2015.09.19
海外での活動

カンボジアの出版絵本「2本のばら」

カンボジア

カンボジア事務所の江口です。

今回は、コミュニティ図書館事業で絵本をつくったので紹介します。
持続可能な社会を目指すうえで、カンボジア農村部のみならず、
世界中で弊害となっている「ある問題」について、
「どうにかしたい」という想いからこの物語をつくりました。

それでは、はじまり、はじまり~

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1

「2本のばら」
-どっちが好き?-

2&3

[左]
ある日の田舎道、プラスチックのばらと自然のばらが出会いました。

[右]
プラスチックのばらは言いました。
「ぼくは町からやってきたんだ。どうだい、ぼくはきみよりきれいだろ。
かたちも色もずっと変わらずいられるんだ」

4&5

自然のばらは答えました。
「ぼくはこの村に住んでいることに誇りを持っているよ。ぼくだってきれいな色をしているだろ。
人間はぼくのことをとても気に入ってくれてるよ」

プラスチックのばらは言いました。
「たしかにきみはすばらしい色をしているね。でも、水や日光がないと枯れてしまうじゃないか。
いい土も欠かせないよね。まぁ、ぼくはどれもいらないけどね」

6&7

[左]
それをきいた自然のばらは、がっかりしてしまいました。
「プラスチックのばらのように生きられたらいいのに」

[右]
それから少しして、 自然のばらは花が散り、しおれ、ついには捨てられてしまいました。
「さようなら、みんな」

8&9

倒れている自然のばらをみて、大地が話しかけました。
「やあ、兄弟。戻っておいで。新しいいのちに生まれ変われるよ」

それをきいて自然のばらはびっくりしました。
「本当?もしそうであるならば、もう一度生きて、周りのみんなを幸せにしたい」

大地は優しく答えました。
「きみは死になんかしないさ。いのちは循環するんだ。とりわけ、人間が気をつけてくれればね」

10&11

[左]
それから数ヶ月がたち、地面から新しい芽が出てきました。

[右]
少しして花が咲き始めました。その中に自然のばらもいます。
「うれしいな、前みたいにもう一度生きられる!」

12&13

ところで、村にはたくさんの種類のプラスチック製ごみが捨てられていることを知っているかい?
みんな、ところかまわず捨てるから、村はいたるところごみだらけだ。

14&15

動物や魚もプラスチックごみを食べ物と間違えてしまうんだ。
「おなかがへったので、こいつを食べてしまおう」
こんなふうに食べてしまうと、彼らはプラスチックを消化できないから、
おなかはごみでいっぱいになってしまう。やがて具合が悪くなり、死んでしまうんだ。

16&17

[左]
そのころプラスチックのばらはというと、毎日泣きくれていました。
汚れて、壊れてきたため、人間に興味をなくされ、捨てられてしまっていました。
「捨てられたら、ぼくはもう用なしか」

[右]
はたしてプラスチックのばらに明日はあるのか?
彼の兄弟である他のプラスチック製ごみはどうだろう?
きみの周りにはどんなプラスチック製ごみがあるかな?
うわぁ、たくさんあるな!

18&19

[左]
「泣くなよ、プラスチックのばら!」遠くから工場の声がきこえてきました。
「人間がリサイクルさえすれば、きみとプラスチックの仲間にもまだ道があるんだ。
人間が自然ごみと別けて使用済みプラスチック製ごみを回収し、
その後、再生利用のためにぼくのようなリサイクル工場に送ればいいんだ」

[右]
「再循環のためにぼくのもとに戻ってくれば、
新しいプラスチックばら、新しいペットボトル、新しい買い物袋、新しい洋服など、
きみたちは様々な種類のプラスチック製品に生まれ変われるんだ」

工場の言葉から、プラスチックばらは希望をみつけました。
「ぼくも生まれ変わって、もう一度だれかの役に立ちたい!」

20&21

[左]
そのころ自然のばらは、堆肥が混ざった肥沃な土壌ですくすくと育っていました。
「ぼくは再び花として戻ってきたけど、堆肥として生まれ変わり、
誇らしげに他の草木の成長を助けている仲間もいるよ」

[右]
「人間は堆肥を利用して、きれいな花や新鮮な野菜や果物を育てられるんだ」

22&23

ポイ捨てをやめた村は、とてもきれいで美しくなるよ。
こういう村では、自然ごみとプラスチックごみ、それぞれにゴミ箱を置き、
分別して捨て、その後、両方とも再利用しているんだ。

24

いのちやものの循環を考えて、ごみをしっかり分別して捨てることで、
村をきれいで住みよくしていけるよ。

今では自然のばらとプラスチックのばら、ふたりとも希望に満ち溢れています。
「ぼくたちのことをちゃんと気にかけてくれてどうもありがとう!」

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原作は、本事業に専門家として協力している田島伸二さんによるものです。
シャンティはこれまでカンボジアで絵本120作品生み出しており、
この物語が121番目の作品となります。

この作品もクメール語版を3000部印刷し、
学校・コミュニティ図書館などカンボジア全土の教育機関に配布予定です。
この絵本がカンボジアの教育現場で、ESD(持続可能な開発のための教育)に
生かされることを願っています。

今後もよりよい社会に向けて、物語を通して訴えかける、そんな作品をつくっていければと思います。

応援よろしくお願いします!

カンボジア事務所
ノンフォーマル教育事業調整員
江口秀樹

コミュニティ図書館(CLC)事業の過去記事はこちら:

2015.11 現地の顔に
2015.10 ×「林解説」
2015.10 「シャンティ」モデル政策化、カンボジア全土普及へ

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2015.08 ある日の調整員
2015.08 現地メディア露出まとめ
2015.07 モデル化へ大きく前進!