夢は、病気のお母さんのためにお金を稼ぐこと
ミャンマー事務所の本丸です。
ピー県にて、学校へ行けない子ども達のための教育プログラムを実施しますが、
先日、今年度の対象地域となる村を訪れました。
13歳の女の子、ポー・ケッワーちゃんという女の子がいました。
スラリとした細みの身体できれいな顔立ち、年齢より大人びた表情。
しかし目の焦点がうまく合っていないのが目に留まりました。
話を聞くと、2年前に他の人が鳥を射るために放った小石が目に当たり、
右目にひどい怪我を負ったとのこと。
そのため右目が見えなくなり、2年経過した今は視力は改善したようですが、
完全な回復へは至っていないそうです。
お父さんは、5歳のときに薬の飲み違いのため死亡。
お母さんは以前製油工場で働いていましたが、今は体調を崩したため、働けない。
一家の大黒柱は、年の離れたサイカー(三輪人力車)運転手のお兄さんと、
13歳の彼女。
「お父さんが亡くなったから、1年生の途中から小学校へ通えなくなりました。
その後もう一度学校に通うようになって、2年生までは修了したけど、
目を怪我してからまた通えなくなりました。」
今はお母さんに代わって家族のご飯を作ったり、
飲料水のタンクをカートで運ぶ仕事をしています。
重い飲料水をカートに十数個積み、村々を回って運ぶ。大人の男性でも大変な肉体労働。
この過酷な暑さの中、細い華奢な身体でよく毎日、と思いますが、
彼女にとってはそれが1日の糧を得る大切な手段。
ちなみに1日に3~4回カートを引いて得られる収入はたったの1000チャット(約100円)。
「暇なとき、何をするのが楽しい?」
「お裁縫!」。
一瞬女の子らしい可愛い趣味と思いきや、
「時間がある時は縫製の仕事をしている」
という意味でした。
彼女には「遊び」や「余暇」はなく、
家事も終わって時間が少しでも余るなら、お金になる仕事をしたいのです。
13歳の子が、小学校2年生までしか通えずに
1日も休むことなく、生活のためのお金を稼ぐ。
終始落ち着いた様子で淡々と答える彼女、
「子どもらしい」時間を
ほとんど過ごしてくることがなかったためか、
静かな大人びた表情でした。
最後に将来の夢について聞いてみました。
「病気で働けないお母さんのために、働いて少しでもお金を稼ぐこと」
今回村で会った子どもたちには、
「子どもとしての」時間を過ごす楽しさを一瞬でも感じてもらい、
絵本や夜間小学校プログラムを通じて、
学ぶ楽しさや人生の可能性を少しでも広げていってもらいたいと思います。
ミャンマー事務所 本丸愛子