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2024.09.05
シャンティな人たち

みんなで話して、みんなで解決する。これからも子どもという活力のある存在につながる活動に取り組んでいきたい_石塚 咲

キャリア
スタッフインタビュー
スタッフの声

NGO職員と聞くと、どのような人を想像するでしょうか。海外での生活経験がある、大学で国際協力や国際関係を学んだ、国内外の大学院を修了している…そんなイメージを持っている人が多いかもしれません。

しかし、これまでも「シャンティな人たち」でご紹介している通り、シャンティ職員はあらゆる経歴やバックグラウンドを持った人が、シャンティの理念へ共感して集まり、それぞれの強みを発揮して活動に取り組んでいます。「NGOへの就職は選択肢になかった」と話しながらも、今ではシャンティでのキャリアが最も長い石塚咲もその一人です。


シャンティ国際ボランティア会
国内事業課 課長
石塚 咲(いしづか さき)

 

早かった「難民」との出会い。海外への興味からカンボジア、そしてマダガスカルへ

石塚が初めて日本とは違う国の子どもや、「難民」と呼ばれる人々の存在を知ったのは早く、小学3年生のころでした。


石塚「小学生のころからガールスカウトに所属していて、ガールスカウトの活動の一環で、パキスタンにいるアフガニスタン難民の支援に取り組んだ時があったんです。ただ、そこから国際協力に強い関心を持ったというわけでもなく、ぼんやりと英語を話してみたい、海外の人と出会ってみたいと思っていたぐらいでした」

進学した大学では社会学を学び、サークルやバイトに明け暮れる日々を送る中、就職活動を前に、昔から持っていた海外への興味から内閣府の国際青年育成交流事業に参加することに。行き先はカンボジアでした。

石塚「大学1年生の時に、当時数多く開催されるようになっていたボランティアツアーに参加してカンボジアに行きました。その時からカンボジアの文化などに興味があったので、大学4年の時にも内閣府の事業を通じてカンボジアへ行きました。現場で働くJICAの方や青年海外協力隊の姿を見て、これはもしかすると自分の描いている将来像かもしれないと思いました」

 

帰国後すぐに、新卒で青年海外協力隊に応募し、派遣が決定。派遣先として希望していたのはカンボジアでしたが、決定したのはアフリカ・マダガスカルでした。

石塚「ガールスカウトで青少年活動に取り組んでいたこともあり、青年海外協力隊の青少年活動隊員としてマダガスカルで2年間、活動しました。図書館と地区センターがある地域に配属になり、そこで子ども向けのレクリエーションや、アクティビティを実施したり、小中学校に行ってクラブ活動をしたりしていました。絵本や子どもといったキーワードが自分の中で出てきたのはこのころからですね」

まったく知らない土地で、現地の人とともに協働したマダガスカルでの経験は、一緒にプロジェクトに取り組む人の意見や意向を尊重するという、現在にも続くコミュニケーションの基礎になっていると話します。


石塚「自分を押し付けない、意見を言いすぎないことを学びました。あとは、どんな環境でもなんとかなる、なんとかできると思えるようになりました」

マダガスカルでの様子


NGOではなく、民間企業へ就職。それでも脳裏にあったのは、子どもに関わる仕事だった


マダガスカルでの2年間の活動を終えた石塚は、帰国後は民間企業に就職することに。この時、NGOに就職する選択肢はなかったと振り返ります。


石塚「2年間の活動を経て、NGOで働く自信がつかなかったんだと思います。専門性が必要で、大学院を修了していないと入れない業界だと思っていましたし…。あとは、日本での社会人経験を積んだ方が良いのでは…という思いもあり、民間企業を選びました」

フランス語圏であるマダガスカルでの経験をいかして、フランス語圏アフリカへの国際輸送を扱う企業を経て、外資メーカー企業で輸出入業務に携わっていたころ、もともと関心のあった子どもや、社会に還元できる仕事に改めて興味を持つようになります。


石塚「次のステップをいろいろと探していた中で、シャンティの求人募集を見つけました。どこかで見たことがあるな…と思い返して、大学4年で参加した内閣府の派遣事業に参加した際、カンボジアのスラムでシャンティが移動図書館に取り組んでいる現場に訪れたことを思い出したんです」

 

自分には向いていないと思っていた海外駐在。現場で変化を見たときに、来てよかったと思えた

こうしてシャンティの門を叩き、2018年5月に入職。事業サポート課としてラオス事業を担当し、東京事務所においてJICAや民間ドナーとのコミュニケーション業務などに携わることに。その間、インドネシア・スラウェシでの地震・津波に対する緊急人道支援にも関わるなど、さまざまな経験を積む中で転機となったのは2019年1月の面談でした。

石塚「シャンティに入職して最初の面談で、海外駐在はどうか?と打診をいただきました。ただ、本当に行く気がなくて…。というのも、自分には向いていないと思っていたんです。現地の人の意向を尊重して話が進まなかったり、人の話を聞きすぎて決断できなかったり…という部分がある自分は、自分が描いていたシャンティの駐在員像とは違っていました」

事業の舵取りを担うより、調整役の方が向いていると考えていた一方、東京事務所にいると現場についてわからないことも多く、寄付者の方にすべてをお伝えできない時などにモヤモヤした気持ちを抱えていたと話します。


石塚「いろいろな人の後押しを受けて、カンボジアなら…2年くらいなら…と気持ちを整理して、じゃあ1回行ってみるか!と一歩を踏み出してみることにしました」

こうして2019年10月からカンボジア事務所に赴き、カンボジアの幼児教育事業を担当することに。

駐在先のカンボジアでの一コマ

石塚「赴任直後から新新型コロナウイルスが世界的に拡大していました。幼児教育事業はカンボジア国内51の幼稚園が対象だったのですが、移動制限で活動地に行けなかったり、事業が思うように進まない時期もありました。そんな中でも、カンボジア政府や行政と日々関わりながら幼児教育ガイドブックの制作などを進めました。

できあがったガイドブックに沿って先生たちが子どもに関わり、その結果子どもたちが楽しそうに過ごしている姿を目の当たりにして、その変化に大きなやりがいを感じました。駐在をするつもりはなかったのですが、実際にカンボジアの人たちと協働しながら、関わる人の変化が見れた時に、来てよかったなと思いましたね」
駐在先のカンボジアでの一コマ

あらゆる関係各所と協働する必要のあるプロジェクトを進めながら、リーダーシップはないと自分を評する石塚が意識しているのは「自分が出すぎないこと」。その想いは青年海外協力隊としてのマダガスカル駐在や、シャンティ・カンボジア事務所での駐在経験を経て、ますます深まっています。


石塚「現地の会議で私が発言するのは極力控えるようにしていて、みんなで話して、みんなで解決することを意識しています。現地のことは現地の人がいちばんよく知っているし、いちばん考えている。彼らが解決していくのが最良だと考えています」

 

移動初日に発生した令和6年能登半島地震

当初2年程度を想定していたカンボジア駐在は3年半を超え、2023年3月に帰国してからは、事業サポート課でラオスとカンボジアの事業を兼任。2024年1月1日から国内事業課(現職)に所属しています。2024年元旦といえば、令和6年能登半島地震が発生した日。早速、異動初日から震災対応にあたることになりました。


石塚「発災当初は東京事務所で初動対応にあたり、1月末にはじめて現場に入りました。シャンティが支援活動を開始した輪島市門前町で出会った、避難所運営に携わる輪島市職員が市立図書館を担当されている方で。輪島市で最も大きい図書館は、もともと老朽化が進んでいたところに地震の被害が重なりもう使用することができない状況。門前町の図書館ももう使えない状態だと話してくれました」

仮設住宅への生活移行が進む中、特に高齢の方が自宅にこもる日々が続いていたり、知らない環境で新たに人とのつながりを築くことが難しいといった課題が顕著になったことで、輪島市からシャンティに打診があり、この夏から開始したのが移動図書館の運行です。
輪島市門前町での活動の様子

石塚「いつ帰ってくるの?と声をかけてくれたり、能登の人たちは優しくて。いろいろな気持ちを抱えていると思うのですが、外から来ている私のような人に対しても気を遣ってくれるんです。
日ごろ接することが多い地元の若い方と話すと”元に戻すだけではだめ”とよく言っています。でも、どうしたらいいかはまだまだ模索していて。これからも地域に寄り添いながら活動を進めていければと思います」

 

最後に、海外での経験を経て、現在は国内での事業に奔走する石塚に今後の展望を聞きました。

石塚「シャンティで海外での経験を日本の活動にいかしたり、開発事業の経験を研究に生かしたり、これまでの経験をいかしてジェネラリストとして関わっていきたいと思っています。
ガールスカウトで小さい子に関わるというのが、小さいころからずっと自然と身近にあって、子どもたちの成長が見れるのがやりがいに感じるし、子どもという活力のある存在が好きなんです。先生たちや関係者と子どもたちの未来を考えた取り組みを実行して、それが子どもたちの変化につながるシャンティの活動がすごくしっくりきていて。これからも形はなんであれ、子どもにつながる活動に取り組んでいきたいです」

 

 

プロフィール 石塚 咲(いしづか さき)
国内事業課 課長

小学3年生   ガールスカウトの活動でアフガニスタン難民支援に参加
2008年     大学4年時にカンボジアへ
2010年1月     新卒で青年海外協力隊としてマダガスカルへ
2012年     帰国後、民間企業2社で業務
2018年5月    シャンティ入職。事業サポート課でラオス事業を担当
2019年10月  カンボジア事務所で幼児教育事業に従事
2023年3月    帰国し、事業サポート課に。ラオス・カンボジア事業を兼任
2024年1月    国内事業課長 補佐
2024年9月    国内事業課課長(現職)

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企画・編集:広報・リレーションズ課 鈴木晶子
インタビュー・執筆:高橋明日香
インタビュー実施:2024年