2016.09.17
海外での活動

夜に学ぶ子どもたち ~「ライフスキル教育」クラスを訪れました~

ミャンマー

ミンガラーバー、ミャンマー事務所の阪口です。
ミャンマーの雨季も後半に入りましたが、まだまだ毎日沢山の雨が降っています。ピーの町を一歩でますと、道の両脇には雨に濡れた青々とした田んぼがどこまでも広がり、この季節の美しい風景を見せてくれます。

今日は、昨年5月のブログでも紹介しました「ライフスキル教育」プログラム(通称『EXCEL』)についてご報告します。
このプログラムは、正規の学校に通っていない10~17歳の子供たち・青少年を対象とした学習プログラムです。”ライフスキル”というだけありカリキュラムの内容は多岐に渡り、公立学校の授業内容とも異なります。保健衛生、自己決定力、自己防衛、精神保健、対人関係、薬物、HIV/AIDS、自然災害、そして人生を前向きに生きるには、人生に大切なことは、など等、子どもから大人に至る過程にある年齢の子どもたちへの、まさに「生きる術」を伝える様々なテーマが用意されています。この学校に集まる子どもたちは、正規の小学校に通っていない、または途中退学した子どもたちです。昼間は仕事をして、仕事の終わった夜に、この学習プログラムに参加します。

今年度の授業は7月に開始し、先日、その授業風景を見学してまいりました。
授業時間は18~20時と決められていますが、この日子どもたちが集まったのは19時をだいぶ過ぎてからでした。
雨季の現在は農作業が集中して一番忙しい季節、また、雨のため学校まで来ることも難しくなるため、この時期は参加すること自体が難しくなります。
しかしこの日遅れて集まった子どもたちは、仕事で疲れた様子も見せず、皆笑顔で先生の前に座りました。

この日は16名の生徒が参加しました

この日は16名の生徒が参加しました

この日の授業のテーマは、
自分にとって「辛いこと」「悲しいこと」とはどんなことか、どのような時にそういう気持ちになるか。
そうした気持ちとつきあうにはどうしたらよいか。
それを考えてみよう、皆と話し合ってみよう、というものでした。

教師は地域の若者から応募者を募り、合格者に研修を行った後に授業を担当します。

教師は地域の若者から応募者を募り、合格者に研修を行った後に授業を担当します。

先生は男女1名づつ、小グループに分かれる時は男性教師が男の子、女性教師が女の子を担当します

先生は男女1名づつ、小グループに分かれる時は男性教師が男の子、女性教師が女の子を担当します

先生の「皆さんは、どんな時に辛いと感じますか」という問いに、あちこちからどんどん手があがります。
『辛いこと』を言葉で表すこと、そしてそれを皆の前で発表することは難しいのではと想像していましたが、どの子どもたちも積極的に、熱心に発言していて驚いたほどでした。そしてどの発言も具体的でした。
「お父さんの仕事がない時」
「お父さんとお母さんが喧嘩する時」
「お父さんがお酒を飲んで自分をぶつ時」
「お父さんがお金がなくなって誰かにお金を借りなければならないとき」

皆で意見を出し合った後、小グループに分かれて、さらに丁寧に「自分の気持ち」について先生や友達と話し合います。
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遊びや学校生活では無く、一日の多くを家族の手伝いや労働に費やす子どもたちが挙げた「辛いことや悲しいこと」の内容からは、子どもたちの家族の厳しい生活状況が見えてきます。
グループに分かれた話合いが終わった後、最後に先生から「辛い気持ちや悲しい気持ちが心の中に生まれても、それは恥ずかしいことではありません。それはあなたのせいではない。自分を恥ずかしく思わず、自分を認めることが大切です」という話がありました。そして、「自分を認めるってどんなこと?」という話でこの日の授業は終わりました。

「自分を認めること、それはお父さんとお兄さんを幸せにしてあげられた時の気持ちだと思う」と発言した生徒は、17歳でこのクラスの最年長です。
この生徒は母親が亡くなり父親と兄の3人で暮らしていますが、最初の「辛いことはどんなこと」では、お父さんがお酒を飲んで自分をぶつことだと発言していました。家族を思う気持ち、その家族が幸せになった時に自分を認めることができると言った青年の言葉が心に残りました。