オンラインイベント「国際協力の現場から Vol.3 新型コロナウイルスが与えた影響 多民族国家ラオスの子どもたちの今」 開催報告
2020年9月26日、オンラインイベント「国際協力の現場から Vol.3 新型コロナウイルスが与えた影響 多民族国家ラオスの子どもたちの今」を開催しました。
https://sva.or.jp/wp/?p=39247
イベントでは、50の民族が暮らすと言われる多民族国家ラオスにおける、新型コロナウイルスの現状や、人々の暮らしや子どもたちの教育にどのような影響を及ぼしたのか、改めて浮き彫りになった教育課題に関して現地職員からお伝えしました。
登壇者プロフィール
オイ Phoutthanaly Thammamixay(※ルアンパバーンから参加)
シャンティ・ラオス事務所 コーディネーター。高校卒業後、民間会社に就職。学費をためて大学に進学。シャンティが支援する図書館を訪問、活動に共鳴し2007年に入職。ルアンパバーン県出身。
シーライ Seelay Khamlamphan(※ルアンパバーンから参加)
シャンティ・ラオス事務所 プロジェクトスタッフ。ポンサリー県出身、カム族。教員養成学校に入学。へき地の学校の教員を支えるシャンティの活動に共感し2016年に入職。趣味はスポーツ。
玉利 清隆(※ルアンパバーンから参加)
シャンティ・ラオス事務所 所長。民間企業で勤務した後、海外青年協力隊、他のNGO、JICAを経て、2014年に入職。同年9月からカンボジア事務所 所長を務め、2018年5月より現職。
ラオスにおける活動
シャンティはラオスで学校建設、複式学級運営改善事業、移動図書館活動および、絵本・紙芝居出版を実施し、多くの民族が暮らすラオスで、少数民族や僻地に住む人々が抱える教育の格差是正を目指しています。しかし、そうした課題がある一方で、多様な文化もラオスの魅力の1つです。ちなみに、この日シーライは自身のカム族の衣装を着て登壇してくれました。
ラオスにおける新型コロナウイルスの状況
ラオスでは、2020年3月に初めて陽性者が確認されて以降、約45,000人が検査を受けイベントが開催された9月26日までに23人が陽性と診断されました。
ラオス政府は4月1日から5月3日までの約1カ月間の外出禁止令(ロックダウン)を施行し、日本や近隣国と比べると陽性者数は少なく抑えられています。
レストラン、土産店、旅行会社が並ぶルアンパバーンの中心通りは、普段は観光客で賑わっていますが、ロックダウン中は政府の指示により商店が休業したため、街は閑散としていました。
私自身もロックダウンが開始された当時は、インターンとしてラオス事務所に赴任したばかりでした。入国後、2週間の自宅待機を経て街に出ましたが、行こうと思っていたお店の多くが既に閉まっており、数店舗がテイクアウトのみの営業を行っていました。
当初、滞在していたゲストハウスには、日本の青年海外協力隊やイギリス、アメリカから来た6人が住んでいましたが、4月に私が帰国した時にはイギリス人の1人だけになっていました。
ロックダウンが子どもの教育に与えた影響
新型コロナウイルスの影響は子どもたちの学校現場にも影響を与えました。
全ての学校や教育機関はロックダウン前の3月19日から一斉に休校となり、その間教員から子どもたちには宿題が出されていましたが、農村部では適切に出されていないケースもありました。
その後、5月18日から小学校、中学、高校の各最終学年の授業が再開され、その他の学年も6月2日から授業が再開されました。
しかし、学校で子どもがウイルスに感染することを心配する保護者もいるため、再開後は学校を欠席する児童が以前より増加しています。
ラオスの学校の今
再開後の学校では、ラオス政府からの指示により、学校内での手指の消毒やマスクの着用、そして社会的距離(ソーシャルディスタンス)を保つことが定められており、写真の様に以前とは違った形で授業が行われています。
ただ、こうした状況は全ての学校で行われているわけではありません。
都市部の学校では、比較的、政府の指示に沿った感染対策が実施出来ていますが、へき地の学校では椅子の数の不足や生徒数が多い等の理由から実施出来ていないところもあります。
しかし、子どもたちは学校の再開をとても喜んでおり、感染対策を行いながら勉強に励んでいます。
質疑応答(Q&A)
ラオスからの発表後に、ご参加頂いた方からいくつかご質問を頂きました。
Q: 海外からの観光客の減少により、地元の経済や人々の生活にどのような影響が出ていますか。
A:観光に関連するレストランやゲストハウスなどに関わっていた人々にとっては非常に大きな影響が出ていると思います。多くの人は仕事を変え、実家の農業を手伝ったり、建設現場の日雇いなどで生計を立てています。一方、農村部に住む人々は以前から農業に従事していたため、特に影響はありませんでした。
Q:図書館は以前と同じようにオープンしているのでしょうか。何か特別な取組みをしているのでしょうか。
A:ロックダウン中は他の施設と同様に、閉館していました。その後開館しましたが、学校と同じように手指の消毒やマスクの着用、体温チェックなどの感染対策を行っています。
Q: 地方や学校にもよって違うでしょうが、1クラスの生徒の数は最高どのぐらいですか?また、学校教育の現場で使われる言語はラオス語のみですか?それともその地方の民族の言語も使われていますか?
A:現在は学校数も増えてきたので、平均して25~35人ほどで授業を行っていますが、農村部の学校になると、それよりも少ない場合も多いです。ただ、一クラスの生徒数が多い都市部では60人近いクラスもあります。
言語ですが、ラオス政府の公式では「学校ではラオ語を使用する」としていますが、少数民族の子どもが多い地域ではラオ語が分からない子どもがほとんどなので、その地域で使われている言語が学校でも使われている場合がほとんどです。
Q: 新型コロナの影響で、日本で言われるような子どもたちのメンタルへの影響はありますか?
A:特にそのようなケースは聞いていませんが、恐らく家庭の状況によると思います。農村部であれば、経済的な影響が少なかったため、子どもたちへの影響はあまり無かったと思います。ただ、都市部であれば、親の仕事が無くなった場合に家計が苦しくなるなど、影響はあったのではないかと思います。
今回のオンラインイベントでは、現地の職員が撮った多くの写真が使われており、なかなか見ることの出来ないコロナ禍での小学校の様子や人々の生活を見ることが出来ました。
私自身も世界的に新型コロナウイルスが流行している中で、自分に何が出来るのか考えさせられた1時間でした。
オンラインイベントの様子は、YouTubeのシャンティ国際ボランティア会のチャンネルからご覧いただけます。
このブログではお伝えし切れなかった内容や、日本ではほとんど報道されることのない、ラオスの現状や人々の生活をお伝えしています。ぜひご覧下さい。
ご参加、ご視聴いただいた皆さま、ブログをお読みいただいた皆さま、どうもありがとうございました。
事業サポート課 インターン
岩松