共に進んでいくこと
こんにちは。
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の菊池です。
12月に入り、コミュニティ図書館のある7ヵ所の難民キャンプで、図書館関係者と共に1年間の活動を振り返る年次会議を実施しています。先週は、メラ、ウンピアム、ヌポ難民キャンプでこの会議があり、図書館委員会、図書館員、図書館青年ボランティアに加え、読書推進活動を積極的に取り入れてくれている学校の教員やセクションリーダーが参加し、今年1年の活動の成果や来年に向けた取り組みについて話し合いました。
実は、今回の年次会議は、私にとっては、例年になくとても緊張する会議でした。
というのも、2019年以降の図書館事業の方向性について、これまでカウンターパートであるカレン難民委員会教育部会等と議論してきた内容を、普段図書館活動に直接携わり、利用者と触れ合っている図書館委員会、図書館員や青年ボランティア、学校教員、セクションリーダーに伝える役目を担っていたからです。事業が拡大するという話であれば、こんなに緊張することもありませんが、現在の難民キャンプの状況や帰還に向けた動き、資金面も踏まえ、事業の縮小や終了に向けた話をすることになったため、どのように伝えるべきか、どうしたら関係者のモチベーションを下げずにすむのか、この数週間、色々考えを巡らせていました。
難民キャンプによって状況は異なるものの、特に帰還を望まない人々が多くいる難民キャンプでは、これまで以上に閉塞感や八方塞がりな状況を現場にいて強く感じます。帰還も進まない一方で、国際支援が著しく減少し、NGOの撤退も相次いでいます。その閉塞感や先が見えない不安が、精神疾患をわずらう人々や自殺者の増加、家庭内暴力を含めた暴力事件の増加などを生み出している状況です。難民帰還については、タイ政府・ミャンマー政府の合意による初めての帰還が昨年10月にありましたが、第2陣にあたる人々は、今年に入ってからずっとミャンマー政府の最終受け入れ許可を待っている状態です。何も動かない状況に、難民キャンプ委員会の中には、ミャンマー政府は私たちを受け入れたくないのではないか?といら立ちを感じている人々もいます。そして、キャンプ内の住民に至っては、帰還先の安全、生活が全く不透明で、全く帰りたいという思いがない中で(※ただし、キャンプや個人によって差があります。)、難民キャンプの代表、国際機関、NGOの間で帰還の議論だけが進んでいること、それと同時にNGOの撤退や社会サービスの減少に拍車がかかっていることに、不安、ストレス、怒りを感じている人々も多くいます。
こうした背景もあり、図書館事業の縮小の方向性について、図書館関係者に共有することは、私にとっては全く容易なことではありませんが、図書館の現場で働く人々の理解、議論なくして次のステップに進むことはできませんので、これまでカレン難民委員会教育部会と議論してきた将来の方向性について、詳細まですべて図書館関係者に共有しました。
その反応は、キャンプによって、人々によって全く異なり、理解を示してくれる人、黙ってしまう人、不安を伝えてくれる人、様々でした。図書館の数、図書館での活動内容の削減まで踏み込んだ内容を伝えるのは初めてなので、多くの人々が理解を示していても、動揺を少なからず感じました。ただ、彼らが図書館活動の直接の作り手でもあるので、彼らの思いを素直に共有できたことはよかったと思いますし、彼らのフィードバックを踏まえて、再度カレン難民委員会教育部会と事業の方向性、具体的な方針について、協議したいと思っています。
こうした状況の中でも、キャンプの住民が本を手にし、本を通して様々な情報、知識、技術を習得していくこと、そして何よりも安心できる空間を作ることに尽力していくことは変わりません。2019年までまだ時間がありますので、今後、図書館関係者と建設的に議論を進めていきたいと思っています。キャンプが閉じる日が来るまで、本、図書館活動が、住民にとって有益なものとなるように、彼らと共に進んでいきたいと思います。
皆さま、いつもご支援ありがとうございます。
2019年以降の話をしましたが、その前に2018年の図書館活動も皆さまのサポートを必要としています。図書館の活動を楽しみに毎日来る子どもたち、ミャンマー(ビルマ)国内の情報収集をしたい大人、学校での勉強や自主学習に励む学生たち、図書館活動を通して生きがいを見出している青年ボランティア、そして、より良い図書館サービスを提供できるように日々奮闘している図書館員たちを是非応援していただけますと幸いです。
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の活動のサポートは、こちらからご参加いただけます。
よろしくお願い致します。
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所 菊池礼乃