【翻訳絵本づくりワークショップ開催報告】横浜市立箕輪小学校の皆さまにつくっていただきました
2024年6月28日(金)、横浜市港北区の箕輪小学校で「絵本を届ける運動」のワークショップを行いました。
箕輪小でのワークショップは、今年で5回目。創立された2020年から毎年ワークショップをしてくださっています。
開校時は約500人だった児童数は、わずか4年で約1100人と倍増したそう。再開発の影響で勢いのある地域にあり、校内も活気に満ちた印象です。
この日は梅雨らしいあいにくの天気ながら、子どもたちは元気いっぱいの挨拶で迎えてくれました。ワークショップに参加してくれるのは、6年生です。
早速、1階のホールで、シャンティ事務局長の山本英里による講演が始まりました。山本は「学びたくても学べない、学校も図書館も、読む本もない子どもたちが大勢います」と世界の状況を説明。シャンティがこれまでに40万冊の絵本を届けてきたことを説明しました。
「文字が読めないとどんなことが起こると思う?」と問いかける山本の質問に、生徒たちは「騙されてしまう」「危険な目に合う」「お金を稼げない」と次々に手を挙げて答えてくれました。
続いて、シャンティが作成したアフガニスタンの映像を見てもらいます。アフガニスタン事務所はちょうど20年前に開設されました。それ以来建設・支援してきた「子ども図書館」で、目を輝かせて絵本を読む子どもたちの様子に、みな真剣に見入っていました。
次は、いよいよ翻訳絵本を作成する作業に移ります。
学年主任の堀越俊先生が「今学んだ子どもたちの状況に思いを馳せて、その思いをシールに乗せて貼ってください」と呼びかけ、ホールからそれぞれ教室に戻って作業開始です。
まずは、翻訳シールをハサミで切って貼っていきます。最初は、黒い枠線が残らないようにこわごわとハサミを動かしていた子どもたちでしたが、すぐに慣れてリズミカルに作業が進みます。
続いて、切り取ったシールを丁寧に文字の上に貼り付けます。
最後にもう一つ大切な作業が待っています。裏表紙に、現地の言葉で自分の名前をサインするのです。翻訳絵本を作るセットには、各言語の「あいうえお表」が入っています。この日作った絵本は、クメール語(カンボジア)、ラオス語(ラオス)、ビルマ語(ミャンマー)、カレン語(ミャンマー・タイ北部)の4つの言語でした。
子どもたちは、あいうえお表を見ながら丁寧に名前を書いていきます。タブレットやノートに何度も書く練習をしたり、表を見て同じ形を探して分類したり、お友達の持っている別の表と見比べて見たりと、自分たちとは異なる文化を感じる体験をしてくれたようです。
終わった後、「字の大きさやバランスが難しかった」「自分の名前を初めての言葉で書くのがわくわくした」と話してくれました。
今回で5回目となったワークショップですが、当初、実現するまでには大変な苦労があったそうです。井上強校長先生が、当時の様子を教えてくれました。
「初めてのワークショップは2020年。箕輪小は4月に新設されたばかりでいきなり新型コロナの影響を受けました。世の中が暗く悲しいニュースばかりになり、すべてが止まってしまった。この先どうなっちゃうんだろうと途方に暮れていた時に『絵本を届ける運動』を知り、いろいろな方の支援を得て、ワークショップを実現できました」。
これが、校外から色々な方に来てもらって学校を作っていくという方向性への出発点となったのだそうです。
実現を大きく後押ししてくださったのが、地域の企業・株式会社コーエーテクモホールディングスです。というのも、「絵本を届ける運動」は1冊3000円の有償プロジェクト。費用を助成してくださっているのが、コーエーテクモさんなのです。
この日はコーエーテクモさんからも3名が参加してくださいました。総務部副部長の坂本毅さんによると、従業員の中には箕輪小の保護者も多数おられるとのこと。にこにこと子どもたちを見守り、「地域に密着しているので、こうして地域貢献できれることがうれしいです」と話してくれました。
民間の企業が、地域の子どもたちのために費用を負担して、子どもたちの成長や交流を支える。箕輪小でのワークショップは、企業と学校の一つの新たな形を提示してくださっているような気がしました。
シャンティの「絵本を届ける運動」を介して、こうした地域交流、国際貢献が定着していることに、心より感謝いたします。
今回つくっていただいた絵本は、下記の6タイトルでした。来年の春に、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプに届けられます。
『おふねにのって』スギヤマ カナヨ 作 赤ちゃんとママ社
『かぞえてみよう』作:さかざきちはる 白泉社
『いろいろバス』作: tupera tupera 大日本図書
『こねこが』作: まつおかたつひで めくるむ
『たまごのあかちゃん』作: 神沢 利子、絵:柳生 弦一郎 福音館書店
『かなしみがやってきたら きみは』作:エヴァ・イーランド、訳:いとうひろみ ほるぷ出版
このワークショップで、子どもたちの心にはどんな種がまかれたことでしょう。その種がいつか芽吹き、花開いてくれる日を楽しみに、土砂降りの雨の中、心温まる思いで帰路につきました。
(広報リレーションズ課・青木)