2023.02.20
海外での活動

アフガニスタンの子どもたちの夢を支え続ける ~CBE事業進捗報告!~

アフガニスタン
活動風景

 

「将来の夢は、お医者さんになって困っている人たちを助けること。」

アイーシャちゃん(仮名)はアフガニスタン現地職員に希望に満ちた笑みで答えました。

「知識は力なり」と書かれたメッセージを読んでいる女の子

昨年の7月にアフガニスタン東部地域で開始した緊急下のCBE事業は、同年の12月についに500カ所に教室を設置し、アイーシャちゃんのようなこれまで学校に通えなかった子どもに教育の機会を提供することができました。

CBEの教室に通い始めた女の子たち

 

こんにちは、地球市民事業課の喜納です。

東京からCBE事業の運営補佐をしています。本ブログでは、2022年の成果や現地職員の活躍、実際にコミュニティベースの教室に通い始めた子どもたちの様子を紹介いたします。

本教育事業の説明については、2022年7月に紹介した記事があるので、ぜひこちらも併せてご覧ください。

アフガニスタンで、学校に行けない子どものためのCBE (Community Based Education)事業を開始しました(ユニセフ協働事業 )

※CBEとは「Community-Based Education」の省略で日本語では「コミュニティベースの教室」と呼んだりします。CBEはCBC(Community-Based Class)/ALC(Accelarated Learning Center)の2つに分けられ、これらは仮設的な教育施設、またそこで行われる教育モデルのことを指します。地理的・政治的理由等で現在公立学校に通えていない子どもたちの教育へのアクセスを確保することを目的としています。新しい学校を“建てる”というよりは、もともと地域に存在するモスクや長老の家の一画などを学習ができる環境として整え、授業が行えるようにします。本ブログではその教室を「CBE」として記載しております。

 

 

ついに設置完了、15,000人の子どもたちが通い始めたCBE!

昨年の11月、本事業を担当しているアフガニスタンの現地職員から一通のメッセージが届きました。

500か所のCBE設置が完了しました。

事業開始から約4カ月、当初予定していたよりも大幅に遅れましたが、それは私がずっと心待ちにしていた現地からのメッセージでした。

 

タリバン暫定政権から事業実施の許可を得たり、職員募集に対し応募が殺到し選考に奮闘したりと、現地の職員は事業開始当初から大変な日々を送っておりました。

さらに、シャンティが本事業で対象としているアフガニスタン東部地域は、これまで他の支援団体が入れなかった遠方の地域も含んでいるほか山岳地帯であるため、各郡への訪問に多大な時間を要しました。

山岳地帯にある村に設置したCBEに通う女の子たち

しかし、そんななかでも現地のスタッフは子どもたちが教育を受けられる日を夢見て、厳しい状況でも諦めず努力を続け、500カ所にCBEを設置したのです。

 

 

500人の教員研修、教育物資の運搬と配布、村の長老たちとの談話、学校教育キャンペーン

教室を設置しただけでは、子どもたちが実際に「教育」を受ける環境が整ったとは言えません。

教材を使って授業をしたり、CBEを運営したりするには、そのための準備が欠かせないのです。

そこで、シャンティはCBEで授業を行う教員を500人採用しました。アフガニスタンの特に地方に行くと大学卒業資格等を持った教員候補者を探すのは至難の業です。それでもシャンティはユニセフやコミュニティの協力を得ながら、子どもの教育に情熱を持った500人の教員を採用し、さらに10日間の教授法の研修を実施しました。

教員研修の様子(研修中は教育や教授法に関する活発な議論が行われました)

 

学校で授業を行う、また子どもが積極的に学習するには、充実した学習用物資の配布が必要です。

シャンティの職員は、教育物資の運搬と配布を始めました。

たくさんの教育物資を遠くの村まで運ぶための大型トラック

教育物資が無事に子どもたちの手に届いた時の様子

 

これだけの物資を遠く離れた、特に山岳地帯にある村に運ぶのは容易ではありません。

しかし、シャンティの職員はアフガニスタンの子どもたちに教育の機会を届けるため、それを通して夢を持ち続けてもらうため、様々な手段を使って教育物資の配布を行っています。

 

また、地方に行けば行くほど、教育、特に女子教育の重要性の認知度にはばらつきがあります。事業名に「CBE(コミュニティベース)」と付くほどなので、本事業はそのコミュニティに住む人たちの積極的な参加が不可欠です。

そこで、地域住民の教育に対する価値観向上のために、各村の長老を招待しコミュニティベース・ダイアログ(談話)を実施しました。

シャンティの職員がコミュニティの長老や代表に教育の重要性を語りかけている様子

現地スタッフによると、たくさんの長老がシャンティの教育活動に対し感謝を示してくれたそうです。

 

さらに、子どもを学校に通わせるか否かは最終的に家庭の判断に大きくゆだねられます。そこで、シャンティはコミュニティの協力のもと、学校教育キャンペーンを実施しました。本キャンペーンでは、教育の重要性を記した横断幕を子どもたちが持ち、村中を行進し多くの住民の注目を集めました。

村の子どもたちが「知識は力なり」と書かれた横断幕をもって行進している様子

 

このような段階を経て、シャンティは約15,000人の子どもたちへ教育の機会を提供するに至りました。

 

アイーシャちゃんはそんな子どもたちのなかの一人です。アイーシャちゃんのお父さんは、家庭で経済的な困難を抱えており、シャンティが来るまでは娘が教育を受けることに無関心だったといいます。

しかし、シャンティが実施した学校教育キャンペーンや学習用品の配布、また家から歩いて通える場所に教室が設置されたことで、アイーシャちゃんがCBEへ通うことができるようになりました。

いっぱい勉強してお医者さんになったら、お父さんとお母さんがお金に困らないように助けてあげられる。

そんなアイーシャちゃんのことばは、私たちの活動の一番の原動力となります。

 

 

2023年の活動も盛りだくさんです!

教室設置、教員研修、教室運営の基盤形成ができ、本事業の次のステップは対象とする村において、子どもたちの教育を継続していくことです。

CBEでカリキュラムを終えた子どもたちは、近くの公立学校へ編入することとなっています。そのため、公立学校との調整や連携はすぐに始めなければなりません。また、公立学校にこれだけの生徒を受け入れる体制が整っていない場合、他の教育を継続していく方法を模索しなければいけません。

そのため、コミュニティとも一層協力していく必要があります。

 

2023年に予定している活動としては、CBE運営委員会への研修や公立学校との調整、また教員に対する子どもの心理社会的ケアの研修など、盛りだくさんです!

もちろん、500か所すべての教室がしっかり運営されているか、毎日子どもたちが出席し学習が継続されているかの定期的な確認も重要です。

シャンティの職員がCBEの視察に訪れた時の様子

 

そして、2023年はシャンティの強みを活かした図書コーナーの設置も計画しております。

CBEは、家や公共施設の一画に設置されているため、各教室に大きな図書スペースを確保することが難しくなっております。しかし、少しでも多くの子どもに絵本を届け、アフガニスタンの子どもが絵本とともに成長できるように、シャンティの職員は試行錯誤を続け図書コーナーの設置を目指します。

 

今後も活動の進捗報告を行っていくので、どうぞシャンティのホームページにてご覧ください。

 

アイーシャちゃんのように、自分の夢に希望を持てる子どもが少しでも増えるように、シャンティは一丸となって本事業の成功のために尽力していきます。

配布された学習用品を手に取っている子どもたち

 

地球市民事業課 喜納