へき地の子どもにより良い学びを!教員向け研修を実施
こんにちは/サバイディー(ສະບາຍດີ)。
ラオス事務所インターンの木村です。
ラオス事務所では、先月から事業対象地であるルアンパバーン県内の2郡(パクセン郡、ポントン郡)で、雨季休みの期間を利用し、教員向けの複式学級教授法の研修を各5日間ずつ実施しています。そのうちポントン郡で行われた回に、私は同行しました。
*複式学級…2つ以上の学年をひとまとめにした学級のこと。
この研修は、当該郡内の教員を対象に複式学級運営の教授法を伝達し、実際の指導に活かしていただくために実施するものです。ラオスでは財源不足や適切な人員配置がなされていないなどの理由から、現在でも約3割の学校が複式学級であり、その割合は特に山岳部でより高く、この2郡では共に8割以上の学校で複式授業が行われています。複式授業の質の改善は喫緊の課題です。
〈研修のオープニングセレモニー。ポントン郡内から80人近くの教員が参加しました。〉
講師を務めるのは、4月末から5月にかけて実施した講師養成講座を修了した2郡の教育・スポーツ局職員です。前回は研修生として参加した彼らが今度は講師として教員への指導にあたりました。また、前回の講師養成講座で講師を努めた教育省・局担当官や教員養成校教官が、マスタートレーナーとして補足説明を行うなど講師を補佐しました。
講師養成講座の様子はこちらをご覧ください。
https://sva.or.jp/wp/?p=33398
前半2日間では、複式学級運営の手引きに沿って、その教授法に関する講義が進められ、後半では、参加者が講義で得た知識や技術を用いて指導案を作成し、近隣の小学校で模擬授業を実施、講師や参加者からそれに対するフィードバックも行われました。
〈グループワークに熱心に取り組む参加者たち〉
〈模擬授業の様子。児童の机の向きや配置を工夫し、3学年の複式授業を行っています。〉
研修のポイント
今回の研修のポイントのひとつは、なぜ「課題把握」「解決努力」「定着」「習熟・応用」という「4段階の学習過程」の概念を複式授業に取り入れる必要があるのか?参加者にその意義を理解してもらうことでした。
複式授業において、教員は複数学年への同時指導ができないため、授業内に設定した4つの学習過程のうち「解決努力」「習熟・応用」を児童が自ら取り組む時間とすることで、その間に他学年の指導を行うこと(間接指導)ができ、児童の学習効率も上がります。
日本では約50年の歴史と実績のある教授法ですが、ラオスではおそらくほとんどの教員にとって初めて聞く概念。そのため、研修全体を通して、講師陣はこの意義について何度も繰り返し伝えるとともに、「自分の学校ではどのように取り入れる?」「実施するうえでの課題は?」などと問いかけ、参加者が各学校でこの手法を取り入れ指導を行うにあたり、より明確なイメージを持てるよう促していたのが印象的でした。
参加者の理解については、4日目に小学校で行われた模擬授業を見ると、担当した教員は4つの学習過程をおおむね理解して授業展開を行っているように感じられましたが、他の参加者の中には理解が十分でない方もおり、理解のレベルにはやはり個人差があると感じました。
教員自身がこれまで受けてきた教育課程が日本などの先進国とは全く異なることや、これまで独自のやり方で長年複式授業を指導してきた教員がいることを考えると、今回の研修内容を彼らが一度で理解するには難しい面もあるかと思いますが、少しずつでも、研修内容が新学期からの複式学級運営に活かされていくことで、教員たちの指導技術が向上することを期待します。
また、この事業が児童の学びの質向上につながるよう、教員たちの声を反映させながら、私たちも継続的にサポートしていきたいと思います。
〈参加者全員で記念撮影〉
*この事業は国際協力機構(JICA)の草の根技術協力で実施しています。
今回もお読みいただきありがとうございました。
ラオス事務所インターン 木村沙弥香