2019.05.21
緊急人道支援

目標と向上心 ~さらなる高みへ登っていくために~

Selamat siang!  インドネシアからこんにちは! 事業サポート課の永井です。

現在、シャンティでは昨年、9月に大地震に襲われたインドネシア、スラウェシ島の被災女性を対象に生計回復支援事業を行っています。この事業では、被災女性がグループごとに、身近な食材から6つの加工食品を製造、販売し、収入を得ることで、復興のための基盤を作ることを目指しています。

研修の集合写真

パル市内で行われた研修の集合写真

この活動の質を高め、今後長く継続していけるものにするために、先日、各グループの代表に研修を実施しました。

①衛生管理や、②より良い商品を作るための品質向上、③たくさんの人に効率的に販売するマーケティングについて、それぞれ専門の講師が研修を行いました。研修には、学んだことを実践するためのグループの運営方法も含まれています。ワークショップや個別指導の時間もあり、講師たちから直接、それぞれのグループごとの課題や状況について、手厚く助言を頂くことができました。

厳しい指導の裏にある愛

その中で、講師アディアルティさんが受け持った、衛生管理、品質向上に関する講義について紹介させていただきます。

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アディアルティさんの講義の様子

アディアルティさんは、こういった研修の講師を務める傍ら、ご自身で料理教室やレストランの運営をされています。また、70歳のお年で食品化学の修士号を取得されたばかりという、知識や経験だけでなく向上心と情熱に満ちた方です。

アディアルティさんの研修は決して簡単な甘いものではありません。食品業界を熟知しており、また研修の参加者に対して愛情があるからこそ、厳しい、率直な物言いが印象的でした。

例えば、品質向上の講義では、最初に女性たちがそれぞれのグループで作ってきた製品を見て、はっきり一言、

「全部だめですね」。

意気消沈している参加者に対して、製品の色、形状、食味など具体的に問題点を挙げたうえで、それぞれのグループがどんな方法で製造したのかをヒアリングし、丁寧に改善点を教えていただきました。

参加者と話すアディアルティさん

参加者と話すアディアルティさん

アディアルティさんの言葉は厳しいのですが、参加者に寄り添って一つ一つお話される方で、最初はアディアルティさんの指摘に対して、「私たちの村では、この作り方こそ正しいのです」と主張していた参加者も次第に納得し、真剣に耳を傾けていきました。

さらなる高みを目指して

衛生管理の講義では、各グループが現在、製品づくりをしている環境を絵に描いてもらい、それぞれに対してアディアルティさんが問題点を指摘していくという形式をとりました。地震の被害を受けた中で、何とか用意した作業場ですのでいろいろと課題はあるのですが、今できる改善と、将来的に目指すべき形とに分けて丁寧にご指導いただきました。

参加者による作業場のスケッチ

参加者による作業場のスケッチ

研修終了後もアディアルティさんの周りには多くの参加者が集まり、慕われていることがよくわかりました。女性たちはアディアルティさんの豊富な知識や、料理に対する情熱に感銘を受けたようです。今回の研修では、具体的に活動を改善していく多くの学びがありました。女性たちがアディアルティさんという素晴らしいインドネシア人女性に出会い、憧れを抱くことができたことも、研修の大きな実りであったのではないかと感じました。

昨年の災害で多くのものを失った彼女たちは、マイナスからのスタートでした。女性たちは、将来の目標と、活動の道筋をつかみつつあります。今、彼女たちが登ろうとしている山は、被災前よりももっとずっと高いかもしれません。山登りは始まったばかりなのです。

現在、本事業の寄付を募集しています。これまで、多くの方にご支援頂き、誠にありがとうございます。あともう少し、皆さんのお力が必要です。ぜひ、インドネシアの被災女性の自立に向けて、ご協力お願いします。

今、まさに山を登ろうとしている彼女たちの背中を一押しして頂けましたら、幸いです。

現在実施中の事業は、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成と皆様のご支援を受けて実施しております。

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■プレスリリース

【03/28】被災女性の生計回復支援事業 -復興を目指す女性の自立を支援しています-

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