2016.04.12
海外での活動

カンボジア・幼児教育事業始動!~子どもたちのより良い成長のために

カンボジア

みなさま、こんにちは! カンボジア事務所の萩原です。

シャンティは2015年より「幼児教育の質の改善事業」を開始しました。2015年は小規模に3か所の幼稚園で試行的に活動を実施しています。そして今年2016年より本格始動。2016年に18か所、2017年にさらに18か所の幼稚園を支援し、2018年に全対象幼稚園のフォローアップを行います。

今回は本格始動した幼児教育事業についてご紹介します!

Q.どこでやっているの?   

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カンボジア北西部のバッタンバン州で実施しています。具体的には、バッタンバン市(州都)、バナン郡(郊外)、トモー・コール郡(郊外)、バヴェル郡(農村部)、カムリエン郡(国境地域)が対象地です。カンボジアの様々な状況に対応できる事業モデルが確立できるよう、性格の異なる郡を選びました。

Q. なぜ幼児教育?

幼児教育は、その後の人間の発達の基礎を形作る、非常に重要な時期です。乳幼児期は人間の脳が最も急速に発達する時期であり、この時期に必要なケアや教育が不足することは、その後の発達に大きな影響を及ぼします。

幼児教育は、2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発目標/Sustainable Development Goals(SDGs)」においても、2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにすることが目標として明記されています。

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こちらは、村の人たちに幼児教育の重要性を啓発するために、教育省の資料等を参考に作成したポスターのイメージの一部です。

幼児教育で培った「身体的発達と健康」「道徳的文化的発達」「社会的情緒的発達」「知的・思考能力面の発達」「言語の発達」などの基礎が、その後の小学校教育にスムーズに移行することにつながります。

ちなみに、カンボジアの小学校1年生での留年率は10.0%、退学率は6.3%に上ります。小学校一年生で留年したり退学したりしてしまった子どもたちは、小学校すら卒業できず、読み書きなど生きていく上で必要な基礎的なスキルを欠いたまま大人になる可能性が高くなります。

貧しくより厳しい家庭環境にある子どもたちこそ、こうした罠に陥りがちです。こうした悪循環を断ち切る上でも、幼児教育は重要です。

Q. どんな幼稚園が対象?

小学校併設の公立幼稚園を対象に実施しています。カンボジアの幼稚園は、大きく①公立幼稚園、②コミュニティ幼稚園、③私立幼稚園の3つに分けられます。現在カンボジアには、計6913箇所の幼稚園があります(2015/2016年教育省データ)。

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公立幼稚園のほとんどは、小学校の空き教室で実施する小学校併設型。中には、小学校併設でない独立型の幼稚園もありますが、かなり少数です。

幼稚園の選定調査の様子については、「怒涛の対象幼稚園選定調査」をご覧ください。

Q. 具体的に、何をしているの?

大きく分けて、①おはなしや教材制作、教室環境作りなどの研修会、②子どもにとって親しみやすい教室環境作り(家具・教材配布等)、③幼児教育の重要性の啓発―の3つの活動を行うことで、幼児教育の質の改善を目指しています。

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こちらは2015年度支援の3幼稚園を対象に実施した教員研修の様子。おはなし読み聞かせで活用するエプロンシアターを制作しています。

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配布した絵本を使い、読み聞かせを行う幼稚園の先生。(「三びきのこぶた」福音館書店)

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自由読書を楽しむ子どもたち。文字がわからなくても、聞いたおはなしを覚え、絵を読む。絵本に親しむ中で、文字に興味を持ち、言語の発達につながります。また、絵本のストーリーを通して、良い/悪い行いについて学んだり、相手の気持ちを理解したり、物語の流れを理解したりすることができ、情緒や思考の発達につながります。

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支援した教室。絵本コーナーや教材棚、かばん用ロッカーなどを配置。

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自分のかばんをロッカーへ。引き出しは、ビール缶用の箱にカラーペーパーを貼り付けて制作。カンボジアの人もビールが好きなので、どこでも手に入ります。「子どもたちが自分でお片づけできるようになった!」とのうれしい報告を先生から伺いました。

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対象幼稚園の校長先生、学校支援委員会(地域住民)、幼稚部教員と事業実施の合意書取り交わし。ちなみにこちらの幼稚園は、前回のブログ「怒涛の対象幼稚園選定調査」で紹介したおじいちゃんと校長先生がいる幼稚園です。

また、事業の成果がバッタンバン州、さらにはカンボジアの他の幼稚園にも波及するよう、教育省幼児教育局や州・郡教育局とも連携して活動を進めています。

…長くなってしまいましたが、子どもたちのより良い成長を支えるために必要なのは、「楽しい!」「やってみたい!」「幼稚園に行きたい!」、そんな気持ちを引き出せるような幼稚園作りをしていくことだと思っています。楽しく、かつ、子どもたちのより良い成長をサポートできる事業を行っていきたいと思います。

これからも応援よろしくお願いします!

本事業はJICA草の根技術協力事業の一環として実施しています。

カンボジア事務所 調整員 萩原 宏子