スラム図書館の引継ぎ
皆様、こんにちは
カンボジア事務所の玉利です。
いつもご支援を有難うございます。
現在実施しているスラムのコミュニティー図書館事業の対象地の一つに、プノンペン市中心から15キロ程離れたアンロン・カガンという貧困者居住地区があります。2001年に、プノンペン市中心のスラム街で大火災が発生し、約3,000世帯の家屋が消失するという出来事がありました。この被災者の多くが、半ば強制的に移転を強いられた場所が、このアンロン・カガンです。大半の住民は未だに土地の権利を取得できておらず、未だに社会インフラが十分に供給されていない場所でもあります。また、市中心から離れているために、近くで仕事を見つけることも容易ではありません。
この厳しい状況におかれている住民の生活状況を少しでも改善するため、民家の一部をレンタルして簡易図書館を設置し読書推進を行うとともに、識字教育や家庭菜園など住民の生活に寄与する活動を実施してきました。
図書館では住民が子どもへの読み聞かせを行ったり
図書館に来てもらうために映画の上映会なども行いました。
この度、残念ながら当地での活動を終了することになりました。簡易図書館については、住民たちがそのまま継続運営してくれる事を期待していましたが、極度の貧困と目先の収入を得ることに多忙な住民にとって、なかなか公共施設の運営までは対応できない状況です。図書館の運営に必用な、賃貸料や図書館員への給与支払いなども住民組織にとって大きな負担でした。
従って、当初は近くの小学校に図書や本棚を譲渡する事も検討しましたが、引継ぎ先を探す過程において、簡易図書館の場所の近くで地元の青年会(ユースクラブ)が事務所を構えて自主的な活動を行っている事がわかりました。この青年会は、地元行政の認可のもと2009年に設立、周辺9地区に271人の会員がいます。活動としては、会員の中で英語やコンピューターなどが出来る人が、他の会員にそれらの科目を教えたり、大手NGOからの支援を得て、様々なイベントや研修を行っています。
青年会と協議を行った結果、先方でも子ども達の教育のためにも図書館の重要性を理解していた事から、簡易図書館の機能をこの青年会に引き継ぐ事に致しました。シャンティは同青年会の主要メンバーに図書館に関する研修を行い、我々が積み重ねてきた図書館運営のノウハウを彼らに引継いでいきます。青年会によると、メンバーの中から図書館員数名を選定し、彼らの無理のない範囲で週に3日図書館を開館し、住民に利用を呼びかけていくとの事です。
今後、この住民たちが主体的に運営する組織によって図書館が運営され、厳しい環境の中で暮らす人々に教育の機会が提供される続ける事を願っています。