2021.08.05
読み物

【寄稿】笑顔とテレビの間を埋めたい(高田博嗣)

ニュースレター
ミャンマー
ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ
人びとの声
連載企画

年4回発行しているニュースレター「シャンティ」に寄稿いただいたシャンティと深く関わりのある方からの記事をご紹介します。

シャンティ国際ボランティア会 専門アドバイザー
株式会社NHKグローバルメディアサービス ニュース製作部 統括部長
高田博嗣

ミャンマー孤児院で受けた衝撃

顔を“タナカ”で真っ白にして微笑む青い服の女の子。
2015年2月、ミャンマー中部の都市ピーにあるヤダナー孤児院で撮った1枚です。バンコク駐在の特派員だったぼくは、アジア地域ディレクターの八木沢さんに誘われて、シャンティが建てた女子寮オープンのタイミングで取材に行きました。

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ミャンマーの孤児院で出会った女の子(2015年撮影)

孤児院の実態は、衝撃でした。
ミャンマーでは国軍と少数民族の武装組織との戦闘が、今なお各地で続いています。その結果として故郷や家族を失い、行き場をなくして送られてきたのが、目の前にいる200人もの少数民族の子どもたちでした。

子どもたちを守り育てる尼僧の奮闘

「僧侶が辺境を回ってこの子たちを連れてきました。言葉が通じない(=ビルマ語を知らない)子もいました。車に乗ったことがない子もいて、着いた時は多くがひどい車酔いでした」
孤児院を主宰する尼僧ドーナワティリさんは、発足当初を振り返りました。
「ある子が焚火を見て言ったんです。『ここはいつ燃やされてしまうの?』。その子を抱きしめながら、この子たちの母親になろうと誓ったんです」

印象的だったのは、どの子も振る舞いが明るいことでした。深いトラウマを抱えた子が笑顔になるのは簡単ではないはずです。ドーナワティリさんの努力に心から敬意を表したい。その思いを込めてテレビリポートを作りました。NHK国際放送で英語でも放送され、シンガポールから寄付が寄せられたと聞きました。少しは貢献できたとほっとした覚えがあります。

テレビ放送の制約の中でいかに伝えるか

でもぼく自身は反省が残りました。テレビには尺の制限、映像とコメントの整合性など様々な制約があります。伝えたいことの半分も伝わっていないといつも感じます。
去年(注:2019年)シャンティの専門アドバイザーにしていただき、報道人としてだけではなく、ひとりの人間としても寄り添える立場になりました。青い服のタナカの子の笑顔の意味がもっと伝わるにはどうすればいいか、皆さんと一緒に考え、実行したいと思っています。

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ミャンマー(ビルマ)難民キャンプで開催されたサッカーフェスティバルでの子どもたちと筆者(2013年撮影)

本寄稿記事とニュースレターについて

本記事は、シャンティが発行するニュースレター「シャンティVol.306 (2020年夏号)」に掲載した巻末言「道」の内容を元に再編集したものです。※ニュースレター「シャンティ」は年4回発行し、会員、アジアの図書館サポーターに最新号を郵送でお届けしています。

【寄稿】難民キャンプから学んだ原点(八木澤 克昌)
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