村の伝統儀式
皆様、こんにちは
5月のある日、学校調査のため事業対象地であるルアンババーン県パクセン郡の村に郡教育局の担当官と出かけました。ここでラオスに来てから始めて、また他国でもあまり記憶にない経験をしました。
それは、村の中に入れてもらえなかった事です。
郡の中心の町からガタガタの山道を車で走る事約2時間、ようやく目指す村が見えてきたと一息ついたところ、道が村の手前で一時的な柵でふさがれ通行止めになっていました。
その柵には、「今日は伝統的な儀式を行っているので、村人以外は立ち入り禁止。これに違反した人には1,500,000キップ(約2万)の罰金を課す。」となんだか物騒な張り紙が。
通常村を訪問する時には、郡教育局の担当官が事前に村に連絡を入れてくれます。ただ、この村は奥地にあり携帯電話が繋がりにくいため、やむを得ずアポなしで訪問したのですが、こんな結果になるとは予想外でした。
門の反対側にいる村人は普段通りの様子で、我々を見てニコニコを笑っています。郡の担当官が訪問の目的を告げると、学校の先生を呼んできてくれました。しかし、先生は柵を超えてこちらには来てくれません。実はこの儀式中は、村人も村の外に出ることができないのです。
わざわざ2時間も山道を走ってきたのに手ぶらで帰るわけにはいかないので、やむを得ず、学校の先生方と柵越しに話し合いを行いました。学校の情報を記載した書類は柵の上から渡してもらい、学校の様子を知りたいと伝えると、我々からカメラを借りてわざわざ写真を撮ってきてくれました。お陰さまで、何とか必要な情報は手に入れることができました。
協議中、近隣の村の人と思われる人がバイクで村の入り口まで来ましたが、やはり入れてもらう事ができません。彼は村に買い物に来たようなので、柵越しに村の人にお金を渡し、村人が商品を買ってきて訪問者に渡していました。村人にとっても手間のかかる儀式のようです。
この伝統的な儀式とは、村ではやり病や事故など悪いことが起こった場合、村の精霊にお祈りし、お払いするものだそうです。この村はカム族の村だったので、同じ民族の同僚に聞くと、確かに昔は多くの村で年に1,2度はこのような儀式を行っていたとこの事。最近は少なくなったようですが、奥地の村ではまだまだ健在でした。
最後に、村人は我々に対し申し訳なく思ったのか、食事まで用意してくれました。しかし、それも柵越しに渡され、せっかく提供してくれた村人とは一緒に食事を取ることができず、我々だけで頂きました。
多くの民族が暮らすラオス社会ならではの出来事で、改めて文化の奥深さを感じました。
ラオス事務所 玉利清隆