難民キャンプ出身のプロサッカー選手から届いた子どもたちへのメッセージ
ニラゲー(カレン語で「こんにちは」)。
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の田村です。
6/20は「世界難民の日」。
タイ国境のヌポ難民キャンプでは、この日に合わせてサッカーフェスティバルが開催されました。
そして今回のフェスティバルでは、なんとミャンマー(ビルマ)難民として生まれ育ち、プロのサッカー選手となったクルー・ヘー(Kler Heh)選手からいただいたメッセージも読み上げられました。
ここでは彼のメッセージを一部日本語訳にしたものを紹介させていただきます。
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「クルー・ヘー選手から難民キャンプの子どもたちへのメッセージ」
私は以前、その場所(難民キャンプ)にいたので、どのようなものであるかを知っています。難民キャンプで育った子どもであった時のことや私の友達を懐かしく思います。
私の人生は浮き沈みがあります。時には物事は私にとってとても辛くもあります。しかし、忍耐強く、そして最も重要なこととして常に前向きであろうと私は努めています。
私はキャンプでのすべてを覚えています。かつて、缶やビールの瓶を友達と集め回って後でそれらを売っていたことを覚えています。
私はキャンプでサッカーをしていたことを懐かしく思い、そしてまたいつかキャンプに戻ってサッカーをしようと思います。時には子どものころを思い、友達やそこでの生活のことがとても懐かしくなり、ただ泣きたくなります。
難民の子どもたちへの私のアドバイスは、ただ大きな夢を見続けること、祈り続けること、そして扉は開くということを信じることです。最も重要なこととしては、常に忍耐強く、人生に謙虚であることです。
私がここまで来られた理由は、忍耐強くいたこと、そして難民キャンプの子どもたちによいお手本となる機会を、神さまが与えてくれたからだと信じています。
私がサッカーをイギリスで始めた時のことを正直に話すと、そこで初めに自分自身に向けて言ったことは、私はカレン族初のプロのサッカー選手になりたいということでした。そして数年後にそれを達成したのです。
今私は、さらに長い道のりを進んでいかなければなりません。しかし私は強く信念を持ち続け、力尽きるまで戦い続けます。
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◆クルー・ヘー選手とは
クルー・ヘー選手は、1996年にタイ国境のウンピアムキャンプに生まれます。
第三国定住の申請を何度か試みる中、2006年に
イングランド中部のシェフィールドへの定住が実現します。
2015年夏に、シェフィールド・ユナイテッドFCのU-21所属のプロサッカー選手になります。
つい最近に新たな契約が結ばれ、クルー・へ―選手はラトビアのFKイェルガヴァに所属しました。
◆クルー・ヘー選手の第三国定住
彼は、イギリスの第三国定住プログラム(Gateway Protection Programme) を通して、第三国定住しました。
このプログラムは、2004年から英国政府が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と連携をして実施されています。当初の割り当て人数は、毎年500人でしたが、2008年からは年750人に増加され、2017年3月末までに、延べ7,888人の難民がこのプログラムを通してイギリスへの第三国定住をはたしています(イギリス内務省統計)。
特に、ミャンマー(ビルマ)難民に関してはここ数年間ではこの制度を通した第三国定住はありませんが、2005年から2010年の間に延べ460人のミャンマー(ビルマ)難民が、この制度を通してイギリスに再定住しています。
このプログラムを通して定住を実現したクレー・ヘー選手は、現在英国市民権を持っています。
この後子どもたちは元Jリーガーの本田慎之介コーチの指導のもと、サッカーワークショップと親善試合を行いました。
雨の中も、泥の中も、懸命に走りボールを蹴る子どもたちの姿を見て、クレー・ヘー選手も子どものころ、このようにサッカーに励みキャンプで育ったのかな、と想像してしまいました。
ぜひ今こうしてキャンプで育つ多くの子どもたちに、前を向いて力強く生きていってほしいと思いました。
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所 インターン田村