図書館は私にとっての光でした
早くに結婚したティクトゥーさんは、近所や周りの人からうわさ話をされ、 次第に家に引きこもるようになりました。 そんな彼女の光となったのは、図書館でした。 生まれてはじめて「人に褒められる」という体験し、 青年ボランティアたちのリーダーとなったティクトゥーさんをご紹介します。
泣いてばかりの毎日
はじめまして。わたしの名前はティクトゥーです。2歳の時にタイにあるバンドンヤン難民キャンプに逃げてきてから、20年以上が経ちます。
小学6年生、13歳の時に結婚した私は、泣いてばかりの毎日を過ごしていました。自分の人生には意味なんてないと感じ、人の顔を見ることができず、家の中で隠れるように暮らしていたのです。
私が暮らすバンドンヤン難民キャンプです。わらでできた家に住んでいます。
そんな私に、外へ出るきっかけをくれたのはシャンティでした。家で隠れるように暮らす日々が2年ほど続いたある日、図書館でユースボランティアとして参加していた友人に「一緒に参加してみない?」と図書館に誘われたのです。図書館は、私にとっての光でした。
図書館で生まれて初めて感じたこと
図書館では、私と同世代の若者たちが子どもたちに絵本を読み聞かせたり、人形劇を披露していました。友人に図書館のユースボランティアとして活動するよう誘われ、迷いながらも勇気を出して活動に参加してみることにしました。
私は図書館でのボランティアを通じて、生まれてはじめて褒められました。そして「誰かの役に立っている」と実感することができたのです。
図書館では子どもたちに絵本を読み聞かせたり、人形劇を披露しています。
図書館で多くの人と関わり、たくさんの本を読み、さまざまな経験をする中で、私の人生にたくさんの新しいものが舞い込んでくるように感じました。そして、自分自身の成長や、活動に対し責任を感じるようになったのです。
また、多くの人が私を知り、私を尊重してくれるようになり、以前のように見下されることがなくなりました。図書館の活動に参加したことで、自分の人生に意味を感じるようになりました。この活動を通して私の心は完全に回復し、過去の過ちを後悔するのではなく、未来を見て歩めるようになりました。
図書館で読み聞かせや人形劇を少しずつ続けるうちに、生きる力がわいてきました。周りの人たちの視線や評価も好意的になったと思います。私はボランティアとして5年間、活動を続けました。
図書館がくれたチャンス
次のチャンスをくれたのもシャンティでした。今度は、図書館員として働くよう誘ってくれたのです。図書館委員会が私の青年ボランティアとしての活動を見て、私を図書館員として推薦してくれたのです。その時は、自分にその役が務まるか心配もありましたが、とてもワクワクして、本当に嬉しく思いました。
それから私は一児の母となり、いまはミャンマー本国への帰還を望んでいます。
図書館は私にとって学校であり、新しい世界=光のようなものです。ミャンマーへ帰還したら、コミュニティのために働きたいと思っています。
※未だ約97,000人が9カ所の難民キャンプに暮らしており、人々の抱える悩みや不安は様々です。ミャンマーへの帰還の動きが見られる一方、帰還先が安全な場所であるのか、帰還した先で生計を立てていけるかなど、不安要素も少なくありません。そのため、帰還を希望する人は未だ多くはありません。また、難民キャンプへの国際支援は年々減少する一方で、帰還の決断ができないまま、自身の生活が徐々に苦しくなるという状況に立たされている人々も大勢います。