防災減災モデル宗教施設の能力強化を目指して~佐賀県武雄市にて~
地球市民事業課の市川です。
6月15~17日、佐賀県武雄市に訪問。地域の防災減災推進のため、宗教施設がどのように生かされているのかをヒアリングしてきました。
コンビニの3倍の施設数がある宗教施設
全国には、コンビニエンスストアが約5万7千施設あり、至る所ある印象があります。しかし、宗教法人は約18万存在しそれに匹敵する宗教施設があると考えられます。単純計算だとコンビニと比較すると3倍の施設数で、人口700人に1か所と計算となり、コンビニより身近な存在と言えます。
2011年に発災した東日本大震災では、被災された方が地域の宗教施設を避難所として利用されて、多くの命を守ってきました。それ以来、災害時における宗教施設の役割が見直され、地方自治体と宗教施設が災害に時における防災協定及び協力を結ぶようになりました。宗教社会学を専門とする大阪大学・稲場圭信教授の調査によれば、すでに、4千か所に越えていて、まだまだ増加しているとのことです。
ただ、防災協定や協力を結んでも、発災した場合に、どのように行動したら良いか、宗教施設の管理されている僧侶、宮司の皆さんは、心配がつきないと伝え聞きます。そこで、当会として、宗教施設を活用した防災減災事業を進めるにあたり、モデル地区を選び、そこでワークショップを実施することになりました。
武雄市長・小松政氏との懇談
3年間で大水害を2度経験した佐賀県武雄市
令和元年、令和3年と昨年と3年前に大きな被害を出した武雄市。当会シャンティも職員を派遣し、微力ながら支援活動に関わらせていただきました。武雄市では、今後も大きな水害に見舞われることが予想されることから、様々な取り組みを行っています。例えば、防災アプリ「たけぼう」は、武雄市の防災情報をリアルタイムで受け取ることができます。また、市の職員を派遣する指定避難所27か所とは、別に、地域の方が一時避難所として活用できる地域避難所の整備も進めており、6月15日の時点で70か所が地域から申請され、地域の皆さんの意識の高さを伺えます。
防災アプリ「たけぼう」
「電話対応が大変だった」
実際に、令和元年の水害で100人以上の被災者を受け入れた永源寺(ようげんじ)の杉岡昭道住職に当時の様子を伺い、以下が、その要約です。
「8月28日の早朝に、最初の方が避難されてから続々と避難されてきて、お昼には70人が避難してきてね。避難所にもなっていなので市役所から職員は派遣できないと言われ、家族3人で対応しました。物資もなかなか来なく、近くのコンビニに食べ物を買いに行ってもらいました。皆さん、朝から何も食事を取られていなかったので。大変だったのは、電話対応。市役所から1~2時間おきに避難者数の確認はくるし、親戚が避難していないかという外部の問合せ、それと取材の電話。
上空を転回するヘリコプターの音にも閉口しました。本堂や空いているスペースで寝てもらったけど、みな、寝れなかったみたい。夜中に、ビニール袋を空けると音が煩かったという声も多かった。2日目になると昼間は、家の片付けに行くので、お寺には、食事とトイレに来る感じ。3日目になり、行政からも話があり、全員避難所に移ってもらいました。何かあった場合の責任は取れないしね」。
当事者より話を伺うことができて、その光景が目に浮かぶようでした。
永源寺の杉岡昭道住職へのインタビュー
行政、地域と住民の思いをすり合わせるために
今回のヒアリングで感じたのは、行政の職員、地域の皆さん共に、災害に備えて色々と準備をされているのですが、対話が十分できていない面を感じました。そこで、関係者と話し合った結果、11月に武雄市で、宗教施設を活用した防災減災のワークショップを実施する方向で調整に入りました。災害時に支援活動をされた地元の団体である、(一社)おもやいと、宗教施設の災害時対応進める大阪大学の稲場先生と共に、ワークショップを作り上げる予定です。
昨年、何度か武雄市にお伺いしましたが、被災された方が、「情けなか、住むしなかとね」と、つぶやいていた女性の声を今でも思い出します。ここを離れたくても、住まざるをえない。安心して住めるような場づくりのお手伝いをできればと思います。
なお、7月19日に「本格的な出水期を前に宗教施設の備えを考える」オンライン勉強会を実施します。皆さんのご参加をお待ちしています。詳細は、こちら→防災減災オンライン勉強会
左:令和元年当時の写真(階段の途中まで水没)、右:同じ場所から今回撮影
※本事業は、令和4年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業の助成を受けて実施しています。