【寄稿】本を生きる力に(長倉シュタッフ牧子)
年4回発行しているニュースレター「シャンティ」に寄稿いただいたシャンティと深く関わりのある方からの記事をご紹介します。
シャンティ国際ボランティア会 理事(当時)
株式会社FM BIRD 代表取締役社長
長倉シュタッフ牧子
紙印刷から電子書籍へ
昔はわからないことがあれば、図書館でなんでも調べたものですが、今は断然検索サイト。本を開くより先に、スマートフォンやPCを触ってしまう自分がいます。
さて、本を考えるとき、印刷という技術の進歩抜きには語れないといいます。印刷技術が進んだからこそ、情報の保存、証明、契約といった人の営みに大切なことが格段に進みました。
ちなみに印刷は2世紀ごろに中国で生まれたという説があり、世界最古の現存印刷物と言われる百萬塔陀羅尼(ヒャクマントウダラニ)があります。仏教は印刷技術とともに、言語伝達の大きなページを進めていたのです。
紙書籍と電子書籍、それぞれの使い分け
シャンティが長い間アジアの子どもたちに届けている本は、人々の心の栄養となります。言葉を伝達することはもちろん、その責務は大変に重く、意義深さは計り知れません。
とはいえ、今後世界中のすべての本を紙で作ってしまうと、世界の木材は大きな損失になってしまいます。最新レポートによると、アメリカでは76%が紙書籍、21%が電子、3%がオーディオブックという割合になっています(*)。実は、2007年に電子書籍が出たころより紙書籍に戻る傾向があり、オーディオブック市場が成長を続けている点が興味深いです。
ミャンマー・テゴンの図書館 2015年撮影 ⒸYoshifumi Kawabata
書籍や図書館は間違いなくすばらしいシステムであり、“所有することにこだわらない時代”に生きる私たちにとって、インターネットは“大きな巨大電子図書館”そのものです。しかし、紙の書籍は“感触”や“嗅覚”を刺激し、その先にある“愛着”という心のひだを育てることにつながります。
「電子書籍を購入した人の7割以上は本を最後まで通して読まない」という研究結果を出したある先生は「電子書籍は、体に触れるという書籍読書行為を通して得られるある種の満足感に到達しないからではないか」と推測されています。これからの若い世代には、電子書籍と紙の書籍をバランスよく生活に取り入れ、生きる術を身に付けてほしいと願うばかりです。
(*)Print vs Digital, Traditional vs Non-Traditional, Bookstore vs Online: 2016 Trade Publishing by the numbers – Author Earnings http://authorearnings.com/report/dbw2017/
本寄稿記事とニュースレターについて
本記事は、シャンティが発行するニュースレター「シャンティVol.297 (2018年秋号)」に掲載した巻末言「道」の内容を元に再編集したものです。※ニュースレター「シャンティ」は年4回発行し、会員、アジアの図書館サポーターに最新号を郵送でお届けしています。
シャンティは、子どもたちへ学びの場を届け、必要としている人たちへ教育文化支援を届けています。引き続き、必要な人へ必要な支援を届けられるよう、月々1,000円から継続的に寄付してくださる「アジアの図書館サポーター」を募集しています。