2019.11.08
海外での活動

灯篭に感謝を込めて―タイのロイクラトン

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ

ロイクラトン。タイと聞いて、光景が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。今、タイではロイクラトンの時期に入り、バンコクやチェンマイをはじめ、タイ各地で関連した催しが行われています。

チェンマイのロイクラトン(コムローイ)

チェンマイのコムローイ

チェンマイのロイクラトン

チェンマイのお寺

「ロイクラトン」と呼ばれる灯篭流しのお祭りは、北タイのスコータイから始まったといわれています。

スコータイは、「幸福の夜明け」というその名が示す通り、タイ族最初の王朝と呼ばれ、テーラワーダ仏教の普及、タイ文字の開発、タイ文学の創始など(タイ国政府観光庁公式サイトより)、まさにタイの始まりとも言える王国があった場所です。今では東南アジアで最も価値ある史跡の一つとしてユネスコ世界遺産に登録された遺跡が数多く残っています。

スコータイ遺跡

スコータイ遺跡

ロイクラトンは、13世紀のスコータイ王朝の当時の王妃が、日々川から受ける恩恵に対する感謝のしるしとして、バナナの葉でハスの花をかたどった灯篭(クラトン)をつくり、川に流した(ロイ)のが始まりとされます。

現在も、陰暦の12月(新暦10・11月ごろ)になると、川への感謝と自らに宿る穢れを流すために、ろうそくや花などできれいに装飾した灯篭を流す人々が、タイ全土でみられます(タイ国政府観光庁公式サイトより)。

灯篭

今年は11月2日からスコータイで、世界遺産の遺跡群の中やその周辺でロイクラトン祭りが行われています。早朝の儀式や托鉢から始まり、パレードや伝統のダンス、灯篭コンテストなどのイベント、ナイトマーケット、ロイクラトンの始まりとスコータイの歴史を描いた夜のショーなどが催され、早朝から深夜まで続くお祭りが、一週間以上続きます。

スコータイのロイクラトン

スコータイのロイクラトン

ダンスを披露する人はもちろん、街の中を歩く人や屋台で働く人たち、コンビニの店員まで、皆タイの伝統的な衣装やそれぞれの民族の衣装を着ています。地域によって着方の異なるタイ族の衣装、北タイの衣装、モーン、アカ、ヤオ、リス、カレン…など各民族の衣装をまとった人々とすれ違うことができることはとても貴重です。荘厳な遺跡と伝統的な衣装や踊りは、タイムスリップした感覚にさせてくれると同時に、タイの文化と多様な民族を知ることができます。

スコータイのロイクラトン 屋台

シャンティの事務所のあるメーソットはどうでしょう?小さな田舎町メーソットでも、ロイクラトンはやって来るのでしょうか?メーソットでも小規模ですが、ロイクラトンのお祭りがやってきます。この時期になると道で手作りの灯籠を売る人、幼稚園で灯籠を作る子ども達、当日に近くの川で灯籠を流す様子を見ることができます。人々が自分達の伝統を身近に取り込んでいることが分かります。

メーソットのロイクラトン

灯篭を売る玩具店

ただ、ここが国境の町であることを忘れてはいけません。国境の町らしさが出るのは、ロイクラトンの縁日です。場内のアナウンスはタイ語とビルマ語、お店でもミャンマー料理屋や嗜好品が売られ、店員さんとお客さんの約8割がビルマ語を話している光景を目の当たりにして、これがタイのお祭りであることを思い出すと、とても不思議な感覚になると同時に、移民が生み出すタイの多様性に気づかされます。

メーソットのロイクラトン

メーソットのロイクラトン

タイのロイクラトンは、タイの伝統とタイの人々の伝統文化との向き合い方、そしてタイの多様性を教えてくれます。皆様も、この時期にタイに訪れ、その文化を感じてみませんか?

ミャンマー国境支援事業事務所(メーソット事務所) 佐藤