2024.08.09
あなたにできること

講演会「日本から難民キャンプへ。旅する絵本のものがたり」開催報告

図書館
絵本
講演会報告

こんにちは。

学生の皆さんは、長い夏休みをどんな風に過ごしていますか?

思いっきりスポーツや勉強に打ち込んだり、将来やりたいことを探したり、のんびりと本を読んで過ごしたり、思い思いに日々を送っていることでしょう。

 

そんな中高生の皆さんに向けて、7月27日(土)、新宿区立こども図書館で講座を開催しました。

新宿区の各図書館が開催している「中学生・高校生等向け講座」の一環として、企画していただきました。

テーマは「日本から難民キャンプへ。旅する絵本のものがたり」。

アジアの子どもたちに翻訳絵本を届ける活動を長く続けてきたシャンティ国際ボランティア会の鈴木晶子が講師を務めました。

 

この日は、高校生だけでなく、小学生から大人まで難民問題やボランティア活動に関心をお持ちの皆さまが参加してくれました。

 

講師の鈴木からはまず、世界の難民と日本の人口はどちらが多い?との問いかけが。

皆さんはどちらだと思われますか?

日本の人口1億2414万人に対して、世界の難民の数は1億2000万人とほぼ同数なのです。そして、その数は増える一方です。難民のうち4割が子どもだといいます。

 

この日は、主にミャンマー国境にほど近いタイ国内にある「ミャンマー難民キャンプ」の様子が紹介されました。「キャンプ」とは言っても1984年の設立からすでに40年が経過しており、計9万人もが暮らす村のような雰囲気です。

ただ、管轄するタイ政府はあくまで一時的な受け入れという立場をとっているため、住環境は整備されていません。外出の自由がなく、一度もキャンプの外に出たことがない人もいます。学校は高校までしかないため、大学進学や自由な就職を望む若者もいます。

 

シャンティは、このミャンマー難民キャンプに2000年に事務所を開設し、キャンプの子どもたちのために図書館を作り、翻訳絵本を送る活動に取り組んできました。

鈴木からは、活動するうえでの苦労話も聞かれました。

雨期になると道が冠水して車が通れず、歩いて絵本を運ぶこともあります。教員たち自身が絵本や図書館を知らずに育ったため、送られてきた絵本を前に戸惑ってしまうこともあります。図書館の飾りつけや本棚の整備、それに教員たちの研修を重ねて一つの図書館が軌道にのるまで3年ほどかかります。

講演に続き、参加者の皆さまには、ミャンマー難民キャンプに送られるカレン語とビルマ語の翻訳絵本を実際に作っていただきました。

皆さん、無心にハサミを動かし、丁寧にシールを貼り付けてくれました。

 

現地の文字で慎重に署名して、絵本は完成。

予定の時間はあっという間でした。

参加者からは「翻訳シールの形は上が丸くて下がまっすぐという工夫がされていて分かりやすかった」「スマホで何でも調べられる時代になぜ絵本?と思っていたけれど、キャンプは電気が通っていなかったり携帯の電波が通じなかったりするような場所なんだと知って驚きました。文字を学び、世界を広げていくのに絵本が役に立っていることが分かりました」というような声が聞かれました。

ルワンダに留学経験があるという高校生は「アフリカで識字率を上げる活動をしたいと思っています。絵本を使って文字を覚えるのは、子どもたちだけではなく学ぶ機会がなかった大人たちにも有効だと思いました」と話してくれました。

 

また、終了後のアンケートにも、参加者の皆さんが感想を寄せてくれました。「実際のお話を伺いながら作業ができ、ボランティアの大切さがより感じられました」「今日、日本でつくったこの翻訳絵本が実際に子どもたちの手に届いて、世界を知ってもらうきっかけになるのがとても楽しみです」など、楽しく有意義な時間になったようでうれしく思います。

 

今回つくっていただいた絵本は、下記の2タイトルです。来年の春に、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプに届けられます。

『ダメ!』作:くすのき しげのり、絵:いもと ようこ 佼成出版社

『せんそうがやってきた日』作:ニコラ・デイビス、絵:レベッカ・コッブ、訳:長友 恵子 鈴木出版

 

時間に余裕のある夏休み。

ぜひ、アジアや世界の子どもたちに思いを馳せるお時間を取ってみてはいかがでしょうか?

「絵本を届ける運動」は、個人でもご参加いただけます。

お友達と一緒に、または親子で取り組んでもらえましたら幸いです。

■参加申し込みはこちらから■

(広報リレーションズ課・青木)