20年ぶりの地方選挙が行われました
ヌアコット郡タディ農村自治体の首長(中央)と副首長(右側)
ネパール事務所の三宅隆史です。
ネパールでは5月と6月に20年ぶりの地方選挙が行われました。1996年から10年もの間内戦が続いたことや和平合意されたのちも憲法が2015年まで憲法が制定されなかったため、地方選挙を実施できなかったのです。
この間、市長や村長は存在せず、中央政府(連邦・地方開発省)から公務員が任命、派遣され、地域行政の計画や予算は、政党との協議は経るものの、地元出身ではない官僚によって決められてきました。20年間、住民は地域の代表を選ぶことができなかったのです。
州によって5月14日と6月28日に二回にわけて行なわれた地方選挙は大変に盛り上がり、投票率は73%の高さでした。各政党は市長・副市長、村長・副村長のいずれかの立候補者を女性とすることやが義務づけられました。こうして20年ぶりに自治体の首長が選挙で選ばれました。
シャンティが今年校舎建設を支援しているシッタ・ダルマ小学校では、幹線道路から車で約30分かかる山の上にある同校への道路が雨季に入ってからダメージを受けました。鉄筋やセメント等の建設資材を4週間に渡って運ぶことができない状態が続いています。
そこで、今回新しく選挙で選ばれた、同校のあるタディ農村自治体の首長に、同校への道路を修理していただくために「陳情」に行きました。村役場は4部屋程度しかない小さな建物ですが、ひっきりなしに住民が出入りしており、活気がありました。
首長は「日本の市民からの学校への支援に感謝している。この自治体のすべての道路を修理する予定だが、シッタ・ダルマ校への道路の修理を優先的に行いたい」と言ってくれました。選挙で選ばれた地元の代表としての誇りと責任感を感じさせる方でした。
地方選挙は連邦制への移行を見据えた、地方自治への第一歩です。これまでの中央政府の出先機関はすべて自治体の部署に改組されます。たとえば、教育行政については、教育省の出先機関である郡教育局が担当していましたが、7月に始まった新年度からは、自治体の中に教育担当部局ができました。地方自治の進展により、私たちNGOの活動においても自治体への働きかけが大切になると考えています。