【対談:第三回】いいなと思った図書館には、それをつくった司書がいる
漫画家 / 篠原 ウミハルさん × シャンティ広報課 / 鎌倉 幸子
2014年2月28日 FAXインタビューにて
『図書館の主』(芳文社)「タチアオイ児童図書館」を舞台に、口は悪いが本の知識が豊富な児童書専門の司書である御子柴貴生が主人公の漫画です。実在する絵本や児童書を通じて本と人、人と人とがつながるストーリーです。そのように本と人が「つながる」ためには「司書」が鍵だと感じさせてくれる一冊を生んだ篠原ウミハル先生にインタビューしました。
漫画家 / 篠原 ウミハルさん
- 2011年1月7/14合併号より『図書館の主』を『週刊漫画TIMES』(芳文社)にて連載中。現在8巻まで刊行されています。(画像はコミックスの表紙より主人公の御子柴さん)
シャンティ広報課 / 鎌倉 幸子
- 1999年シャンティに入職。2011年より広報課長兼東日本大震災図書館事業アドバイザー。
図書館が舞台の漫画を描こうと思った理由
鎌倉:『図書館の主』を書こうと思ったきっかけを教えてください。
篠原:週刊漫画TIMESさんから何か職業物で漫画をというお話をいただき、いくつか仕事をあげたもののうちの一つが図書館でした。
鎌倉:図書館をセレクトしたのですね。
篠原:もともと図書館という存在に興味があったのと、大学にて児童文学を専攻していたので、そこで勉強した事も生かせるかと児童書専門の図書館を舞台にしようということで出来上がりました。
「理想の図書館」とは
鎌倉:「タチアオイ児童図書館」は、本と出会う場所以上に、人と人とが出会う場所、過去と未来が出会い交差する場所になっていると感じています。
篠原:理想の図書館は、探しものができたり、読みたいと思った本があり、それを周囲に気を取られること無く居心地の良さを感じながら読める場所であってほしいと思います。
鎌倉:そして居心地をつくるのが御子柴さん(「図書館の主」の主人公)たち司書なのではないでしょうか。
篠原:一人で本を探すことには限界もあるので、その時に話しかけやすい司書の方がいらっしゃるのも理想の一つです。本の場所を聞いた時に優しく素早く教えて頂いた時は、またこの図書館を利用しようと思ったものでした。
鎌倉:司書というか、人は大切ですね。
篠原:建物が新しかったり、近代的であったり、おしゃれであったりするのは、実際のところ居心地とはあまり関係がないと思っています。
図書館の雰囲気を決めるのは?
鎌倉:私も「本はモノである以上、人の手を介して生きる」と思っています。その中で徳間さん(「図書館の主」の登場人物)のような司書の存在が大きいと信じています。先生は、御子柴さんのように徳間さんのような司書との出会いが過去にあったのでしょうか。
篠原:徳間のモデルは小学生時代に行っていた近所の図書館のいつも無愛想なおじさん司書の方なのですが、残念ながらふれあいはありませんでした。ですので勝手に、自分一人では手にすることの出来ない知識を与える事ができ、叱るべきところは叱り、正しい方向に導ける人だといいと思い描いたキャラクターです。
鎌倉:なるほど。先生が考える「司書の役割や存在」についてお考えのことがあれば教えていただければ幸いです。
篠原:司書の役割や存在については、私自身は単なる一利用者にすぎないので偉そうなことを言えないのですが、いいなと思った図書館は、そこを作られた司書の方がいらっしゃるんだ、と思えるので何度も足を運びます。
鎌倉:何度も!
篠原:前の質問にもつながるところですが、選書や本の配置なども含めて、図書館の雰囲気は全て司書の方次第だと思っています。探している本だけを目当て行くのではなく、他の本にも手をのばそう、ちょっと読んでいこうと思えるのがいい図書館であり、その空間を形作るのが司書の方の力であると思っています。それを理解されているかいないかで、まるで違う場所になるという気はします。
「大切な一冊」との出会いを逃さないために
鎌倉:「大切な一冊と出会う」ためにアドバイスをお願いします。
篠原:残念ながらそればかりは私もわかりません。読まず嫌いをしたり、開くのを面倒臭がらずに、気になった本は読んでみるのが一番だと思いますよ。
鎌倉:いつも読んでいるジャンルとは違う本を手にしてみると、案外スラスラ読めて、世界が広がることもありますよね。今日は、ありがとうございました!