海外経験ゼロで、突然の中国駐在を経験した前職

シャンティ国際ボランティア会(以下、シャンティ)は、“買い物でできる国際協力・教育支援”としてフェアトレード商品を取り扱う「クラフトエイド」事業に、1985年から取り組んでいます。はじまりは、タイ東北部のラオス難民キャンプ内で作られた手工芸品を日本で紹介したこと。現在では、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、アフガニスタンの生産者たちとパートナーシップを組み、それぞれの伝統技術を活かして、手作りしたものを日本で販売しています。そして、2016年からこの事業を担当しているのが、クラフトエイド課の嘉味田です。

嘉味田「シャンティに入る前は、アパレル企業に5年間ほど勤めていました。2年間は日本で働いて、その後3年間は中国の上海で、店舗勤務をしていました。」

今となってはアジア各国のパートナーと連携しながら、クラフトエイドの商品企画から販売までを担う嘉味田ですが、当時上海への異動は青天の霹靂だったそう。

嘉味田「上海で勤務することが決まった時、海外に行ったことすらもなくて、初めての海外が引っ越しだったんです。前日まで日本で忙しく仕事をしていて、準備も何もできずに、スーツケースを2つだけを抱えて、バタバタと上海に到着して…。その日の夜は大泣きしました。海外=知らなくてこわい、というイメージが強くて、とても不安でした。」

空港を降り立つと、もうそこは日本とは全く違う状況。言葉もわからない。日本で使っていた携帯も繋がらない。「こわい」という状況を脱して、知らない土地で生きていくためには、どうすればいいのだろう…。そう考えた嘉味田は、自分から知ることが大事だと考え、すぐに一歩を踏み出しました。

嘉味田「最初の1週間ぐらいは、どうしよう・・・とうろたえていたのですが、とりあえず外に出ていくようにしました。近所のおばさんに話しかけてみたり、自分からいろんなことを知ろう、と思ったんです。そうこうしているうちに、どんどん楽しくなってきて、海外にも興味を持つようになりました。

店舗勤務をしているときも、中国語も英語もわからない中で接客をしていたのですが、お客さんが中国語講座をいきなり始めてくれたりして。とても人懐っこいし、困っているとお世話を焼いてくれたり、海外の人とコミュニケーションすることの楽しさを上海では知りました。」

フェアトレードへの関心から、「国際協力」への関心に

涙の初日から一転、持ち前の明るさと冒険心をいかし、充実した3年間の上海勤務を終えたあと、再び日本で働き始めた嘉味田。

嘉味田「前職のアパレル企業は、カラフルなものや刺繍が好きだったこともあり、手作りの刺繍などを扱うエスニック系のブランドだったのですが、フェアトレードの商品も扱っていました。

フェアトレードの商品については、店舗で働いているスタッフにも正しく知ってもらえるように伝えることが大変で、さらにその先にスタッフがお客様に伝えることも難しい、浸透しにくいということを感じていました。この経験から、フェアトレードにも関心を持ち始めたのですが、フェトレードが“国際協力”という仕事に繋がるとは、当時は思っていませんでした。」

フェアトレードに関心が沸いた嘉味田は、日本帰国後もフェアトレードや国際協力などの本を読み進め、フェアトレードが国際協力の仕事に繋がるということに気づきました。上海勤務時と比べて日本での仕事に物足りなさを感じていたこともあり、改めて自分が何をしたいのかを考えた時に、頭に浮かんだのが「海外」「国際協力」というキーワードでした。

ただ、NGO業界の多くが採用条件として業界経験を挙げており、経験のなかった嘉味田は「未経験可」を検索。そうして見つけたのが、シャンティの職員募集でした。

嘉味田「もともと販売の仕事で店舗を任されていて、資金繰りの重要性は感じていました。NGOの活動も絶対的に資金が必要ですよね。その部分で力になれれば、と思い、支援者リレーションズ課に応募して、シャンティに入職しました。未経験可、というのも大きかったです。」

こうして2016年10月に支援者リレーションズ課(当時名称)として入職したのち、前職の経験を買われ、半年後にクラフトエイドに異動となりました。

カンボジアのプノンペン郊外の工房にて。生産者ヴィレッジワークスと新商品のデザインに関しての打合せ (c)橋本裕貴

作る、売る、という流れは単純な一直線に見えて、実際は紆余曲折

クラフトエイドでは、春と秋に新商品を出していますが、嘉味田は商品の企画・開発、販売、カタログ作成まで担っています。年に1回程度、担当している国に訪問して、村の作り手さんに会いに行くことも。

嘉味田「作っている現場を見ていないと、新しい商品を作る上でも、販売する上でも、理解を深めたり、その先に広めることができないのです。

ただ、シャンティに入る前は、NGOは現地に頻繁に行っているイメージでしたが、実際はそうではなく、現地に行けるのは一握り。たとえば、布の縫い方や生地など、テキストベースでは伝えることが本当に難しくて、今すぐ行きたい!と思う場面もしばしばあります。写真をもらうことはできるんですが、実物を見てみたら色味が全然違ったり…。

現地のパートナー団体によってはインフラがまだまだ整っていないので、やりとりに時間がかかってしまう場合もあるので、もっと密に連絡を取ったり、顔をあわせて打ち合わせをしたいと思うことも多いですね。」

作る、売る、という流れは単純な一直線に見えて、そこには紆余曲折がある、と嘉味田は話します。クラフトエイドの商品を作っている現地では、生地や糸などを「元々使っていた生地が手に入らなくなり別の生地に切り替えた」という作り手からの事後報告が届くことも多々あるそう。

嘉味田「もうひとつは、納期を守ることの難しさです。スケジュールは、ゆとりを持って設定するようにしています。

ただ、クラフトエイドの商品は、作り手さんの生活に合わせて作っているので、農作業が忙しくて作業ができない場合などがあるんです。作り手さんの主な仕事は農作業や家事をすることなので、クラフトエイドの商品を作っていたから畑に行けなかった、といった状況は、本末転倒で避けないといけないんです。」

こうして商品作りの難しさを語りながらも、楽しそうに話す嘉味田の姿からは、作り手が長年受け継いできた伝統的な手作業への愛着を感じます。

嘉味田「手刺繍がすごく好きなんです。日本にはない色使いも大好きで、見ているだけで元気がでます。モノづくりのすごさを伝えていきたいと思っています。」

企画から商品作り、販売まで一貫して関われることはやりがいのひとつ

商品のなかには、嘉味田が1から手掛けたものも。

嘉味田「アフガニスタンの伝統技術で編まれた織物を使ったバッグは、細かいやりとりを3~4か月ほど続けて、1から作りました。現地の状況や作り手さんの想いを知った上で、商品を作れるというのはとても幸せなことです。

商品の企画から、作り手さんとともに商品を作り、売るところまで一貫して携われることに、とてもやりがいと感じます。

長年愛用してくださっている方からご連絡をいただくこともあります。お客様の声から、再び復活させた商品もあるんですよ。」

商品を手にしてくださったお客様の喜びが、作り手の喜びにも繋がるクラフトエイド。これからも、国境を超えて、想いと喜びを繋ぐ商品を生み出していきます。

企業にて、社員の方向けの社会貢献イベントにてクラフトエイドの商品を販売中

プロフィール 嘉味田倫慧(かみたともえ)

クラフトエイド課 課長
2016年 アパレル企業で中国駐在後、シャンティ入職。
2017年 支援者リレーションズ課(当時名称)を経て、2017年から現職。

メインビジュアル写真撮影:(c)橋本裕貴
企画・編集:広報・リレーションズ課 鈴木晶子
インタビュー・執筆:高橋明日香
インタビュー実施:2020年