2019.02.04
海外での活動

ミャンマー初の絵本と紙芝居「おはなしコンテスト」開催

ミャンマー

アジア地域ディレクターの八木沢です。シャンティがアジア各国での図書館活動の支柱であり魂、教育の原点として位置付けている「おはなし」(読み聞かせ)。その初めてのミャンマーでの「おはなしコンテスト」が年1月26日と27日、ミャンマーの中部バゴー地域のピィで開催されました。シャンティの主催で、ミャンマー情報省と教育省の協力で開催となりました。コンテストに参加したのは、図書館員や小学校の教師の代表たち28人。紙芝居の部と絵本とパネルシアターの3部門で競われ8人が入賞しまた。私は審査員とした参加し、閉会式でシャンティを代表して挨拶をさせて頂きました。

DSC_0860     「おおきなかぶ」(A.トルストイ.福音館)の絵本を使って「おはなし」をする参加者の教師

「おはなし」の審査のポイントは、声、速さ、表現、技術、コミュニケーション等の項目に分かれていました。日頃、小学校や図書館等で研修と実践をしているので、それぞれに工夫を凝らしているので審査の点数もそれぞれが高く優劣をつけがたく全員を入賞させたい程のレベルの高さに驚きました。

「紙芝居」を使用して「おはなし」をする小学校の教師

「紙芝居」を使用して「おはなし」をする参加者。

「おはなしは、教育の原点」

シャンティは、「おはなし」は読書推進、図書館活動の中で「教育の原点」として位置付けています。シャンティの図書活動には、「おはなし」があるのが他の団体と大きく異なることです。「おはなし」は、子どもたちが声を上げて、笑い、読む楽しさを知り、世界を広げ、知る喜びを味わい、想像力を養う土台を築くことを願っての活動です。「おはなし」によって、日本から「絵本を届ける運動」で届けられる絵本の価値が倍増しています。2018年だけで、4,184冊がミャンマーに届けられています。

「おはなし」コンテストには、子どもたちが参加

「おはなし」コンテストには、子どもたちも参加

「絵本がなくても図書館活動ができる」

近代的な学校教育が開始される以前の多くの世界の民族は、民話や昔話等によって、それぞれの民族の文化や伝統、価値、知識などを伝えてきた歴史があります。おじいちゃんやおばあちゃんから孫へ、あるいは両親から子どもたちへと継承されてきました。多くの民話は、素話で伝えられていました。こうしたことから、民話や「おはなし」が教育の原点であると考えてきました。農村などに絵本が殆どなかったカンボジアなどの国でも、「おはなし」の研修をする際に、絵本や紙芝居を使わない「素話」の手法を大切にしてきました。多くの農村では、絵本が不足して、買うお金の余裕がありません。「絵本がなくても図書館活動ができる」。教師や図書館員は、このことが大きな勇気となっていました。私は、閉会式のスピーチの中で、このことを強調させて頂きました。

国境と文化や言語を超えて一丸となったシャンティの職員たち

国境と文化や言語を超えて一丸となったシャンティのミャンマー人と日本人職員たち

ミャンマー事務所は開設して5年。中原所長と伊藤さん、黒田さんと20名のミャンマー人職員が一つの目的の元に一つとなり情報省、教育省、図書館員、小学校の教師と協力してミャンマー初めての「おはなしコンテスト」を成功させました。「おなはし」を初めて見る教育省や情報省の幹部職員たちの口からも「おはなし」を中心とした読書推進、図書館活動をミャンマーの教育改革、教育の質の改善の中核としてに役に立てたいといった声が相次ぎました。

小学校で絵本を読む子どもたち

小学校で絵本を読む子どもたち

「ミャンマーの教育の質の改善へのチャンレジ」

仏教国のミャンマーでは、僧院の経典を暗記した伝統から、教育は「知識・暗記・暗唱型学習」型が中心でした。教科書を繰り返して読み、教師の一方的な説明スタイル。教育とは、どれだけ知識を暗記し、試験でいい成績をとるかが重要でした。進学するにも熾烈な受験と競争がありました。これからも、伝統的なミャンマー式の教育とのジレンマの闘いが続くと思います。それでも今回の「おはなしコンテスト」は、シャンティの職員にとっても、大きな自信と希望につながりました。コンテストの開催の準備は、本当に大変で不安だった。しかし、来年もまた、開催したいという声がミャンマー人の職員から口々に上がりました。情報省や教育省の幹部職員も是非、次回も開催して欲しい。開催に対しての最大の協力をしたいとの声が上がっていました。多くのミャンマーの地方の農村の小学校には、図書館も絵本もありません。ミャンマーの現場での試行錯誤とチャンレンジは、これかれも続きます。絵本を有効に活用するためには、「おはなし」の研修と実践は不可欠です。絵本と伝える教師や図書館員の研修はとても大切です。「おはなしコンテスト」は、研修と実践の成果を披露する場でもあります。

「ミャンマーの全ての子どもたちにおはなしを」「ミャンマーの全ての子どもたちに本を」「ミャンマーの全ての子どもたちに図書館を」の皆さまのご理解とご支援を宜しくお願い致します。