2015.06.11
海外での活動

コミュニティ図書館、モデル化へ大きく前進!

カンボジア

前記事◆コミュニティ図書館、識字教室開始!◆
からの続きです。

今回は識字教室以外に、もう一つ大きな動きがあったので、報告したいと思います。

ですがその前に、1館目のニーペックばかり書いているので、
他の図書館も少し紹介します。

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先月オープンした3館目のコミュニティ図書館、「サンコー」です。
ニーペックと同じ郡にあり、ニーペックから運営ノウハウを学んでいます。

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コミュニティ多目的ホールです。
サンコーは国道沿いにあり、近隣にたくさんの村があるため、
ニーペック以上の利用者が見込まれています。

次は2館目のロンコーです。

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最近、ロンコーコミュニティ図書館では、シェムリアップ在住の日本人美容師さんを招いて、
生活向上研修の一環として、「美容」研修を行いました。

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村にある葉っぱを使ったパーマのかけ方です。

100人ほどの女子・女性で賑わい、これまでで一番笑顔があふれた研修会になりました。

CLCの持続運営のためには、
将来的に住民からの資金調達も不可欠になってきます。
農業や保健衛生などの「勉強っぽい」プログラムだけでなく、
財布のひもを握る女性の興味・関心にあわせた、
「敷居の低く、親しみやすい」プログラムの充実も必要になります。

ロンコーコミュニティ図書館は、開館より多くの団体の支援をひきつけ、
World Visionなどに、母子保健、栄養、貯蓄グループ、野菜栽培、伝統舞踊、英語教室など
多岐にわたる教育の場として利用されています。

コミュニティ図書館という自由な教育の「場」を生み出したことがきっかけとなり、
図書館を媒体とした村の教育活動が活発化しています。

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さて、本題です。

先週、カンボジアの教育ネットワークで最重要の
NGO Education Partnership (NEP)主催でCLC(コミュニティ図書館)の研修会が開催されました。

もう少し具体的に言うと、
「生涯学習と持続可能な開発のための教育(ESD)の推進におけるCLCの役割」という研修会です。

主目的は、現在、教育省等にモデルケースとして認知され始めている
シャンティのコミュニティ図書館の運営ノウハウを学び、
カンボジアのCLCが生涯学習とESDに資するよう、CLC政策を見直すということでした。

教育省ノンフォーマル教育局(副局長とCLC課チーフの高官二人が参加)、
NEP事務局、ノンフォーマル教育で活躍する主要国際・ローカルNGO、約30団体が参加しました。

シャンティはキースピーカーとしてプレゼンし、研修のフィールド訪問先として、
ニーペックコミュニティ図書館を案内し、本研修のホストを務めました。

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シャンティがプレゼンしている様子です。
左端でプレゼンしているのが、現地スタッフのヴィチェット。

プレゼンでは、シャンティのコミュニティ図書館における生涯学習、ESDへの取り組みについて話し、
大きな反響を得ました。

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(※シャンティのプレゼン、右端はヴィチェット)

異例にも、その後にプレゼンした他団体(World Vision)からは、
プレゼン中に、シャンティのコミュニティ図書館との協働事業のラブコールをもらいました。

突然の愛の告白に若干戸惑いながらも、その後、この団体にはコミュニティ図書館で
母子保健等の研修会を担当してもらうことで仮合意しました。

上で紹介したように、World Visionはすでにロンコーコミュニティ図書館を舞台に
様々な活動を展開しており、今後はシャンティの他のコミュニティ図書館でも
生活向上研修を展開してくれるようになりました。

プレゼン後、その他の2団体からもトレイナーとして
CLC事業のノウハウ伝授の正式依頼を受けました。

このうち1団体は、今月に別のCLC会議を主催するので、
とりあえずそこに再びキースピーカーとして参加し、ノウハウを共有することになりました。

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次の日にはフィールド訪問で、ニーペックコミュニティ図書館を案内しました。

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30団体も来ているので、こんな人山になります。

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この日はコミュニティ図書館で、村の農業普及員の育成のため、
農業専門団体のCEDACに稲作研修を実施してもらっていたので、
視察団にもその様子をみてもらいました。

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住民が野菜栽培している畑です。
以前、CEDACには野菜栽培の農業普及員を育成してもらいましたが、
その後、この農業普及員が図書館の生活向上研修で他の住民に教えています。
教わった住民の1人が写真の畑を作っています。

つまり、野菜栽培のプロから学んだノウハウは、
村の農業普及員を通して一般の住民まで波及し、
その後も広がり続けています。

コミュニティ図書館が、本当に住民の生活向上に貢献するためには、
本からの知識だけでなく、Learning by doing (体験による学習)
機会を住民に提供することが不可欠になります。

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次に図書館のコミュニティホールを視察してもらいました。

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この日は、村の若者がバレーボールで盛り上がっていました。

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「青年層をCLCの活動に巻き込むのは非常に難しい。」
前日の研修会でも議題になっていました。

多くの若者が多目的ホールに詰めかけ、
その後、図書館にも足を運んでいるを目の当たりにし、
視察団からは驚きの声があがっていました。

これを通してシャンティが提唱している「教育を楽しく、快適に」の重要性が認識されたようです。

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次は図書館です。

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参加者の一部は、住民に聞き取りをしています。

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ヴィチェットが本事業で制作中のごみ問題についての環境教育の絵本、
「2本のバラ」を実演しているところです。
物語を通して人のこころを動かす、この試みについて話しています。

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同じくヴィチェットが右端、
彼が肩を組んでいるのは教育省ノンフォーマル教育局CLC課のチーフです。
うわさに聞いていたシャンティのコミュニティ図書館の実物を見て、感銘を受けたとのことです。

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視察団を村の中に案内しています。

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図書館の生活向上研修で、熱効率のよいかまどの作り方を学び、自ら作って使っている住民です。

中退した子どもや大人を対象に学校外で行われる「ノンフォーマル教育」は、
人々の暮らしに直結し、よりよく生きることに貢献するものでなければならない、
ということを視察団に伝えています。

視察団の方々は、実はニーペック図書館に来るのは2度目です。
全員、前日の夜に来ています。

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前夜に識字教室をのぞいているところです。

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前日のプレゼンに衝撃を受けた参加者からシャンティの識字教室への訪問依頼も殺到し、
異例にも、急遽、夕食時間をスキップして、夜の訪問も追加されました。

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希望者だけにもかかわらず、教育省の高官二人含め、参加者全員が夕食抜きで参加しました。
カンボジアは、通常、「他のなにより3度の飯が大事」な国なので、視察団の本気度が伝わります。

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そして今回の2度の訪問はTVクルーも同行していました。
写真では教育省のノンフォーマル教育局副局長が
ニーペックコミュニティ図書館内でインタビューを受けているところです。
「シャンティの図書館、識字教室などの生涯教育、ESDへの取り組みや、
ノンフォーマル教育における教育へのカジュアルなアプローチを
CLC政策に加えていくことを検討する」

と話していました。

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シャンティ職員へのインタビューとニーペックコミュニティ図書館の模様が、
CLCの成功例として、近日、カンボジア主要3局で全国放送予定です。

また、これとは別に、今回の訪問時に参加者の一人がかまどの普及など、
シャンティのコミュニティ図書館の卓越さをFacebookに書き込み、
それを読んだTV局から、生活向上番組に出演依頼がきました。

来週、現地職員のヴィチェットが15分間の生放送に出演します。

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(※ハンモックに揺られながら、カンボジア版チェスを楽しむ子どもたち)
これまでのシャンティの政策提言の影響で、教育省は今年からCLCに、
 新しい建物を造る
 運営スタッフにインセンティブを払い、年間の運営費を出す

ことを決定しています。

以前は古い建物の使用のみで、運営スタッフは全員ボランティア、
年間の運営費は教育省からは出ませんでした。

今回の視察で、カンボジアのCLC政策をどこまで動かせるか楽しみではあり、
シャンティのコミュニティ図書館がモデル化されていくことは嬉しくもあります。

モデル化のための政策提言も大事ですが、まずは現場で本当に村のためになる
コミュニティ図書館をつくっていくことを今後も最優先していきたいと思います。

応援よろしくお願いします!

カンボジア事務所
ノンフォーマル教育事業調整員
江口秀樹