2025.11.19
シャンティな人たち

教育への想いを軸に、挑戦に向かい、子どもたちの未来を拓く_杉戸卓磨

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大学時代にシャンティと出会い、海外事務所での「NGO海外研修プログラム」に参加。そこでの経験から生まれた「いつかシャンティで働きたい」という想いを基に、民間企業や青年海外協力隊で経験を積み、数年越しにシャンティへの入職を果たしたのが、事業サポート課の杉戸卓磨(すぎと たくま)です。

現在は東京事務所を拠点に、ラオスとネパールの事業サポートを担当する杉戸は、大学卒業前に自ら計画を立て、段階的にキャリアを選び取ってきました。挑戦を重ねながら自らの手で人生を切り拓いてきた道のりと、教育にかける想いをお届けします。


シャンティ国際ボランティア会
事業サポート課 アジア太平洋南アジアグループ 海外事業推進担当
杉戸卓磨(すぎと たくま)

海外文化との出会いが芽生えさせた国際協力への関心

名古屋で育ち、幼いころから海外の文化や英語に親しんでいた杉戸は、自然と世界に目を向けるようになりました。進路を考え始めた高校生のころには、国際課題や国際協力により強い関心を持つようになります。

杉戸「家の近くにJICAの地域拠点があったんです。セミナーなどに参加するうちに、厳しい状況に置かれている国や人々のために、自分に何ができるのか、どう関われるのかを考えるようになりました」

その後、大学では社会科学を専攻し、幅広い選択肢から将来の道を模索する中で教育分野のゼミを選んだことがひとつの転機に。ノンフォーマル教育を専門に研究する教授との出会いが、教育を通じた国際協力という現在に通じるテーマにつながっていきました。

杉戸「大学時代に国際協力分野について調べる中で、教育は国の根幹であり、発展に大きく寄与するのではないかと気づいたんです。その一方で、教育はなにが正解なのか先進国でもまだまだ手探りで、その難しさとともに奥深さも感じました。大学時代は体育会バトミントン部で部活動に打ち込み、海外に行くことなく過ごしていたのですが、大学卒業前に現地で経験を積んでみたいと思い、“国際協力” “教育”と調べたところ、シャンティの海外研修プログラムの参加者募集を見つけました。教育文化支援にここまで特化している団体はないと感じ、自分の関心と重なったことで応募を決めました」


(ラオスでの研修時に訪問した事業地の学校。2016年撮影)

教育への探究心からたどり着いたシャンティ

そうして、大学卒業直前にシャンティのラオス事務所で1カ月の研修に参加。へき地の活動地にも足を運び、国際協力の現場を肌で感じました。

杉戸「現地で社会課題に向き合う人の顔が見えたのが印象的でした。それまでは机上の知識だった“支援”が、初めて現実のものになりました。現地の人と試行錯誤しながら社会をよくしようとする姿に触れ、“一方的な支援”ではなく“共につくる”という関わり方を学びました」

研修を通じて国際協力に教育で関わりたいという想いを確かめた杉戸でしたが、大学卒業後は国際協力の道には進まず、まずは民間企業で社会経験を積むことを選びました。約3年間の勤務を経た後、青年海外協力隊として中東ヨルダンへ赴くことに。驚くことに、このキャリアは偶然ではなく、杉戸の思い描いた計画通りだそう。

杉戸「大学卒業の時に、まずは民間企業で3年働いてから、青年海外協力隊として経験を積み、そこから国際協力の道へ進もうと考えたんです。協力隊ではヨルダンの学校をまわりながら、環境問題や水資源についての授業実践に取り組みました。どうすれば子どもたちが自ら気づき、行動できるか。実際に教育に携わったことで、子どもたちの気づきや行動を促すしかけを考えることが好きだと気づきました。より教育分野に携わりたいと思うようになりました」


(ヨルダンでの授業の様子。2019年撮影)

協力隊としての活動を開始して数カ月後、世界は新型コロナウイルス感染症の猛威に襲われます。世界各地で活動していた全隊員は2020年3月以降に帰国。国際協力への不完全燃焼な想いを抱えながら日本に帰国した杉戸は、次のステップとしてイギリスの大学院進学を選びました。

杉戸「2020年9月になんとか渡英し、対面授業で国際教育協力について学びはじめたものの、わずか3カ月後からすべてオンライン授業に。修士論文は日本に帰国して執筆しました。帰国後は学生のころにボランティアで関わっていた、とある公益財団法人に就職しました。ただ、シャンティ・ラオス事務所でのインターンの経験が色濃く記憶に残っていたこともあり、いつかはシャンティで働きたいと思い続けていました」

公益財団法人で3年ほど、主に国内の教育分野で経験を積む中で、途上国への国際協力に関わりたいという想いがますます膨らんだ杉戸は、ようやく目の前に開けたシャンティの門戸を叩くことになりました。

企業や青年海外協力隊で重ねた経験を携えてシャンティへ

こうして積年の想いを叶え、2024年3月にシャンティへ入職。現在は東京事務所の事業サポート課で、主にネパールとラオスを担当し、公的資金事業の管理や申請・報告、支援者向けの報告書などの作成、自身が参加したNGOの研修プログラムの企画・運営なども担当しています。

特に印象に残っているのは、2024年夏のネパール出張。海外職員や子どもたちの姿を実際に目にしたことで、日々の業務がより手に取るように感じられるようになったそうです。

杉戸「ネパールに1カ月間滞在する中で、地域や社会をよりよくしようとしている人たちが確かに存在することを改めて実感しました。東京事務所での普段の事務作業も、最終的に行きつく先が具体的に想像できるようになり、やりがいにつながりました」

(ネパール出張時に参加した会議の様子。2024年撮影)

現在は入職して1年以上がたち、業務を進める上で心がけているのは「まず自分で考え、仮説を立てて行動すること」と話します。

杉戸「自分の頭で考え、試しながら改善していくことが、結果へのコミットメントにもつながると感じています。ネパール出張での経験も踏まえ、進めている業務がどこにつながっているかも、常に意識するようにしています」

プライベートでは2024年には第一子が誕生し、業務に向き合う姿勢にも変化があったそうです。

杉戸「子どもが生まれてから、教育や発達に関わるシャンティの取り組みの意味をより深く感じるようになりました。シャンティの仕事は、人の人生に影響を与えるもので、取り組みに伴う責任もひしひしと感じています。組織全体で言うと、シャンティに入職して感じたのは、結果へコミットする意識が強いこと。定性的な目標だけでなく、定量的な目標とそれに向けた取り組み、そこからの成果と分析に力を入れていることを学び、気が引き締まりました」

これからも国内外の教育を取り巻く課題に取り組みたい

今後は東京事務所を拠点に、より広い視点から事業全体を俯瞰し、効率的かつ効果的に支援できるよう業務のスキルアップを目指しています。

杉戸「まだ2年目なのでしっかりと業務を覚えながら、より付加価値を高めていきたいです。現場にいなくても、国や分野を横断的に俯瞰しながら知識を深められるのは、東京事務所で働く利点。国際協力と教育の分野で幅広く見聞を深め、全体を見ながらどのようなサポートが必要か考えていきたいです」

教育への関心は変わらず、国内外の教育課題に取り組む姿勢も持っています。

杉戸「現在はシャンティで海外での教育課題に取り組んでいますが、日本の教育を取り巻く課題に対しても同じぐらい関心があります。特に関心のあるテーマのひとつが、大学で学んだESD(“Education For Sustainable Development” 持続可能な開発のための教育)です。持続可能な社会を創るために必要な知識・価値観・態度を育むための教育 なのですが、これからの社会にますます必要になってくると思います。
また、在留外国人が多い愛知県出身ということもあり、外国ルーツの子どもたちの学びにも関わってみたいです。子どもが生まれてより一層、国内外の教育に関わりたい想いが大きくなりました」

育児と仕事の両立や、新たな挑戦も続く中、「自分がやれることを模索しながら、一歩ずつ前進していきたい」と、教育への想いを軸にこれからも進んでいきます。

ロフィール 杉戸卓磨(すぎと たくま)

事業サポート課 アジア太平洋南アジアグループ 海外事業推進担当
2016年2月~3月 大学4年時にシャンティ・ラオス事務所で研修プログラムに参加
2016年4月    大学卒業後、民間企業に就職
2019年7月    青年海外協力隊としてヨルダンに赴任(分野:環境教育)
2020年3月    コロナ禍の影響で、ヨルダンから緊急帰国
2020年9月    イギリスの大学院に入学
2021年7月    公益財団法人に入職
2024年3月    シャンティ入職。事業サポート課 アジア太平洋南アジアグループ 海外事業推進担当(現職)

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企画・編集:広報・リレーションズ課 鈴木晶子
インタビュー・執筆:高橋明日香
インタビュー実施:2025年