2026.05.05
海外での活動

プレアビヒア州の幼稚園の挑戦

カンボジア
事業終了

こんにちは。カンボジア事務所の菊池です。

2025年3月から実施してきた、カンボジア プレアビヒア州での幼児教育のアクセスと質の改善事業が、4月末で無事に終了しました。

シャンティにとって初めての事業地となるプレアビヒア州において、州および対象郡の教育局、3園の幼稚園(チャムラエン園、タマペウイ園、サラアエム園)と一から関係性を築き、1年2か月にわたり共に事業を実施してきました。園舎建設や園庭整備、教員研修、幼稚園と保護者の連携活動など、様々な取り組みを行いました。

2026年4月下旬に実施した事業終了時のモニタリングでは、幼稚園教員が事業で学んだことを活かしながら、クラス内外の環境を整え、積極的に「遊び」を取り入れたクラス活動を実践しており、子どもたちが主体的に活動に取り組んでいる姿が見られました。

2026年4月のタマペウイ園

事業開始前には、幼稚園は小学校の一教室を使い、教員が園児に読み書きや計算を教えるなど、小学校に近い形式の活動が行われていました。教員から「幼稚園を休む園児が多い」という話をよく聞いていたので、約1年間という短い期間でも大きな変化を感じました。

事業開始前のタマペウイ園のクラス

 

本事業は、ここに至るまで、順風満帆ではありませんでした。昨年、タイ国境付近で2度にわたる軍事衝突が発生し、国境に近い地域の住民は避難を余儀なくされました(最大64万人)。それに伴い、対象幼稚園も一時的に閉園せざるを得ない状況となりました。昨年末には停戦合意がなされたものの、現在もカンボジア北西部では3万人以上が避難生活を続けています。プレアビヒア州でも同様の状況が見られ、事業地へ向かう途中のお寺の境内には、現在も多くのテントが設置されているのを見かけます。避難所に並ぶテント(2026年4月撮影)

 

1度目の7月の軍事衝突で、園舎建設を一時中断せざるを得ない状況がありました。情勢が改善し、そこから急ピッチで園舎建設や研修を進め、何とか11月からの新学期に間に合いました。ようやく新園舎で、研修を終えた教員が「遊び」を取り入れたクラス活動を実践しはじめられると思った矢先、翌月には2度目のさらに規模の大きな軍事衝突が発生しました。その後停戦合意したものの、結果的に、一部の幼稚園の園舎は損傷し、国境に近い幼稚園は2か月近く再開できない状況となりました。

こうした困難に直面した事業でしたが、教員や州・郡教育局職員の「子どもたちの学びを支えたい」という強い意志と実践、困難を乗り越える努力があり、ここまで来ることができたと思っています。この事業のみならず、避難所でも、学習スペースの設置や教育活動の継続が行われ、州・郡教育局職員、幼稚園教員も、避難所での教育活動に懸命に取り組んでいました。ようやく国境に近い幼稚園が再開できることになり、2026年2月中旬には日本人専門家によるオンライン技術指導も受けながら、教員の挑戦が続きました。その結果、新たな園舎環境を活かした「遊び」を取り入れた活動が実践され、子どもたちが楽しそうに参加する姿が見られるようになりました。また、学校運営委員会や保護者も園庭整備や緑化活動に積極的に参加するなど、幼稚園全体の環境や活動の質が大きく向上しました。これは、教育関係者と地域住民の努力の賜物だと感じています。

 

特に、プレアビヒア州教育局長のチェン・リムホン氏は、この事業をいつも支えてくださいました。事業対象幼稚園の選定、事業のキックオフ会議、バッタンバン州での幼稚園視察、園舎建設、研修活動など、様々な場面でアドバイスを頂き、国境での軍事衝突の対応で大変お忙しい中でも、事業の継続に向けた取り組みを進めることができました。今年の6月に定年を迎えられるそうですが、彼のリーダーシップには本当に感謝しています。

プレアビヒア州教育局長チェン・リムホン氏(中央)

 

本事業は4月末で終了しますが、この新しい環境での取り組みはまだ始まったばかりです。モニタリングでは、園児が1クラス40人を超える中での「遊び」を取り入れた活動の実践や、指導案作成、子どもへの声かけなどにおいて、まだ多くの改善の余地が見られました。それでも、この約1年間で大きな変化があったので、これからもこの実践を継続することで、さらに幼稚園へのアクセスや活動の質が改善していくことと期待しています。

 

国境から近いサラアエム園の教員の声を紹介します。

「この事業を通して、たくさんの変化がありました。2026-2027年度の入園者数は増加しました。ただし、国境紛争の影響があったので、紛争がなければ、さらに多くの子どもたちが通園していたと思います。環境面では大きく改善され、新園舎に移転し、遊び場・水・衛生設備・屋外活動スペース・適切な家具と教材を備えた教室・菜園が整備されました。これらの変化が子どもたちの興味や関心を引きつけています。教員の指導方法も変わり、より魅力的な授業が展開されています。遊びと環境を通じた学習を授業に取り入れた結果、保護者も子どもを登園させる意欲を高めています。また、子ども中心の指導法を実践することで、クラス管理と指導がしやすくなりました。子どもの発達について理解が深まり、クラス活動中に何を観察すべきかが分かるようになりました。子ども中心の指導法を実践することで疲労感が減り、子どもたちが主体的に活動できるようサポートに徹しています。

地域の方々も幼稚園活動への関与の仕方が変わり、学校の整備工事に対して資金や労力を提供してくれるようになりました。学校運営委員会メンバーも研修や会議に積極的に参加するようになっています。

子どもたちは以前よりもクラス活動を楽しんでいるようです。積極的に参加し、時には期待以上の行動を見せてくれます。衛生面での意識も高まり、食事前やトイレの後に手を洗うようになりました。また、自分の持ち物をしっかり把握しています。下校時刻になっても帰りたがらない子どもも出てきています。

将来的には、幼稚園環境や活動内容をさらに発展させて、「モデル幼稚園」となることを目指したいです。」

 

本事業を通して、現場の教員の皆さんに寄り添い、困難に直面しながらも、よい変化が生まれたことは、私にとっても大きな喜びでした。これからも、変化し続ける幼稚園を応援していきたいと思います。

本事業は、令和6年度NGO連携無償資金協力事業として実施されました。

事業の実施に当たっては、教育省の幼児教育局、幼稚部教員養成校、バッタンバン州教育局、バッタンバン市中央幼稚園にもご協力いただき、研修やモニタリングにおいてトレーナーとしてご参画いただきました。さらに、日本人専門家として、社会福祉法人天竜厚生会のチームカンボジアの皆様にも、現地指導や日々の助言で大変お世話になりました。この場をお借りして御礼申し上げます。

プレアビヒア州での教育事業に対して、カンボジアの副首相兼教育大臣より勲章を頂きました

カンボジア事務所 菊池