2022.07.17
海外での活動

カイン州の美しい景色の裏で広がる戦闘

スタッフの声
ミャンマー
避難民
難民

皆さん、こんにちは。ミャンマー・パアン事務所のヤンナイです。ミャンマーの南東にあるカイン州(カレン州)をご存知ですか?本日はパアン事務所があるカイン州の魅力と現状をお伝えします。

観光名所が盛り沢山のカイン州

カイン州はミャンマーにある7つの州のうちの一つで(州以外にも管区域などがあります)、7つの州の中では経済や教育、保健医療の水準は中程度です。人口は150万人を超え、カイン州に住む人の多くがカレン族です。天候は暑すぎず寒すぎず快適で、物価も都市に比べて安いので、生活するにはぴったりな場所です。そして、なんといってもカイン州の魅力は山や森、草原など雄大な自然です。ズウェガビン山というカイン州のランドマークとして有名な山もあります。
ズウェガビン山からの景色
(写真:ズウェガビン山からの景色)
タンウィン山からの景色
(写真:タンウィン山からの景色)
さらに、歴史ある洞窟も沢山残っています。州都のパアンにも観光名所がいくつもあり、国内外から観光客が訪れていました。また、カイン州にはタイと国境を接する都市ミャワディもあり、貿易の要ともなっています。
観光名所の洞窟
(写真:観光名所の洞窟)
洞窟から見える朝日
(写真:上の洞窟から見える朝日)
サルウィン川
(写真:カイン州を流れるサルウィン川)

70年以上続いた戦闘後に訪れた平和

このように美しい自然を持つカイン州ですが、長年戦闘が続いている地域でもあります。少数民族武装勢力(EAOs)が組織され、70年以上にわたり国軍とEAOsの争いがカイン州で繰り広げられてきました。結果として、何千人もの難民や避難民を生み出しました。何千もの人々が難民としてタイに逃れ、第三国に再定住した人もいます。2010年以降、状況が変わり、戦闘が減りカイン州にも平和が訪れました。タイに逃れていた難民はミャンマーへ帰還し始め、多くのNGOが彼らの再定住を支援していました。
パアンの夜景
(写真:パアンの夜景)

しかし、2021年に突如として状況が一転します。軍事クーデターが勃発し、文民政権の閣僚らが拘束されました。それ以降、全てが混乱と不安定さの渦に陥りました。軍事クーデターに反対する人々はデモンストレーションを始め、軍は彼らを暴力と武力で抑えつけました。ジェネレーションZと呼ばれる若い世代は自らの身を守るため国民防衛隊(PDF)を設立し、軍と戦っています。軍に抗議する人々の中にはカイン州に逃れ、EAOsと協力する人もいます。公務員は市民不服従運動(CDM)に参加しています。

2021年のクーデターにより再び戦闘、人々は難民、国内避難民へ

ミャンマー全土で混乱が続き、経済は悪化する一方です。油やガソリン、食料品の価格は高騰し、日々の生活を送るのに精一杯です。もちろん、カイン州も例外ではありません。
さらに、国軍とEAOsとの戦闘が再び激化し、人々は再び戦火を逃れ、難民や避難民となっています。結果として、戦闘が続く地域では学校も開校できず、子どもたちは学習の機会を失ったままです。移動も非常に難しく、国内避難民となった人々はいくつもの課題に苦しめられています。十分な薬や食料が無いばかりか、住む場所が無くジャングルの中で隠れて過ごすしかありません。皆、いつ自分達の村へ帰ることができるのか見当もつきません。NGOがこうした人々に支援を届けようとしているものの、戦闘が続く地域へ近づくことは困難を極めています。

子どもたちにとって最善の解決策を

こうした状況を受け、カイン州を訪れる観光客は、もはやいません。皆、カイン州が安全ではないことを知っており、誰も、いつこの戦闘が終結するのかを知りません。国内避難民の数は日に日に増えるばかりです。雨季に入り、衣食住といった基本的なニーズは高まる一方で、NGOの支援はまだまだ必要とされています。

皆、このような状況が何度も繰り返されることを決して望んでいません。全ての関係者が私たちの国ミャンマーと、将来の世代のことをもう一度考えなければならないと感じます。国の未来は子どもたちに大きな影響を与えます。子どもたちが良質な教育を受けることができれば、国の未来も輝かしいものになります。だからこそ、子どもたちに恐怖や心配事を感じることなく教室で勉強してもらいたいのです。また、全ての関係者が隣国や先進国の好例を学び、自らの過去の経験も踏まえて、国のために最善の方法を導き出す必要があると強く感じます。
一刻も早くカイン州に平和が戻ることを願います。

ミャンマー事務所 ヤンナイ