STORY
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もし本と出会わなかったら

ノー・ジャー・ポーさん
ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ / 図書館ユースボランティア

タイとミャンマーの国境にある難民キャンプで生まれ育った子どもたちにとって、 図書館の本が「外の世界」へと、つなぐ「窓」になっています。 難民キャンプ内の図書館でボランティアとして 子どもたちへ本の読み聞かせをしているノー・ジャー・ポーさんをご紹介します。

学校を卒業した後、図書館担当者の欠員募集があることを聞き、応募したところ、採用されました。この仕事に就くことができ、とても幸せでした。図書館のために働きたいと強く望んでいたのからです。私は次の世代の図書館青年ボランティアの見本になることができます。とてもうれしいです。

私の人生はもっと大変で困難なものになっていた

難民キャンプで生まれた私の両親は、ビルマ軍から逃げるために難民キャンプにやってきました。子どもの頃の生活はとても苦しく、人にお金を借りて毎日を暮らしていました。ほかの子どもたちが学校へ通っているのを見ると、とても幸せそうでうらやましかった。

両親が借金を返済し終えた12歳ごろから、図書館を訪れるようになりました。はじめは、図書館は「大人しか入れない場所」と勝手に思い込んでいました。けれど、子どもたちに人形劇や絵本の読み聞かせをしていた図書館ボランティアの人たちが「図書館に来て一緒に楽しもうよ!」と誘ってくれたんです。それがきっかけになり、図書館に足しげく通うようになりました。

本と出合い、生き方を学んだ

他の子どもたちは親に本を読んでもらっていましたが、うちの両親は字が読めなかったので、自分で本を読もうと決めました。最初はカレン語しか読めなかったので、カレン語の雑誌から読み始めてみました。中でも、家族の話やポエムが私のお気に入りでした。

小さい頃、家がとても貧しかったので、人の物を盗んだり、人をだましたりして暮らしてきました。が、図書館で本を読んでから、家族や宗教、人としてすべきことや「生き方」について、さまざまなことを学びました。もし本と出会わなかったら、今もきっと、いたずらばかりして、ダラダラと無意味な生活を送っていたことでしょう。私の人生は、図書館に出合わなければ、もっともっと困難なものになっていたと思います。

教わる立場から教える立場に

今、私は図書館ユースボランティアとして、子どもたちとゲームや読み聞かせをしたり、一緒に歌を歌ったりしています。「図書館に行けば、楽しい絵本がもっともっとたくさんあるよ!」と子どもたちに図書館に通うことを勧めています。子どもが友達を連れてやってきてくれたり、遠い山の上から来てくれたりすると、何とも言えないくらい、うれしい思いがします。

図書館ユースボランティアになるまで、私は“照れ屋”でした。人前で何かをするなんて、とても考えられませんでした。でも、ボランティアに入ってから私は自分に自信を持てるようになりました。子どもたちの前でアクティビティができるし、人のために働くこともできるようになりました。

ミャンマーに戻っても

私の夢は、この難民キャンプからミャンマーに戻り、地域のために働くことです。ミャンマーに帰還しても、図書館の大切さを伝える活動を続けたいです。なぜなら、本は人に知識を与え、成長させ、人生を変える力を持っているからです。