カンボジア地方評議会議員選挙
皆様、こんにちは
カンボジアでは6月4日(日)に地方評議会議員選挙が行われました。これは、カンボジア全国に1,646ある行政区の議長、副議長、評議会議員を選ぶ直接選挙で、2002年以降5年に一度行われています。今回の選挙では、この議長、副議長及び11,572の評議会議員の議席をめぐって、12の政党から約90,000人が立候補しました。
カンボジアでは現首相が率いる人民党が長年政権を握っており、首相のフンセン氏は第二首相時期を含めると30年以上政権の座に留まっています。この与党の強みは、主にポルポトを追い出し国家に平和と安定をもたらした事、年平均7%に達する経済発展及びインフラの整備により繁栄をもたらした事で、保守及び壮年層からの支持が高いと言われています。
これに対し、最大野党の救国党は、現政権の汚職、土地収用、雇用や環境問題等に非を唱え、自由、人権、民主主義の価値観を掲げ、都市の若年層を中心に多数の支持を得ており、その考えはソーシャルメディアを通して地方にも浸透しつつあります。
2013年に行われた国政選挙では、救国党が44.5%の投票率を集め大きく躍進しました。今回の地方選挙でも与党と野党の攻防が最大のポイントで、5月20日から6月2日まで行われた選挙キャンペーン期間では、それぞれが首都だけでも10万人を超える支持者を導入し、盛んに選挙合戦を行いました。投票率も選挙登録を行った人のうち85.74%と高い数値で、国民の関心の高さも伺われます。
そしてもう一つのポイントが、公正な選挙が行われるかどうかです。残念ながら、これまでのカンボジアで実施された選挙では、不透明な要素が多く、公正な選挙ではなかったとの指摘を毎回各方面から受けています。それ故、今回の選挙に向けて、日本政府も最新の設備を使用した選挙人登録の精度向上や、選挙プロセスの改善などの分野で協力を行っています。従って、今回の選挙ではこの公正さについても注目されていました。
投票後即日開票が行われ、発表された暫定結果によりますと、与党人民党が、得票率51.39%、評議会議長1,158議席、同議員6,521議席を獲得し、勝利しました。しかし、5年前の地方選挙結果がそれぞれ、61.67%、1,592議席、8,292議席であった事を比較すると大きく後退しており、与党有利と言われる地方選挙においても野党が大きく躍進した結果となっています。来年7月には国政選挙が行われる予定ですので、今回の選挙結果を受け、与野党共に新たな選挙対策を行っていく事になると思われます。
一方心配された公正な選挙については、一部問題も指摘され、人権NGOの中には「本選挙が公正に行われたとは言えない」とコメントしている団体もありますが、概ね大きな混乱もなく順調に行われたとの報道が多数を占めています。少なくとも、これまでにカンボジアで実施された選挙に比べると改善したといえるでしょう。
今後カンボジア人が、これまでの保守政権から変化を求めて新たな政治環境を選ぶのか、また政権が移行する場合、混乱なくスムーズに移行が行えるのか、来年の国政選挙に向けて目が離せません、国連による暫定統治から20数年、比較的順調に発展してきたカンボジアが、政治や治安の問題によって後戻りする事がないように願う事はもちろんですが、同時に現在みられる貧富の格差拡大や汚職、司法の腐敗、人権軽視等の状況が改善され、カンボジア人がより民主的で自由に物が言える社会で生活できるようになる事を祈っています。
<投票所の様子>
カンボジア事務所
玉利清隆