なぜ幼児教育?~カンボジア・幼児教育研修会ダイジェスト
みなさま、こんにちは。カンボジア事務所の萩原です。
現在、バッタンバン州で実施中の幼児教育事業。2016年はトモー・コール郡とバナン郡の18幼稚園を対象に活動を行っています。5月末には、対象幼稚園の校長(※カンボジアの公立幼稚園のほとんどは小学校併設で、小学校の校長が園長を兼ねています。)と教員、住民代表者を対象に、「幼児教育の意識向上研修」を実施しました。
◆ なぜ幼児教育が必要なのか?
1コマ目は「なぜ幼児教育が必要なのか?」。グループワークで意見を出し合います。
グループ発表後、イメージを使って講師による説明。以下のようなことが書かれています。
①乳幼児期は人間の発達の基礎となる重要な時期である
②スクール・レディネスを高め、退学を減らし、学習達成度を高めることに貢献する
③貧困の連鎖を断ち切る手段として有効である
④子どもたちの健やかな発達の権利の保証として重要である
◆ 幼児の発達の5領域とは?
「幼児の発達の5領域」について学ぶグループワークの発表。遊んでいる子どもや工作活動をしている子どもなど、いろいろなイメージが描かれたカードを見て、5領域のどれに当てはまるか考えます。ワークの後は各自発表。意見を出し合うことで理解が深まります。
カンボジアでは教育省が、「幼児の発達の5領域」を定義しています。日本の保育・幼児教育でも5領域があります。
似ているような、似ていないような…。どのように分けて定義するかは、お国柄や背景によって違いますが、子どものより良い成長を願うのはどこも同じです。
◆子どもたちが幼稚園に行くためには?~校長、教員、住民の役割
突然ですが、この写真、何の写真かわかりますか?
こちらは参加者によるロールプレイ。参加者がそれぞれ、子ども、親、幼稚園の先生、校長先生、学校支援委員会(住民代表)に扮して、とある場面を演じます。
今演じているのは、「子どもは幼稚園に行きたいのに親が行かせない。幼稚園の先生も校長先生も学校支援委員会も、それに対して何もしない」という状況。左側の聴衆は、これがどういう場面なのか推理します。
すべての子どもたちが幼稚園に行けるようにするために、それぞれがどんな役割を果たさなければいけないのか、参加者自身が考えることを目指したワークです。
ちなみに、この場面の後は、「みんなが連携して、子どもたちみんなが幼稚園に行ける」という場面を演じます。
ロールプレイのあとは、「校長」「幼稚園教員」「学校支援委員会」に分かれてグループワーク。これは「学校支援委員会」のグループ。学校支援委員会が果たすべき役割を考え、リストアップします。
◆お金はどこから?
幼稚園のために必要な予算作成のグループワーク。校長先生、幼稚部教員、学校支援委員会が一緒にやることで、「幼児教育にはこれだけのお金が必要なんだ」という認識を深めます。
「村でどうやってお金を集めるか」の話し合い。予算が必要とはいえ、教育省が各幼稚園に割り当てられる予算には限りがあるのも実情です。幼稚園に協力するために、学校で、村で、それぞれ何ができるか話し合います。
◆研修の効果は?
研修の最後の理解度チェックテスト。トモー・コール郡では、事前・事後テストの平均点が12.71点から28.96点に、バナン郡では14.39点から27.95点に向上しました(満点は4点×9問=36点)。ただ、項目ごとに細かく見ていくと改善すべき点もまだまだあるので、今後の課題です。
幼児教育の重要性をすべての関係者が理解し、幼稚園の活動に協力してくれるようになることを目指した今回の研修会。
本当の結果は、事前・事後テストではなく、研修後、幼稚園がどう変わったかでわかるので、まだまだ気は抜けません。
子どもたちのより良い成長のために、先生たちと協力して、引き続き地道に活動を続けていきたいと思います。
カンボジア事務所調整員 萩原宏子(バッタンバン駐在)