ラオス:僻地の学校ってどうなってるの?
こんにちは、ラオス事務所インターンの松永です。
11月初旬、教育行政官と教員養成校教官と、車で4時間かけてヴィエンカム郡へ行ってきました。
ヴィエンカム郡は、複式学級が全体の58%を占めており、2014年~2017年まで弊会が国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業の協力を得て、複式学級指導改善活動を実施していた”前”事業地です。
2018年8月からは、事業地をパクセン郡とポントン郡に移して、同事業の第2フェーズを実施しています。
では、なぜ”前”事業地であるヴィエンカム郡に来たのかというと・・・
目的は「複式学級の実際の現場の理解を深めること」です。
この視察は、過去4年間のシャンティの取り組みが、現場にどのように反映されているのかを知れる、大きな意味を持ちます。
また、これまでヴィエンカム郡の先生方が習得してきた複式学級指導技術を学べるだけでなく、現課題も知ることで、新事業地における活動の中で役立てていくことができます。
今回は、3つの小学校の複式学級の授業を見学してきました。
複式学級と一言でいっても、学校によっては、1教室に2学年、または3学年がひとまとまりになることもあります。
私は、前職が先生だったので、授業準備の大変さが痛いほどわかります。どのタイミングで、どのレベルの課題を提示するべきか。どんな発問が、子どもたちの考える力を養うことにつながるのか。どのように授業展開をすることで子どもたちの興味を引き付けられるか。この課題の中では、グループ学習、一斉学習、ペア学習、個別学習どれが最善な学習形態か。などなど、先生はたくさんの視点をもって授業を構成していかなければなりません。
それが複式学級になると、同じ45分の中で2学年、3学年分の授業構成を考え、それぞれに合った教材の準備をしなくてはなりません。本当に気が遠くなる作業です。
Brunswic&Valerien(2004)によると、複式学級の失敗要因は3つあり、その1つは教材資源の欠如とあります。(鈴木訳,2015 p.34) ラオスの子どもたちは、日本の子どもたちのように既存のおはじきやそろばんといった教材を持っているわけではありません。先生たちも全学年の教材を買う余裕もありません。学校に印刷機があるわけではありませんから、プリントも1枚1枚先生が手書き。つまり、教材はすべて先生が手作りをしなければならないのです。
毎時間、各学年に教材を準備することは、きっと難しいであろうと・・・と思っていました。
が、今回見学した学校の全先生方が、ペットボトルのキャップ、ピクチャーブックや模造紙などそれぞれ創意工夫を凝らした手作り教材を生かし、授業を実施していました。子どもたちも嬉しそうに先生の手作り教材を使っています。
先生たちの授業で、何より特筆すべきは、先生方のきめ細やかな支援です。1つの学年を指導中に、他学年が課題に手が止まっていると、即座に気づき、助言をします。クラス全体を見渡しながらも、個々に目が行き届いている先生たちの素晴らしい視野の広さは、これまでの複式指導を行ってきた努力の証であるように感じました。
授業見学後は、振り返り会議です。
初めに、先生が授業の構成やその意図の説明をします。その後、参加者が意見や質問を出し合います。
「先生の理想の立ち位置は?」「高学年から指導するのは間違いか?」など様々な観点で話し合いが進み、最後には現状の課題に対する具体的な改善策の提案があり、とても生産性の高い有意義な時間となりました。
ラオス事務所にインターンとして着任し、5カ月半。業務の中で、様々な活動報告書に目を通し、現場を見てきた現地職員から僻地の学校の様子を聞いてきました。正直なことを言えば、その中で唯一確信を持っていたことは、それぞれが熱意をもって、できることに全力を尽くしていることでした。しかし、彼ら彼女らの思いや努力がどこまで現場に反映されているのかは、これまで実際の教育現場を見ていなかった私にとっては、ずっと不確かなものでした。
しかし、今回の現場の視察を通して、その漠然とした不安は払拭され、
「ラオスの教育は必ず良くなる、いや、その過程にある」と、確信を持つことができました。
最後までご覧いただきありがとうございました。