2020.05.03
読み物

ステイホームと手仕事

クラフトエイド
スタッフの声
ラオス

皆さん、こんにちは。クラフトエイドです。

「ステイホーム週間」という新しい名前の付いたゴールデンウィーク。皆さんどのようにお過ごしでしょうか?
初めてのステイホーム週間、私は今までやろうと思ってはなかなか手を付けられなかった、お裁縫を進めようと思っています。


写真:タイのシーカーアジア財団からいただいた手作りマスクとFEEMUE モン族ピッタリピアス

今日は、ステイホームとお裁縫について、感じたところを書いてみようと思います。
クラフトエイドのお話に続きますので、お付き合いいただければ嬉しいです。

シャンティでは、3月から在宅勤務を取り入れ始めました。そのころは週に数日は東京事務所に出勤していて、他のスタッフとランチをしながら、在宅勤務もけっこういいね!なんて話していました。
満員電車に揺られる通勤時間が無くなった私も、余った体力と時間を好きなことに使ったりして、割と楽しく過ごしていました。

その様子が変わってきたのが、3月下旬。緊急事態宣言が出されてからです。
そこから、完全に在宅勤務となり、他のスタッフとも電話やオンライン会議で話をするだけになりました。

代わりに、毎日聞こえてくる新型コロナウイルス関連のニュース。まるで知り合いのように身近な芸能人の方の訃報。海外の生産者からも、注文が無くなって作り手の仕事と収入が無くなってしまうとか、お店にお客さんが全く来ないのでしばらく閉めるとか、そんな声が続々届きました。

私といえば、ますます外出しなくなったので自由な時間は増えていくのですが、針と糸を持つ気になりません。
やりたいのに、心が落ち着かず始められないのです。

手仕事は心と環境に余裕がなければできないものだな、と身をもって感じました。
そして、クラフトエイドの作り手さんたちが手仕事を続けてきたことが、いかに貴重なことかと改めて想いました。

クラフトエイドの始まりは、1985年です。タイ東北部のラオス難民キャンプで暮らしていたモン族の人たち刺繍などで作った商品を、日本で販売したことから始まりました。
バンビナイキャンプ

モン族の皆さんは刺繍が得意、というお話はもう何度もさせていただいています。でも、刺繍は難民キャンプで身に着けた、という女性も実は多いのです。

モン族の人びとはもともと山の中で自給自足の生活をし、細かな刺繍が施される民族衣装は女性たちが何年もかけて手作りしていました。
1960年代以降ベトナム戦争の影響がラオスにもおよぶと、多くが難民キャンプへと逃れました。難民キャンプでの暮らしは、食料は配給制で農業などの生産活動もできず、それまでのモン族の生活とはかけ離れたものでした。民族衣装を着ることも無くなりました。
バンビナイの生活4今年の春4000人の人々がアメリカ(大部分)やフランスに向けてバンビナイを去った001

その中でも、女性たちは針と糸を手に刺繍をし、それを娘たちへ伝えていきました。
モン族の伝統である刺繍をすることは、本来の形とは違う生活の中で、民族のアイデンティティや文化を守るためにできる数少ないことだったのかもしれません。でもそれは同時に、難民キャンプにたどり着き、これまでのように追われたり逃げたりすることが無くなったという安心感が、女性たちに手仕事を取り戻させてくれたともいえるのです。

バンビナイ難民キャンプ007
キャンプで長年暮らした後、ラオスに帰還したモン族の方たちは、今でもクラフトエイドに商品を届けてくれています。
他の国や地域で暮らす作り手の皆さんも、家事や農作業の合間に手仕事で商品を作ってくれています。
日常が平穏であるからこそできる手仕事。手仕事が続けられる平和な日常があるからこそ守られる、文化や民族の誇り。
クラフトエイドの商品が作られる意味はここにあると、今改めて感じています。

さて、ステイホーム週間。きちんと気を付けていれば、危険が振ってくるような生活ではありません。
作り手の皆さんの技術には到底及びませんが、丁寧な暮らしの第一歩の手作り時間を楽しもうと思います。

皆さまも、良いお休みをお過ごしください。