2021.08.18

ミャンマーと共に

スタッフの声
ミャンマー

ミンガラバー!
連日猛暑が続いておりますが、皆様いかがおすごしでしょうか。

今回はミャンマー事務所から浅木がお届けいたします。約1年の短い間でしたが、このたび異動をうけミャンマー事務所を離任することになりました。思い返すと、この混乱の中で、ミャンマー事務所だからできたことも、思い実らず達成できなかったこともたくさんありました。今年の2月以降は、コロナやクーデターといった情勢・社会情勢不安が続き、葛藤を抱えながらも活動を進めてくれる現地スタッフと接するなかで、ミャンマー事務所の一員として彼らを支えることができているのかなと、自問する日々でした。

ミャンマー事務所では、これまで公共図書館や学校図書館といった図書館を中心に、子どもたちの教育推進を実施してきました。クーデターが発生したのは、いよいよ学校図書館の全国普及も視野にいれ、教育省と人材育成やそのための環境整備を進めましょうと話を進めていたころでした。その後は、あれよあれよという間に各省庁大臣が挿げ替えとなり、軍政色を帯びたカウンターパートとは調整が困難になりました。

子どもたちの教育環境悪化への懸念はもちろんのこと、これまで築いてきたものが一瞬にして崩されかねない状況に。どうすることもできない無力感を痛感し、その度にミャンマーのことを思い、声をかけてくださるサポーターのみなさまや、子どもたちのためを思って事業に取り組む同僚の姿に私自身が励まされました。

意外と身近にある暴力

まだまだ未熟な私ですが、国際協力に関わる一個人として、本当にどうにもできないことがあると痛感したと同時に、平和についても思いめぐらす1年となりました。平和の考え方は人それぞれですが「暴力のない状態」がその一つの在り方かと思います。

戦争や虐殺など目に見える暴力の他にも、差別や搾取、貧困といった表面化しにくい構造的な暴力、その他これらの暴力を肯定する「文化的暴力」という概念があります。あまり知られていないのですが、あらゆる思想(偏見、他者への不寛容、無関心など)が暴力を肯定するものになり得るという考え方です。

例えば、宗教や人種の違い、LGBTQ、障がいの有無、国籍など、そして最近では新型コロナの感染者やワクチン接種の有無を理由に人が非難されたり、偏見のまなざしを向けられたりしているケースが発生しています。また自分には関係ないと、無関心な姿勢を取ることもこういった暴力に含まれているようです。こういった物事は思ったより、身近にあると思いませんか?

私たち一人ひとりの考え方や、弊会が重要にしてきた「文化」にも、時代や場所、表現の仕方によっては文化的暴力になり得るものがあるかもしれません。改めて、弊会が目指す「シャンティ(平和)な社会」とはどういった社会なのか問われている気がします。

MBlog2
(写真:西日本新聞 6月10日)

教育の重要性

他者への寛容や関心をもつこと、自分の持つ偏見に自明的になることや、世の中の構造的な暴力に疑問を持つこと、こういった個々が取るべきアクションに目を向けると、やはり教育がいかに大事かを実感します。すでに挙げた暴力をすべて断ち切る・無くすというのは究極で、数年の教育事業を実施してもゼロにはなりません。しかしながら、長期的に見れば平和の種をまく作業です。この間、事業に関わってきた学校教員や図書館員、スタッフまでもが子どもの変化を実感し、読み書き計算といった能力に加えて、他者に共感したり、想像力を膨らませたりする体験の重要性を語っています。こういった体験が、子ども一人ひとりのその後の社会参加の態度と技能に結び付くのではと感じます。

一方で、平和が脅かされたとき、やはりしわ寄せが行くのは社会的に脆弱な立場にある人々です。具体的には、女性や子ども、経済的に困窮している人や、遠く離れた農村部に住まう人たちです。ミャンマーで活動するNGOとして、こういった必要な場所に必要な支援を届けること、そして社会背景に分断されない包括的なアプローチを草の根レベルで実施していくことが改めて重要だと思っています。

MBlog1

一刻も早くミャンマーが平穏を取り戻すことを願っています。

最後になりますが、改めまして、日ごろからミャンマー事務所を支えてくださるみなさまに感謝申し上げます。

日本でのメディア露出は減っているミャンマー情勢ですが、反軍デモ、治安部隊によるデモ制圧は現在でも継続しています。クーデターへの抗議として発生した市民不服従運動(CDM)とそれに伴う労働者のストライキの影響もあり、医療、教育、ビジネスサービス各種は中断。新型コロナウイルスの急激な感染拡大も見られ、これによる死者数は連日最多を記録。移動や物流・輸送の制限、雇用や所得の減少、外国からの投資も減少、加えて一部地域では大雨洪水などの自然災害も発生しているという環境で、多くの人々がより厳しい環境下での生活を強いられています。

私自身も、今後ともミャンマーの人々に寄り添っていければと思います。
今後とも応援の程どうぞよろしくお願いいたします。