モン族の村での移動図書館
シャンティラオス事務所 の伊藤です。
ヴィエンチャンの朝夕が涼しくなってきました。
さて、49民族から構成される人口600万人のラオス。
今年からラオス事務所では、少数民族の子どもの教育改善を活動の重点項目のひとつとして位置付けました。
ヴィエンチャン首都近郊の小学校を対象に回っている移動図書館活動。
3校中2校は、生徒の多くにモン族の子どもたちがいます。
1、2年生のモンの子どもたちは、
ラオス語を話すラオ族の先生が言っている意味がわからない。
モンの子どもたち同士で話していると、
ラオ族先生たちはモンの子どもたちが何を言っているのわからない。
ラオスと言えども、テレビも、ラジオも普及している現代の首都近郊の話です。
不思議に思って、聞いてみました。
首都近郊のモン族の村は、祖先代々住んでいた場所ではなく、再定住の形で政府から提供され新たに作られた村です。家の中ではもちろんモン語を話します。そんなにモン族の生活様式・文化を大切にしている集落になっているようです。そして、ラオス語やタイ語が中心のテレビもラジオもあるけれど、あまり観ないし聴かない、とのこと。村でも家庭でも、モン語を話す大人の中にいる子どもたちは、話す言語を聞いて学んでいきます。
なので、小学校に入ってラオス語でラオス語の授業が始まってもわからないのです。
結果、ラオスの教育が徐々に改善される中、多くの少数民族の居住地が取り残される形で、小学校の留年率、退学率が高く、そして、修了率が低くなっているというデータがでています。
一方、小学校の修了率全国平均が6割のラオスで、ラオス国立大学では、学生の1割程度がモン族の学生だそうです。
成績がとてもよく、各学科、軒並み学年トップの成績をとっているそうです。
「モン族についでカム族の学生も、皆すごく勤勉で、ラオルム(ラオ族)の学生とは時間もお金の使い方も違うわよ。そして、ラオス語の教科書を読めるし、書ける。けれど、、、、授業でもあまり話さず、発表でのラオス語は、どこかおぼつかない感じ。」
と、ラオス国立大学の日本語学科で教える私のラオス語の先生はおっしゃいます。
大変な環境からも、子どもたち、若者たちが、がんばって勉強しています。
図書館活動の成果を確認する指標のひとつは「子どもたちのラオス語試験の成績の変化」です。
けれど、筆記試験だけではなく、先生との会話、皆の会話も、きちんと確認しないと、必ずしも、識字など言語能力の改善に、図書館活動が役に立ちました!とは言えないと思います。
シャンティの移動図書館活動は、
個人読書だけではなく、
クイズゲームに参加して、
自らの意見を発表したり、
おはなしを聞いたり、
おともだちの前で「おはなし」をしてみたり、
といった活動から構成しています。
子どもたちの本当のスキルを改善するための「ライフスキル(生きる力)」教育活動です。
モン族の子どもたちが学ぶ小学校での移動図書館活動もそろそろ1年。
その成果を聞くのが待ち遠しくなってきました。
日本では馴染みのないラオスの少数民族のお話。
折に触れご紹介させていただきたいと思っています。
シャンティ・ラオス事務所所長
伊藤解子