2023.05.18
読み物

NGOの成長と停滞とは? ~直近の調査報告書より~

地球市民事業課の市川です。

この4 月に外務省NGO 研究会(関西NGO 協議会受託)の調査報告書(*)が発表されました。この報告書は、定款上「国際協力」を掲げる団体等約1万団体の財務諸表と活動報告書から実際に活動している国際協力NGO756団体を特定(ただし、政府系、国連系は除く)、最大10年間の財務諸表数値から成長・停滞する要因を分析したものです。

『日本の国際協力NGOの資金調達リデザイン化と財務内容の強化』

2年前にも、同様の報告書が出されましたが、その時の特徴としては、収益規模が10億円以上のNGO6団体が日本のNGOの収益の68%を占め、収益規模が大きなNGOと中小規模のNGOの二極化が進んでおり、予算規模が10億円未満の中小規模のNGOの今後について、提案されていました。今回の報告書は、NGOの設立年代を10年後にくぎり、その経常収益の伸びについて、年代ごとに分析しています。

例えば、2000年以前と2000年以後に設立したNGOの経常収益の短期年平均成長率を比較してみると、2000年代以降のNGOは、拡大傾向にあるNGOが47.1%、それに対して1990年以前のNGOでは25.3%に留まり、現状維持の傾向が強く見えます。この報告書では、「一定の歴史を有する団体を襲うサイレンクライシス(静かな危機)」が指摘されています。

一方で、この報告書において、NGOの成長とは常に組織規模が拡大している状態を指すのでなく、「ミッション達成に向けて、自団体の財務状況がコントロールされている状態」としています。さらに、コラムにおいて、NGOのコンテンツをマップで示す「Social map」(ソーシャルマップ)の主宰している楯晃次氏は、NGOの経営で重要なのは、「収益モデル」「戦略」「組織」そして、それを一つにまとめる「ミッション」と述べているのが印象的でした。

図書館ワークショップ後に日本の専門家、当会スタッフとミャンマーの子ども達と記念撮影(2019年7月ピー図書館にて)

長年活動してきた多くのNGOが、最近では、活動資金不足、マネジメントの難しさに直面しています。しかし、当会が活動するウクライナ難民支援、アフガニスタン、ミャンマーで多くの人々が、戦乱や国内の混乱で翻弄されています。シャンティが設立した当時と比べ、国内での社会課題も深刻化し、シャンティでも3年前から国内の在留外国人支援活動を展開しています。組織経営の課題をこなしつつも、NGOとしての機動性を発揮しながら、より困難な人に寄り添い活動していくこと、今まさに、NGOの使命を貫く大切さを実感します。

 

シャンティの目指す「共に生き、共に学ぶ」社会の実現を目指す、引き続きよろしくお願い致します。