四面楚歌になるミャンマー(ビルマ)難民キャンプの人びと
皆さん、こんにちは。
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の菊池です。
こちら、タイ・ミャンマー(ビルマ)国境では、今週アウンサンスーチーさんが難民キャンプの訪問を予定されているという報道があり、自主帰還を含む難民問題に何か進展があるのではないか、期待する声があがっています。もしこの訪問が実現しましたら、後日そのときの状況を皆さまにお伝えできれば、と思っています。
今日は、文章ばかりで恐縮ですが、難民キャンプを巡る最近の状況についてお伝えしたいと思います。
アウンサンスーチーさんの訪問からも期待されるように、難民の自主帰還については、多くの人が関心をもっていらっしゃるかもしれません。実際、近年のミャンマー(ビルマ)国内の情勢の変化を受けて、難民キャンプを巡っては、カレン難民委員会や国際機関、NGOの間で難民の自主帰還に関する話が出てはいますが、国境に数多く埋まる地雷の問題、帰還後の土地の問題、まだ紛争が起こっている地域があること、長期にわたる紛争によるミャンマー(ビルマ)政府への不信感など、様々な問題が山積しており、具体的な集団帰還が実現されるにはまだ時間がかかると言われています。現段階で、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)でも、自主帰還の準備をする段階にはない、と話しており、自主帰還への期待が高まりつつも、大きな政治決定がなされない限り、実現に向けては時間を要するようです。
一方で、第三国定住については、来年からは規模が縮小される方向にあります。タイ・ミャンマー(ビルマ)国境の難民キャンプからはこの制度を通して13か国へ渡っていますが、そのうちの約8割の人々が渡っているアメリカで、来年度以降の第三国定住の規模縮小の方針が打ち出されています。キャンプによっては、すでに第三国定住の申請が締め切られたところがあったり、規模縮小の話を受けて、第三国定住の手続きの促進を求めた難民によるデモがあったりと、特に第三国定住を希望する人々にとっては落ち着かない状況が続いています。
また、難民の中には、タイ社会へ出ていく人々もいますが、実際は、多くのミャンマー(ビルマ)からの移民労働者同様、身分の保証もなく、わずかな所得で生活するなど、様々な困難に直面しているようです。
このような状況の中で、難民キャンプでは、これまで様々な社会サービスを担ってきた国際NGOが財政難のため支援の継続が難しく、キャンプでの事業を撤退、縮小する動きが出てきています。特にSVAの図書館事業にも関連する教育分野については、これまで基礎教育支援の中核を担ってきたNGOの事業終了が決定し、キャンプの中の教育環境の悪化が懸念されています。
このように、難民の人々は、母国にも帰れず、第三国定住への道も閉ざされつつあり、タイ社会への統合も難しく、難民キャンプの中でさえ社会サービスが縮小しているという状況に直面しており、まさに「四面楚歌」と言えるかもしれません。
このような難民キャンプの現状について、6月6日(水)にミャンマー(ビルマ)難民事業事務所長の小野豪大がJICA地球広場にてご報告させて頂きます。様々な変化が起こっているタイ・ミャンマー(ビルマ)の国境の今にご関心のある方は、是非ご参加ください。
また、ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所では、このような変化が起こっている中で、改めて図書館事業の重要性を認識しています。先日、事業評価に関連して、難民キャンプの住民に話を聞いた時も、「図書館は、教育のための非常に重要なリソースであり、これからも難民キャンプの教育を支えてほしい。」、「図書館の中での文化活動を通して、異なる民族を知り、理解していくことの重要性を学んだ。今後も文化活動を続けてほしい。」、「どうか、難民キャンプを見捨てないでほしい」・・・と様々な声を聞きました。私たちにできることは、難民キャンプがあり続ける限り、難民の人々に寄り添って活動を続けていくことだと思っています。
是非多くの皆さまにも難民キャンプの人々を支えて頂けますと幸いです。6月30日まで、READYFORというサイトで、図書館活動へのご支援をお願いしております。もし、この難民キャンプでの図書館活動にご関心のある方がいらっしゃいましたら、是非、こちらのサイトをご覧ください。→https://readyfor.jp/projects/heal_heart_with_library117
本日は、文章ばかりになってしまいましたが、今後もこの事業を見守っていただけますと幸いです。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
(タムヒン難民キャンプの元気な子どもたち。ポーズが決まってますね!)
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所 菊池礼乃