ラオスのカム族に伝わるお話「ヤアンラーン」(2014年出版)
サバイディー(こんにちは)!
2014年度に出版した絵本4タイトルが完成しました。
4タイトルのうち、2タイトルがカム族に伝わるお話、もう2タイトルがモン族に伝わるお話です。
うち3タイトルが、活動地であるヴィエンカム郡で村のおじいさんたちに聞き取りをしたお話です。
その中のひとつ「ヤアンラーン」というカム族に伝わるお話についてご紹介します。
「ヤアンラーン」2014年 出版絵本(ラオス)
むかしむかし、動物と人が言葉を通じてお互いを理解し合っていたころ、ヤアンラーンという女性がいつも動物たちと一緒に歌を歌って夫と暮らしていました。
時がたって、年老いたヤアンラーンは亡くなってしまい、彼女のことが大好きだった動物たちはとても悲しみ、動物たちは、お墓に眠るヤアンラーンの体を金や銀、宝石と針で覆いました。
最後に大きな石をお墓に被せました。その後、誰かがお墓の石をどけて、金や銀や宝石を盗もうとすると、尖った針に刺さってみんな死んでしまいました。
動物たちの中で、ジャコウネコだけが、ヤアンラーンのお葬式に行きませんでした。
そのことを良く思わなかった他の動物たちは、ジャコウネコに木の上だけでしか食べ物を取れないようにしました。
ジャコウネコは友達もいなくなり、独り木の上ですごすようになりました。
ある日、ヤアンラーンのお墓に誰もいないとき、ジャコウネコはお墓に向かって言いました。
「ヤアンラーン、お葬式に行かなくて本当にごめんなさい。
僕は間違っていたから、夜になると目が見えなくなってしまったんだ。
僕を許して。どうか、夜に目が見えるようにしてください。」
すると、ヤアンラーンのお墓から不思議な力が現れて、ジャコウネコの目が見えるようになりました。
それからというもの、この話を聞きつけた人々はヤアンラーンのお墓を訪れるようになり、この不思議な力を手に入れようとしました。訪れた人々はみんな、願いが叶うようになりました。
こうして、ヤアンラーンはカム族の母であり、そしてよく働く素晴らしい女性であると称えられ、代々この話が言い伝えられるようになりました。
それからというもの、カム族の人々は誰かが亡くなると、お墓の上にヤアンラーンに置かれた尖った針の象徴として、尖った農具をさして、亡くなった方に敬意を払うようになりました。これが今でもカム族に受け継がれている習慣です。
実在するヤアンラーンのお墓
実は、このヤアンラーンのお墓がヴィエンカム郡の村に実在すると聞き、行ってきました。
草木、雑草が生い茂る丘をのぼっていくこと約10分。
「ここがそのお墓です。」と言われ、ようやく足を止めました。
「え?ここ?」と突然の到着に少々驚く私。
これが現在の姿・・・。
あまり手入れはされていない様子ですが、村の人が時々訪れて守っているとのこと。写真だと枯葉だらけで伝わりづらいですが、縦長の大きな穴が掘られた跡があり、穴の中から(昔はもっと大きかったであろう)石が顔を出していました。この辺りは地面の土に大きな石がごろごろ混ざっていて、ヤアンラーンのお墓に動物たちが石をかぶせたというお話に想像が膨らみます。
このヴィエンカム郡にまつわるお話を、子どもたちに絵本で読んでもらいたい!と気持ちを新たにしました。
ラオス事務所 山室仁子