世界の難民と日本の私たちー難民問題は遠い国の話ではありません
(イスラマバード近郊のアフガニスタン難民キャンプにて:撮影・川畑嘉文)
世界には、紛争や人権侵害などから命や生活を守るため、母国を離れ避難生活を余儀なくされた「難民」が大勢います。難民と聞くと、どこか遠い存在のような気がしてしまうかもしれません。しかし、彼らも難民になる前は私たちと同じように、普通の生活をしていました。学校に行ったり、仕事をしたり、家族や友達と過ごしたり。それが突如、様々な理由で日常が奪われ、国を離れざるを得ない人々がいます。
難民とは
難民とは「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人々」と、難民の地位に関する条約(難民条約:Convention Relating to the Status of Refugees)によって定義されています。
つまり、紛争や政治的弾圧、人権侵害などの理由から、母国を離れ避難生活を余儀なくされた人々のことです。「難民」や難民としての庇護を求めている「難民申請者」、難民と同じような状況にありながらも国外へ避難できず国内で避難している「国内避難民」が6530万人います。
数字で見る世界の難民の現状
難民の出身国を多い順に見ると、シリア490万人、アフガニスタン270万人、ソマリア110万人となっています。2011年から始まったシリア内戦の影響で、シリアから逃れる難民が特に増えています。シリアに比べると人数は少ないのですが、南スーダンからの難民も増加しています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告によると、2016年6月末時点で、南スーダンから逃れた難民は85万4200人に上り、3年で8倍以上に増えました。
一方、難民の受け入れ人数が多い国は、トルコ250万人、パキスタン160万人、レバノン110万人と続きます。先進国に庇護を求めることは難しいため、まず近隣の開発途上国へ逃れる難民が多く、開発途上国で避難生活を送る難民は、難民全体の86%を占めます。特に、後発開発途上国は全体の約26%に当たる420万人の難民を庇護しており、難民受入国の負担が課題となっています。
難民はどこへ向かうのか
母国から逃れた難民はどこへ向かうのでしょうか。難民の行く先にはいくつか選択肢が考えられます。
(1)自主帰還:難民が安全に尊厳を持って母国へ帰る
(2)庇護国社会への統合:受入国に統合して、受入国からの保護を受ける
(3)第三国定住:一時的に逃れた国ではない第三国が難民へ定住の資格を与えることに同意し、難民を受け入れる
どの選択肢がもっとも好ましいかは、決まった答えがあるわけではありません。難民それぞれが選択しなければならないからです。
日本の難民受け入れ状況
実は日本にも難民がいます。日本の難民受け入れの歴史は古く、東南アジアの体制変化により国から逃れたボート・ピープルの受け入れに始まりました。その後1981年に難民条約に加入し、日本は難民を保護する国際的な責務を負うことになります。
現在、難民が日本で暮らすためには、大きく二つの方法があります。
一つ目は、日本で難民認定を受けることです。2016年、79ヵ国1万910人の難民申請が行われ、28人が難民として認定されました。難民認定率は約0.25%と先進国の中では低い数字です。
二つ目は、第三国定住制度を利用する方法です。第三国定住制度とは、出身国に帰国することができない、あるいは帰国することを望まない難民が一時的に逃れた国ではない「第三国」に定住する制度です。日本は2010年に第三国定住パイロット事業を始め、2016年までにタイの難民キャンプからミャンマー難民の31家族123人を受け入れました。ただ、この制度はミャンマー難民のみに限定されています。また、日本政府はシリアの深刻な人道危機への対応としてシリア難民とその家族を2017年から5年間で300人受け入れる方針を示しました。
6月20日は「世界難民の日」
日本の難民受け入れには制度的な制限があり、難民に対して寛容な国とは言えません。より難民を適切に受け入れることができる社会にするため、社会的な認知度を上げようと、毎年6月20日は「世界難民の日 (World Refugee Day)」に合わせて、様々なイベントやキャンペーンが開催され、全国各地で難民について考える機会が提供されています。「世界難民の日」に合わせて、世界の難民について考えてみませんか?
https://sva.or.jp/wp/?p=23183
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