2022.09.17

カレン族の儀式~手首に糸を巻く~

スタッフの声
ミャンマー

みなさん、こんにちは。ミャンマー・パアン事務所のシトゥです。私が住むカレン州で古くから続く儀式についてお伝えしたいと思います。

カレン族には20以上の民族が含まれ、そのうちの70%はキリスト教徒が多く、山岳地帯に住むスゴー・カレン族と、仏教徒が多く低地に住むポー・カレン族に分かれています。
カレン族の人々は1年を通して様々な祭りをお祝いします。これらの祭りは政治的なものであったり、アニミズム、キリスト教、仏教に基づくものであったりします。戦争やそれに伴う避難生活に苦しみながらも、カレン族の人々は様々な機会をとらえて祭りを祝い、自分たちの文化に対する敬意と誇りを示すために伝統的な衣服を身につけています。なかでも、「リストタイピングの儀式(手首に糸を巻く儀式)」は、カレン族の人々にとって、愛らしく、重要な儀式と言えます。

紀元前739年からカレン族はチベットから中国の黄河沿いに移住し、力、知性、正義、慈悲に満ちたカレン族のリーダー、Hpu Hto Mel Barが率いたと信じられています。この旅の途中、彼らは多くの災害と他の民族との戦いに直面しました。そのような中でも、自然災害から身を守り、互いを忘れることないようにと誓いを立てた儀式が「リストタイピングの儀式」と呼ばれるものです。

儀式では白い糸を使って霊を呼び戻した後、その糸を子どもの手首に結びます。これは、人と魂が共にあり、恐怖から解放されることを意味しています。

儀式で使用する材料は、こちらの7つです。
1. コップ1杯の水
2. 3本の白い糸
3. おにぎり7個
4. 三角にしたもち米7個
5. バナナ7本
6. ナッパンニョ(ハーブのようなもの)の葉7枚
7. サトウキビ7本
儀式の材料

1. 水には、安らぎと力を取り戻すこと、心身を清めること、生きること、という意味が込められています。水は、人間、動物、植物が依存する主要な生命の源の一つです。人間は生活の中で肉体的にも精神的にも頻繁に過ちを犯すものと考えられています。

2. 白い糸は、災難や悪霊から人を守ることを表しています。また、清潔を意味し、手首に白い糸をつけることで自信を与えてくれます。また、グループ間の結束を強め、仲間を簡単に思い出すことができます。

3. おにぎりは団結を表し、人々が生きていくために必要な栄養を表します。

4. 三角にしたもち米は、もち米の粘り気から鋭さと団結の連帯を表しています。バナナの葉で三角形にすることで、より粘着性が増し、武器のような鋭さを表現しています。

5. バナナは規則正しく徐々に成長することから、良い規律と忠誠心を表します。バナナは実をつけるとき、一本の枝から始まり、主枝から順番に連続的に実がなります。バナナの木は一生に一度しか実をつけません。

6. ナッパンニョの葉は、根を張りさえすれば、季節を問わずどこにでも生えることから、どんな場所にも定着して成長する能力を意味します。成長が早く、水をあまり必要としません。

7. サトウキビは良い倫理観や道徳的価値観を示します。切り分けると、真ん中から新しい植物が生えてきて、どんな土地でもよく育つことから、そのように考えられています。

この伝統的な祭りを毎年祝うことで、カレン族の人々は自分たちの文化と美しい伝統を思い出し、過去に犯したかもしれない過ちを互いに尊敬し許し合います。

今、ミャンマーでは多くのカレン族が大変な困難に直面しています。国軍とカレン武装勢力との戦闘により、多くのカレン族が財産、家族、友人を捨て、難民としてタイ側に逃れています。カレン族の若者の中には、生活と家族のために多くの収入を得るため、海外、特にタイ側へ向かう人たちも多くいます。祖父母の祈りが叶い、カレン族の生活が良くなることを心から願っています。

ミャンマー事務所 シトゥ