2019.07.10
海外での活動

【遅まき速報】: 4回目の帰還、始まる。

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ

7月1日から3日間、4回目の帰還が行われました。

これは、タイ、ミャンマー両政府合意のもと、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR; 以下UNHCR)が仲介し、ミャンマーへの帰還が行われたもので、今年に入って2回目の帰還となります(前回は2月に実施)。

https://sva.or.jp/wp/?p=32520

今回実際に帰還した正確な人数は、公式な報告が待たれますが、予定では6つのキャンプからおよそ300人が帰還することになっていました。この規模の帰還は、これまで実施された4回の中で、前回に続く2番目の大きさでした。しかし、それでも難民キャンプの総人口の0.4%に満たず、今までで最大規模だった今年の2回分を合わせてもこの方法で帰還をした人たちは、全体の1%程度しかいないことになります。

帰還に使用されるIOMの車

帰還で使用される国際移住帰還(IOM)の車

何が帰還を足止めしているのか?

これまで私たちは、帰還が進まない理由として、難民の人々の間に広がる不安の存在をお伝えしてきましたが、年2回程度しかやらないのもいけないのでは?もっと増やせばいいではないかと、帰還の手配について疑問を抱く方もいるかもしれません。では、なぜ回数を増やさないのでしょうか?

テクニカルな要因として、両政府間の合意が帰還を年2回と定めていることが挙げられます。帰還実施までの手続きを鑑みて、これ以上増やすのが現実的ではないことが理由の一つでしょう。というのも、帰還を実施するまでには、相当程度の時間を要します。UNHCRが帰還希望者の情報を集め、帰還者のリストを作って政府に送り、政府が確認作業をする。翻訳や情報など記載内容に不備があれば送り返してもう一度書き直してもらう。大雑把に流れを書いても時間を要し、煩雑に見えうる過程について、UNHCRの職員は以下のように話します。「官僚主義的だというご批判があるかもしれないが、領域を有した国家間のやり取りである以上、手続きを怠って不法移民等様々な問題の原因を許すわけにはいかないし、政府の把握できない帰還者はミャンマーでの生活が困難になるだろう。ゆえに、この手続きは重要である…が、とても悩ましいのは確かです。」

出国手続きの様子

出国手続きの様子 (以前のもの)

住民が帰還する意志を阻害する要因と手続き的な要因。難民の帰還の数増加を妨げていると思われるこの二つの難題をどう改善していけばよいのか。国際的な援助の減少が進むにつれて、この問い深刻さは増していくでしょう。なにはともあれ、帰還された方々の生活がより良いものになることを願っています。

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所インターン 佐藤有生