2015.09.18
海外での活動

カンボジアで「国民読書の日」が制定されました

カンボジア

みなさま、こんにちは。
カンボジア事務所の萩原です。

バッタンバンからプノンペンへ、はるばる5時間の移動中のこと。
インターネットをチェックしていたスタッフの一人が「ヒロコさん!」とうれしそうに声をかけるので、「何?」と聞くと、

「『国民読書の日』が制定されたよ!!教育省のWebサイトに載ってるよ!!」
「えー!!ほんとに?!」

…そういうわけで、9月14日、カンボジアで「国民読書の日」が制定されました。

「国民読書の日」の制定に向けた動きはここ最近活発化しており、SVAも長年図書館活動にかかわってきたNGOとして、その動きを後押ししてきました。

クメール語ですが、カンボジア教育省のWebサイトより、「国民読書の日」制定に関する公式文書が閲覧できます。
http://www.moeys.gov.kh/kh/laws-and-legislations/sub-decree/sd15-120.html#.VfuSeLnovb0

文書では、「読書習慣や読書の文化、読み書きの力の向上を推進し、カンボジアの文化の保存と発展に寄与するため、カンボジア王国政府は、3月11日を『国民読書の日』に制定します。」とされています。

3月11日は、カンボジアで辞典の編纂に貢献したチュアン・ナット大僧正の誕生日です。
図1

この辞典は当時、ウナロム寺院に併設されていた仏教研究所において、20数年の歳月を経て編纂され、1938年に初版が出版されました。しかし、ポル・ポト政権下の焚書坑儒政策や戦乱の中で、辞典の多くが失われてしまいました。

その後、「カンボジアの文化の復興のためには、辞典が必要だ」との思いから、この辞典の復刻を行ったのが当時のSVAでした。1983年に2000部が、そして1989年に重ねて2000部の復刻が行われました。

復刻された辞典の前書きには、「長かった内戦とその後の政治的困難を乗り越え、荒廃した国土と文化の復興に全力を注いでおられるカンボジアとその国民に心からなる敬意を表すると共に、この辞典を、クメールの文化と教育の再建のために努力されている方々に、日本からの友情の証しとして贈呈します。」とのメッセージが書かれています。

かつて、文字が読める・書けるというだけの理由で多くの人が殺され、文化が否定されたカンボジアにおいて、「国民読書の日」が制定されたことには、大きな意味があると思います。

この記念日が単なる記念日にとどまらず、カンボジアにおいてすべての人々が本を楽しみ、文字を学び、生活を豊かなものにしていく契機になっていくことを願っています。

SVAカンボジア事務所
調整員 萩原宏子

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