2012.11.13
海外での活動

アイデンティティに向き合う場所

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ

皆さん、こんにちは。ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の菊池です。

今回は、特別に小野所長と2本立てで書かせて頂きます。

先週、ウンピアム、ヌポ、メラ、メラマルアンの4カ所の難民キャンプで開催した難民子ども文化祭が無事に終了しました。ミャンマー(ビルマ)国内には135の民族数があると言われていますが、タイ・ミャンマー(ビルマ)国境の難民キャンプにも地理的な要因でカレン族、カレニー族が多数派ではありますが、多くの民族の方が暮らしています。

難民子ども文化祭には、キャンプごとに6~12の民族の子どもたちが参加し、日中の部では、民族の垣根を越えたチームでゲームに挑戦したり、文化祭ソングの練習をしたり、青年ボランティアの人形劇を観賞するなど、レクリエーション活動を楽しみました。また、夜の部では、各民族の子どもたちが、自分たちの民族の伝統文化である舞踊や歌を披露しました。

(昼の部)

(夜の部)

この文化祭を通して、自分自身の民族の文化に自信を持つと同時に、新たにできた友達の民族の文化を学び、そして尊重する中で、今年の文化祭のテーマである、「私たちの文化の多様性に誇りを持つ」ことを実現していってほしいと願っています。

長くなりましたが、ここまでが導入で、今回は、「アイデンティティ」をテーマにブログを書きたいと思います。

今回、この文化祭に参加して、私は何度も「アイデンティティ」について考えさせられました。私は、この難民子ども文化祭は、各民族のアイデンティティの体現の場であり、特に祖国を追われた人々にとってはアイデンティティの復興の場、そして異文化に囲まれた中で自分自身の存在を肯定する場なのではないかと感じました。

自分は一体何者なのか。

そんな問いを普段はあまり考えないと思うのですが、私自身、異文化の中で生活していて、ふとこの問題に直面することがあります。

難民子ども文化祭にいらっしゃったご支援者から、在日韓国人の青年たちの苦悩について話を聞く機会がありました。日本の社会の中で、必死に自分が韓国人ではなく、日本人であると思い込もうとするけれど、年齢が経つにつれて、社会の中で「日本人」ではないことを突きつけられて、自分自身は一体何者なのか、と自分のアイデンティティに苦悩する人々が非常に多いそうです。

その方は、在日韓国人の子どもたちへ韓国語を教えたり、韓国の文化について紹介したりするなど文化活動をしていらっしゃいます。その中で子どもたちに自分たちのアイデンティティに自信を持ち、日本の社会の中で自分たちを肯定して欲しいと願っているそうです。

このお話を伺って、難民キャンプに住む子どもたちにとっても、同じことが言えて、異なる文化の中でも自分たちのアイデンティティに自信を持って、肯定していくこと、それが生き生きと生きることに繋がるのではないかと感じました。

人は飢えや病気で亡くなることもありますが、自己否定の中で絶望に陥ることほど辛いことはありません。

このアイデンティティに向き合える場所、そしてコミュニティの中でそのアイデンティティをきちんと認めてもらえる場所を作っていくことは、私はSVAの重要な役割だと思います。それは、本や文化活動などを通して実現できると思っています。

今回の難民子ども文化祭の間にヌポ難民キャンプのキャンプリーダーから、こんな話がありました。「アイデンティティを形作るものは、歴史や政治など様々ありますが、文化そして言語は非常に重要な要素です。SVAには、この文化、言語について支援をしてもらっており、とても感謝しています。」

1980年代にカンボジア難民キャンプから始まった図書館活動も、もともとは「失われた文化やアイデンティティの復興」がテーマだったのではないかと思うところもあります。

本や文化活動を通して、自分のルーツを探ることができます。特に祖国を失った人々、故郷を離れざるを得なかった人々は、祖国や故郷への思いが非常に強いので、自身のアイデンティティに触れられるものがあることの意味はとても大きいようです。実際、難民キャンプの中でも、歴史の本や自分の民族の本のニーズは非常に高いです。

異なる文化やアイデンティティを簡単に否定する社会は、もちろん社会そのものを変えていく必要がありますが、それと同時に異なる文化やアイデンティティを認める場をきちんと増やしていくことが非常に大事だと思います。その役割をSVAが担っているのではないか、そんなことを難民子ども文化祭に参加しながら考えていました。

本や文化活動には、自分のアイデンティティを取り戻す、アイデンティティに確信を持つ、それができる力がある。

私が難民子ども文化祭を通して感じたことを難民キャンプの人々やナショナルスタッフと共有し、さらに彼らの思いも聞いて、来年の文化活動に反映させていきたいです。

(私も図書館ユースボランティアと一緒に盆踊りを披露しました!)

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所 菊池礼乃