2026.03.11
メッセージ

東日本大震災の経験が、能登半島へ─シャンティと「浜わらす」がつないだ支援の形

メッセージ
国内災害

東日本大震災から15年がたちました。被災地ではインフラ整備が概ね完了し、復興事業費は約42兆円に達しましたが、孤立・心のケアの課題は今も続いており、2024年度の心のケアセンター相談件数は1万6,249件、孤独死は累計973件にのぼります。また、若年層の流出や地域経済縮小といった構造的な課題も深刻です。

これらの数字の裏には、一人ひとりの生活や痛み、不安、そして歩み続けようとする静かな強さがあるとも言えます。震災から年月が重なっても、あの日を抱えながら前を向いてきた方々へ、まず心からの敬意とともにお見舞いをお伝えしたいと思います。

東北で築かれた「寄り添う支援」

シャンティは2011年の発災直後から、宮城・岩手・福島で移動図書館、子ども支援、まちづくり支援を展開し、少しずつ地域へ活動を引き継ぎながら支援を進めてきました。
取り組んだ支援活動のひとつに、宮城・気仙沼で2015年から始まった、震災後に海を恐れるようになった子どもたちが再び海と向き合うための自然体験活動「あつまれ、浜わらす!」があります。

当時の活動写真「自分たちで手作りした筏でいざ海へ」

10周年行事で聞いた、“浜わらす”誕生の背景

2025年8月、私はNPO法人浜わらす設立10周年の記念行事に参加しました。発足に関わった方々が当時を生々しく語ってくださり、特に印象的だったのは、震災直後、外部から多くの支援が集まる中で、緊急支援として優先される活動の多くが期限付きであったということでした。
しかし、地域で生きる人たちにとっては、目の前の課題だけでなく、「この先どう生きていくか」を見据えた営みこそが、未来を支える確かな土台になる。その思いから、“子どもたちが海と共に生きるためにできること”を模索し続けた結果として、“浜わらす”は生まれたのだと学びました。

語ってくださった方々の言葉には、恐怖や困難を越えながら、それでも「子どもたちの未来を守りたい」という静かで力強い願いが込められており、その思いに胸が熱くなりました。

10周年記念式典の様子

浜わらす──自然と共に生きる力を育む活動へ

“浜わらす”は2013年の活動開始後、2015年にNPO法人化し、海の体験、食の学び、浜の知恵の継承など、子どもたちの“生きる力”を育む多様なプログラムを続けています。年間375名以上が参加する年もあり、地域と歩む活動として成長しています。

震災を経験した地域だからこそ、「自然と共に生きる」という感覚は特別な意味を持っています。その中で笑い、遊び、学ぶ子どもたちの姿は、地域の希望そのものであり、未来への灯火だと感じます。
特定非営利活動法人 浜わらすの活動はこちらから


これまでの活動の写真が展示されていました。最上町黒沢地区から寄贈された辛夷(こぶし)の柱が今も支えています。

東日本の経験が能登へ

2024年の能登半島地震では、シャンティは輪島市門前町を拠点に支援を開始しました。東北で培われた移動図書館の知見は能登でも活かされ、輪島市立図書館との協働へとつながっています。
また、避難所で不安を抱える人々に寄り添い、炊き出しや足湯サロン、入浴・買物支援タクシーなど、「必要とされる温もり」を丁寧に届ける活動も展開されました。まさに、“誰かの心にそっと寄り添う支援”が息づいています。
東北から能登へ。そしてまた別の地域へ。震災の苦しみを知る人々の温かさと強さが、次の地域の支えとなり、助け合いの循環をつくっていく。その優しい連鎖が、これからも続いていくことを心から願っています。

石川県輪島市図書館へ移動図書館車両を寄贈

皆さまにとって、今日が少しでもおだやかな一日となりますように。

2026年3月11日
事務局長
山本英里

東日本大震災の活動とシャンティの学びを記録した書籍を発行しています。この機会にぜひご一読いただければ幸いです。

 

『試練と希望 東日本大震災・被災地支援の二〇〇〇日』
まちづくり支援に居場所づくり・学習支援、そして移動図書館と、さまざまな支援活動に携わったスタッフ・協力者は支援を通じて何を感じたのか。支援者一人ひとりの息遣いから人生観の変遷までを綴った、東北に寄り添い続けたシャンティ6年間の軌跡。
発行:明石書店(2017年11月)
編集:シャンティ国際ボランティア会

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『走れ!移動図書館  本でよりそう復興支援』
広報課課長兼東日本大震災図書館事業アドバイザー(当時)鎌倉幸子の著書。
2011年7月より岩手県で移動図書館をスタートさせた当時の様子からの記録です。

発行:筑摩書房(2014年1月)
著者:鎌倉 幸子

序章 東日本大震災のこと、自分にとっての本の存在
1章 なぜ移動図書館なのか
2章 読みたい本を読みたい人へ届けるために
3章 本を読こと
4章 本のチカラを信じて
おわりに 衣食住と本と

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