2023.01.06
緊急人道支援

パキスタン水害被災者支援事業開始 "首都イスラマバードから見えたこと"

事業開始
水害
避難民

みなさま、新年あけましておめでとうございます。

地球市民事業課の喜納です。

 

未だ落ち着きを見せない新型コロナウイルス感染拡大に加え、昨年も世界各地で様々な出来事が起こりました。

昨年の8月からパキスタン全土で大洪水を引き起こした大雨も、2022年の大きな自然災害の一つとして未だ記憶に新しいのではないでしょうか。

 

国土の3分の1を浸水させたと言われる大洪水は、パキスタンに住む多くの人びとを困窮した生活へと追いやりました。未だ仮設テントや道路脇で生活をしている家族が存在し、冬の寒さや子どもたちの栄養、健康面が非常に心配です。

洪水の被害を受けたパキスタンの子どもたち。食料不足で食べ物を分け合っている。©KKF

そんな人々へ支援を届けるべく、シャンティは11月より現地のNGO団体「Khadim Ul Khalaq Foundation(以下、 KKF)」と協力し、物資配布支援事業を開始しました。

提携団体であるKKFのロゴ

本事業では、緊急下に必要な3か月分の食料物資や、鍋や石鹸、ポリタンクなどの生活必需品を600世帯(4,200人)に配布いたします。

シャンティがパキスタンにて事業を実施するのは2010年の地震の被災者支援以来となります。

現地に事務所を構えていない国での支援は、提携団体との密なコミュニケーションが重要です。11月の事業開始当時は、オンライン会議やメールで連絡を取っておりました。しかし、それだけではなかなか現地の様子が分かりません。さらに、KKFを提携団体 として迎えるのは今回が初めてのため、やはり実際にパキスタンを訪れて事業の細かい調整を行う必要がありました。

そこで、昨年の12月中旬、シャンティから2人の職員がパキスタンへ調査に入りました。

 

日本人の入域制限

実は、渡航前から一つ大きな懸念がありました。それは、パキスタンの治安情勢による支援対象地への入域制限です。

私たちが今回支援を届ける地域はチャルサダ郡というパキスタン西部のハイバル・パフトゥンハー州にあります。その州は西側をアフガニスタン国境と接しており「パキスタン・タリバーン運動」という反政府勢力が活発に活動している地域として知られています。

本勢力は、一度パキスタン政府と休戦協定を結んだものの、昨年この協定を破棄し、ハイバル・パフトゥンハー州を中心に警察や政府機関を狙った攻撃を再開し始めました。

 

その結果、今回シャンティの職員は、対象地域を訪れることはできず、比較的安全な首都のイスラマバードに滞在することとなりました。

シャンティの職員はチャルサダ郡に入っての直接の支援はできませんが、提携団体は州都ペシャワールで長年活動をしており、該当地域の知見や経験が豊富なため、現地の調査や物資配布は彼らによって行われます。

パキスタンの地図の一部。外務省により対象地域チャルサダ郡は危険性4として赤く示されている。チャルサダ郡の位置は、図左側の「ペシャワール」と「ノウシェラ」の間。外務省海外安全ホームページ、パキスタンの危険情報より:https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pchazardspecificinfo_2018T075.html#ad-image-0

 

提携団体KKFとの会議

私たちの出張期間中、KKFのスタッフは、シャンティの職員との会議のため、ペシャワールからイスラマバードまで車で2時間半ほどかけて来てくれました。

 

会議では、お互いの顔合わせを行ったり、今後の事業の展開について話したりしました。

KKFと共同事業の協定を締結させた。(左)パキスタン議員、(中央)シャンティ・玉利経理課長、(右)KKF代表

KKFや事業関係者 と事業について会議を行っている様子

 

「支援が足りない」

今回の渡航では、提携団体との会議以外にも、行政機関や他の現地NGOを訪れ、洪水被害や支援に関する情報を収集しました。

 

訪問先では、皆さん口をそろえて支援が足りていないことを強調しました。

あるNGOの現地代表職員は、「パキスタンで起きた洪水被害への国際社会の対応は非常に時間がかかっている。」とおっしゃっておりました。

また、ハイバル・パフトゥンハー州出身の議員の方は、「パキスタンは、地方に行けば行くほど、人々の生活は貧しい。それに今回の洪水が追い打ちをかけた。そのため、もともと困窮した生活をしていた人たちは、今非常に厳しい状況にある。」と日本のNGOの継続的な支援を要望しました。

政府機関訪問の際の様子

 

実際に支援対象地域を訪れることはできなかったものの、今回のパキスタン渡航で出会った人々の声を通して、被災者に対する支援が不足していることが分かりました。

今回のシャンティの事業は、洪水被害の大きさに対して非常に小さな支援です。

それでも、現地で出会う人々は、洪水被災者のためにパキスタンを訪れ、活動を行ってくれることに対してそろって感謝を示しました。

 

パキスタンで出会った方々の期待に応えられるよう、そしてシャンティの支援を必要としているご家族、子どもたちに十分な食料と生活必需品が早く届けられるように提携団体と協力のもと尽力して参りたいと思います。

十分な食料がない地域の子どもたち ©KKF

 

新しい年になっても世界中で支援を必要とする声が絶えません。

シャンティは、今年も子どもを中心とする災害などの被災者に対して支援を届けて参ります。

今後も、パキスタンでの支援の様子を紹介していきます。

 

地球市民事業課 喜納