日本の幼児教育をカンボジアへ~静岡での幼児教育研修
みなさま、こんにちは。
カンボジア事務所の萩原です。
今年9月、現在JICA草の根技術協力事業で実施中の幼児教育事業の一環として、カンボジアの教育省・局関係者、幼稚園の先生を日本に招聘しての研修を行いました。
研修の目的は、日本の幼児教育では主流となっている「遊びや環境を通した学び」について学ぶことです。研修は静岡県及び協力団体の社会福祉法人天竜厚生会のご協力で実現しました。
研修初日は静岡県の川勝平太知事(右)の表敬訪問。左はカンボジア教育省幼児教育局長のプラク・コサル氏。幼児教育事業を応援くださっている静岡県への感謝を伝えると共に、「幼児教育は国の発展、そして平和を実現するものであると信じている」との力強いメッセージを語ってくださいました。
日本の幼児教育の仕組みやカリキュラムについて学ぶ講義。講師を務めるのは天竜厚生会のベテラン保育士の方々。講義後は質問が止まず、たびたび時間延長。
静岡県浜松市の中瀬小学校を視察。幼児教育から小学校の1年生へのつながりを知るため、小学校1年生のクラスを見学しました。
天竜厚生会のやまびこ保育園での実習。1日目は外での虫捕り。カンボジアの幼稚園の先生も一緒に参加。子どもたちは捕まえた虫を図鑑と比べてにらめっこ。
「虫捕り」とはいっても、ただ虫を捕まえることが目的ではありません。子どもたちが自然に興味を持ち、友達と協力して活動に取り組むことが大切です。こうしたねらいが達成できるよう、日本の保育士の先生たちはあらかじめ様々な準備をしています。
翌日、翌々日は、1日目の虫捕りの活動からつなげた制作あそび。トイレットペーパーの芯をおりがみやモールで飾りつけ、バッタを作ります。この活動もただ制作するだけでなく、昆虫を観察して足の数を数えてみたり、いろいろな素材に親しんだりしながら、自分で作った達成感を味わい次への意欲につなげるなど、いろいろな工夫がされています。
やまびこ保育園での実習最終日には、お別れ会を開いていただきました。子どもたちが演奏する和太鼓を鑑賞したり、一緒にカンボジアの踊りを楽しんだり。最後はハイタッチでお別れ。
※ カンボジアの皆さんと子どもたちの交流については、こちらもご覧ください。
研修最終日の振り返り会議。カンボジアの参加者からは、「カンボジアでは現在カリキュラム改革が進められている。日本での学びを活かしたい」(教育省幼児教育局副局長)「1日目の活動がその後の活動につながっていく連続性に興味を持った。カンボジアでも実践したい」(バッタンバン州幼稚園教員)など、今後へ向けた意気込みを語ってくれました。
カンボジアの幼児教育では「教える・教育>遊ぶ・楽しみ」と、一方的に先生が教えるスタイルになりがちです。ただ、幼い子どもたちにとっては実体験を伴った楽しい遊びこそ必要であり、こうした経験の積み重ねがその後の育ちや学びへの意欲にもつながります。
今回の研修を通して、カンボジアの参加者がこうした「遊びや環境を通した学び」の重要性を実感し、カンボジアで活かしていきたいと話してくれたのは、私たちにとってとてもうれしいことでした。
カンボジアの幼児教育は今も多くの課題を抱えていますが、「もっと良くしていきたい!」とがんばる教育省の方々や現場の先生方がいます。子どもたちのより良い成長のために、日本、そしてカンボジアの皆さんと協力しつつ、これからも一歩ずつ事業を進めていきたいと思います。
カンボジア政府関係者及び幼稚部教員の皆さん、天竜厚生会の皆さん、シャンティスタッフ、通訳の方々と記念撮影
<おまけ>
10月、カンボジアに帰ってきた私を待っていたのは、「ヒロコさん!幼稚園の先生たちが、さっそく活動計画を作ってきたよ!」という、カンボジア人職員からのニュース。「やっぱり自分で計画作りをするのは自信がないわ…」と言っていたのに、先生、いつの間に!!
とてもうれしい驚きで、「よかったなあ」と心から思った瞬間でした。
カンボジア事務所調整員
萩原 宏子
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