2018.09.18
海外での活動

国際協力と絵本の持つ力

ミャンマー

ミンガラーバー!(Helloのミャンマー語バージョン)

ミャンマーのピー事務所で9月15日にNGO海外研修プログラムを修了しました、1カ月研修生の栗原綾菜と申します。

長いようで短かった1カ月間でしたが、さまざまなことを見て、聞いてそして体験しました。それらを振り返る機会を頂きましたので、記憶が鮮明なうちに書き留めておきたいと思います。

研修プログラムに参加した理由

私は、国際協力の分野にもともと興味があり、学生のうちから何かできることをやりたいと思い、大学1年生のころから難民支援や難民問題に焦点をあて活動している学生団体に所属し、自分たち自身が難民について学ぶ勉強会や高校生に向けて出張授業などを行っていました。そのような活動をしていましたが、自分の中で国際協力とは一体何かがつかめていませんでした。

また、学生団体の活動で行っていた出張授業やアルバイト(予備校のチューターをしています)の中で、教育の重要性や人生において学ぶとは何なのかを考えることにより、教育分野について非常に惹かれました。

そんなときに、この「国際協力」と「教育」という二つの面から、絵本事業を通してアプローチをしているシャンティ国際ボランティア会で海外研修プログラムを募集していることを知り、国際協力の現場に行き、肌で感じてみたいと思い、今回参加してみようと思いました。

今回の研修を通して感じたこと

●絵本が届くにはさまざまな人の協力が必要なこと

研修に参加する前の私は、シャンティのスタッフの方々が事業を展開することで必然的に子どもたちに絵本が届くと思っていました。しかし、蓋を開けてみると想像以上の人たちの努力によって絵本が子どもたちのもとへと届いていたのです。一番は何と言っても、学校の先生や図書館員さんたちです。移動図書館での読み聞かせや学校に1カ月本を貸出しするサービスは、公共図書館員さんによって支えられています。また、学校図書館の利用は学校の先生たちに支えられており、彼女たち(ミャンマーの学校では女の先生が多いです)の理解や図書を推進しようと自主的に活動することで絵本が子どもたちのもとへ届き、楽しまれるということを痛感しました。そして、先生たちや図書館員たちに絵本の大切さを伝え、活動を自分たちで行えるように支えるのがシャンティの役目です。さまざまな人の理解のもとに段階を踏んで子どもたちへ最終的に届くのだということを実感しました。

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全員への読み聞かせを終わった後に、まだ字が十分に読めない幼稚園くらいの子たちに向けて、図書館員さんが読み聞かせを行っています。

●わかりあうこと、伝えること

ミャンマー・ピー事務所は、活動を始めて今年で4年になるそうです。活動前のミャンマーには、絵本はなく、子ども向けの本は漫画しかありませんでした。さらに、ミャンマーの教育は暗記が主とした教育で、いかに先生の教えることを覚えているかを測られるため、何も考えずにただ記憶するということが当たり前だったそうです。その中で、絵本を読み想像力を広げていこうという価値観を普及するのは非常に難しいです。なぜなら、何も考えずに覚えることが当たり前でしたから。しかし、お互いの当たり前が違うことを分かった状態でそれを頭ごなしに否定するのではなく、新しい価値観の重要性を伝えていくことを日本人職員の方をはじめミャンマー・ピー事務所のスタッフの方々が何度も先生や図書館員さんに伝えることによって徐々に理解され、絵本の読み聞かせが行われている様子をうかがうことができました。相手の状況に寄り添って、現状を変えるためにともに考え活動していくことが大切なのだなと思いました。

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モニタリングでは、先生たちが困っていることや現状を聞き、それに対して一緒に解決策を見出していきます。この写真は、モニタリング後に新しい紙芝居の紹介をしている様子を映しています。

●絵本の可能性

現地スタッフで公共図書館事業を担当しているティンミャさんにインタビューした際に、好きな本は何か聞いたところ「ねずみくんおおきくなったらなにになる?(ポプラ社)」が好きだと言っていて、その理由は子どもたちに将来の夢を考えるきっかけにつながるからだと話してくれました。ミャンマーの子どもたちは、将来の夢を考えることは少ないといいます。この絵本を読むだけで、将来何になりたいかどんな仕事をしたいか想像するきっかけになると思います。そういった些細だけど大事なことを絵本は教えてくれるということを改めてわかりました。

また、これは新しい絵本の可能性だなと感じたエピソードがありました。学校図書館のモニタリングに同行させて頂いたときに、学校の先生が小学3年生のある生徒で勉強が苦手だった子がいたけれど、絵本を読み始めてからミャンマー語が読めるようになっていったことで、読解力が向上したという話を聞き、想像力を掻き立てるだけでなく学習自体の改善にも絵本が一役買うこともあるのだと思いました。この学校図書館事業は6月に始めたばかりですが、たった3カ月でこのような効果があることに驚くと同時に、今後も嬉しい報告が増えるといいなと思いました。

絵本には、子どもたちが絵本をどう受け取るかによって多様な可能性を秘めています。それを少しでも多くの子どもたちに実感してもらい、自分自身の可能性も広げていってもらいたいと強く思います。

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幼稚園くらいの子たちは絵本のミャンマー語は読めなくても挿絵に何が書いてあるかどんな物語かを自分なりに想像して読んでいました。

最後になりましたが、今回のこの研修で多くのことを学ぶことができたのは、事前研修や準備などをサポートしてくださった東京事務所の山本さんや栗原さん、快く私を受け入れてくださった中原さんをはじめとしたミャンマー・ピー事務所の方々、ピーや東バゴーなどで出会い関わったみなさんのおかげです。本当にありがとうございました。

ミャンマー・ピー事務所研修生 栗原綾菜

NGO海外研修プログラムについて

シャンティが行っている「NGO海外研修プログラム」はNGOでの業務を経験できる貴重な機会になります。国際協力や教育、東南アジアの国々に興味がある方はぜひ本プログラムに参加してみてください。

詳しくは、NGO海外研修プログラム参加者募集のページをご覧ください。